トランプ氏の「積極財政」政策に欠くもの

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共和党大統領候補のトランプ氏の勢いは止まらない。過激な発言を繰り返し、他国の事とはいえ、その中には我々にとってもぶっそうな話が含まれる。彼は共和党とは思えないほど、積極財政を支持する。彼の「公約?」は公共投資の拡大、巨額の減税などである。その点だけを見れば、我々の考えと同じだ。しかし、財源はと聞かれたとたん、支離滅裂な回答になる。単に「お金を刷ればよい」とか、「国債を増発すればよい」と答えれば完璧なのだが、それが怖くて言えないようだ。逆に「毎回政府の借金を増やすだけじゃあないだろう」という。その意味で、「お金がなければ刷りなさい」と主張している我々のほうがトランプ氏より更に過激ということになるのだろうか。

例えば、トランプ氏は10年で10兆ドル(1100兆円)の減税を行うと主張した。その財源はと聞かれたとき、トランプ氏は「教育省だ。環境保護局もだ」と省庁廃止を提案した。教育も環境問題も無視してよいから減税だという。それでも足りないと言われると、今度は製薬会社に出させるという。だがそれでも全然足りないから「トランプはペテン師だ」と烙印を押された。

彼はインフラ投資も主張する。高速道路もガタガタだし、古くなった橋も危ない。空港もみすぼらしい。やらなければならない仕事がいっぱいあるし、やれば雇用が生まれる。しかし、それをやるにはカネが要る。税金を高くするしかカネを得る方法はないとの主張に対し、カネは色々引っ張ってくる方法があるという。彼の商売ならそうだったかもしれないが、国の政策とは相容れない。

かつて政権を取る前の民主党は、子供手当をマニフェストに書いた。無駄を省けばいくらでも財源は確保できると主張。実際はそれは嘘だった。トランプ氏の主張はそれに似ている。トランプ氏は主張を目まぐるしく変える。柔軟だからいいだろうと、勝手な理屈だ。何を信じて良いか全く有権者には分からない。

一方で、「刷ったお金を財源に」という主張は、そんないい加減な論理ではない。しっかりとマクロ計量経済モデルで試算を行った正統派の論理だ。経済を拡大するには、需要を増やす必要があり、そのためには、より多くのお金を国民に与える必要がある。それができるのは政府しかなく、通貨発行を行い国民にお金を渡せば経済は拡大することは明かだ。もちろん、それは財政赤字として計上されるだろう。彼の会社が赤字を出せば、将来返さなければならない義務が生じるし、赤字が増えれば倒産の恐れがでてくる。しかし国は通貨発行権をもっており、破綻する恐れはまったくない。ましてやドルは基軸通貨だから、「赤字」は、国の経済の発展に貢献するだけでなく、世界の経済の発展にも貢献する。彼の会社はアメリカ中からドルを吸収して「金持ち」になったのだろう。しかし、アメリカが諸外国からドルを吸収してもアメリカは金持ちにならない。アメリカがドルで溢れれば、インフレになるだけだ。諸外国がドルを失えば、世界経済は不況に陥り、それに引っ張られアメリカも不況になる。そんなにドルが欲しければ、中央銀行たるFRBが刷ればよいだけだ。刷ったカネが世界中に行き渡れば、そのカネでアメリカ製品も売れるようになり、アメリカも金持ちになる。
刷ったカネで世界の警察官の役割を果たし、しかも世界経済の発展に貢献する。それこそがアメリカを偉大にする方法ではないか。

小野盛司

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