フラッシュバック 90s【Report.35】国のグランドビジョンの変わり方~モノで稼がず、ヒトで稼ぐ時代へ~

「フラッシュバック 90s」特集ページ

1ヶ月ほど、お休みをいただいておりました。

自分の中で、90年代をまとめなおしたとき、今の時代への喪失感というか、「どうしてあの時、アジア通貨危機でASEANと経済圏を作らなかったか」、「55年体制が正解の政治体制はどうして消えきらなかったか」など、様々な疑問がわいてきました。

ただ、書くことへの情熱が薄れたわけではありません。いや、90年代も激動だと思っていましたが、今思えば、Static(静的)な状況が続いていたもんです。それだけ、この2010年代はDynamic(動的)な状況になっています。

Report.34では一人当たりGDPという指標をもって、90年代との違いから今を論じました。

しばらくは同じ手法で90年代との違いを用いて、今、そして未来を覗き見る論評を心がけていこうと思います!

日本が国際物流の枠組みから外れていく

さて、今回、取り上げたいのは以下のツイートに含まれているニュースです。

ついに来るべきときが来た。世界最大手のコンテナ船会社が、アジア~欧州航路の日本寄港の中止を発表した…

世界最大手のコンテナ船会社、マースク社が日本と欧州を結ぶ直行便を今夏で終了するとのこと。

確かにこれだけであれば、寝耳に水のニュースですが、予知できるニュースは事前にありました。

コンテナ海運最大手マースク、1~3月期純利益86%減

記事によると、海運部門だけでなく、石油開発部門も原油安のため、収益が悪化したのと事です。

しかし、さすがと思うのは、赤字の対策として、コストを10%も削減したということ。

コスト削減の一環として、具体的には、アジア~欧州航路への20フィートコンテナ換算で1万3000個を積める船から、2万個積める船へと置き換えていっているといいます。

問題なのは、こうして、マースクが世界全体の航路を効率化するに当たって、もはや日本は「Passing」される存在になってしまったということです。

90年代をピークに減り続ける海上貨物量シェア

さて、どうして、Passingされるようになったかといえば、単純に数字で考えてみればよいわけです。

日本船主協会がリリースしている統計情報によると、1995年、我が国日本の海上荷動き量は、854百万トン、世界のそれは、4,687百万トンであり、シェアにすると18.2%を誇っていました。

一転して、2013年、世界の海上荷動き量は9,914百万トンとほぼ倍増しているのに対して、日本は973百万トンにとどまり、シェアにすると、9.8%と、半減しています。

国内としては物量が増えているから良いという発想ではいけません。グローバルな物流の枠組みからはずされると、輸出入にかかる物流コストも自ずと増えていき、結果として、製品の値上がりや国際競争力の低下を招いていくわけです。

メーカーでつとめた経験のある方ならわかるように、モノとお金は逆の流れをたどっていきます。つまり、モノを海外へ運ぶ量が減っていけば自ずと海外から入ってくるお金も減っていくわけで、一方で海外からモノが入ってくる量が変わらなければ、自ずと、日本国内のお金が逃げていく構造になっていくわけです。

日本の稼ぐ力はモノからヒトへ移行

今年の2月ですが、日本の経常収支について特筆すべき記事がありました。

日本が「貿易」で稼ぐ時代は終わっている 「経常収支」の黒字増加が示すこと

経常収支というのは、日本と海外のカネのやり取りのことであり、これが赤字だと国内から資産が逃げていっているということになります。

高度経済成長期に、この経常収支を大きく引っ張って言ったのは貿易黒字でした。

しかし、今では、外資による対日投資及び外国からの訪問客による消費が経常収支を大きく引っ張っているわけです。

90年代以降に、大きくGame Changeが発生しているというわけです。

色々な言い方ができるでしょうが、私はあえて、日本における主産業が変更していくじきであり、今の若者はその過渡期にあるといえるでしょう。

モノヅクリ以外でかせぐために変わるべきこと

では、今の日本において、モノヅクリ以外で海外から投資や消費を呼び込む機会はあるのでしょうか?

そのためには、現在、国内で労働に従事している人々の考え方を変えていかなければいけません。

「Clothes makes the man」とことわざでも言うように、その人となりが枠組みから作られていくことがあります。現在、日本の業態の中で、最も多いのが、卸売業、小売業、そして、製造業です。

時代はこれだけ変わっているというのに、依然として人々の雇用や仕事は高度経済成長期の頃と変わっていないわけです。

まず、旧態依然とした国内産業のあり方を変えていかなければならないでしょう。そのためには、やはり、国のグランドビジョンを定めたうえでの教育制度の抜本的整備が必要になってくるはずです。


※次回は6月27日公開予定です。
※本連載の一覧はコチラをご覧ください。

西部邁

神田 錦之介

投稿者プロフィール

京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程修了。
大切なことを伝えることとエンターテイメントは両立すると信じ、「ワクワクして、ためになる」文章をお送りします。

この著者の最新の記事

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 2015-3-2

    メディアとわれわれの主体性

    SPECIAL TRAILERS 佐藤健志氏の新刊『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は…

おすすめ記事

  1. ※この記事は月刊WiLL 2015年6月号に掲載されています。他の記事も読むにはコチラ 女性が…
  2.  経済政策を理解するためには、その土台である経済理論を知る必要があります。需要重視の経済学であるケイ…
  3. 多様性(ダイバーシティ)というのが、大学教育を語る上で重要なキーワードになりつつあります。 「…
  4. SPECIAL TRAILERS 佐藤健志氏の新刊『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は…
  5. ※この記事は月刊WiLL 2015年1月号に掲載されています。他の記事も読むにはコチラ 新しい「ネ…
WordPressテーマ「AMORE (tcd028)」

WordPressテーマ「INNOVATE HACK (tcd025)」

LogoMarche

ButtonMarche

TCDテーマ一覧

イケてるシゴト!?

ページ上部へ戻る