フラッシュバック 90s【Report.27】放送法違反による電波停止の読み上げで騒いでいる今のメディアの体たらく

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先日、高市総務相が政治的な中立性を欠いたメディアに対する、放送法第4条違反を適用しての、電波停止の件について発言したことが物議をかもしているようです。

私のこの連載のReport.15において、90年代に実際に、テレビ朝日が放送免許を取り上げられるのではないかと追い詰められたことがあることを記事にしておりました。

改めて、放送法の第4条を引用してみましょう。

(国内放送等の放送番組の編集等)
第4条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

改めて椿発言の顛末を確認

椿発言が問題になったのは、以下の発言を当時のテレビ朝日の報道局長が行ったからです。

「小沢一郎氏のけじめをことさらに追及する必要はない。今は自民党政権の存続を絶対に阻止して、なんでもよいから反自民の連立政権を成立させる手助けになるような報道をしようではないか」
「日本共産党に意見表明の機会を与えることは、かえってフェアネスではない」

この発言が事実であれば、テレビ朝日の報道局が方向性として、反自民党で動いていたということであり、事業者が組織として、意図的に政治的中立性を欠いていたということになります。

その上で、事業者として電波放送の資格があるか否かという問題になったわけです。

会社の方向性だから問題であって個人どうこうではない

そう考えると、一番組のキャスターが偏向した内容を発言していることで事業者自体の電波停止までいくとはわからないわけです。そんなこといったら、最盛期のNEWS23やサンデープロジェクト、サンデーモーニングを抱えていた赤坂や六本木のテレビ局さんは何度電波停止されていたかわかりません。

高市総務相も今年の予算委員会では「1回の番組ではまずありえない」ということを述べているわけです。その後、「私が総務相の時に電波停止はないだろうが、将来にわたってまで、法律に規定されている罰則規定を一切適用しないということまでは担保できない」と言っているので、メディア側は戦々恐々かもしれませんが。

どこまでも、事業者、つまり企業に罰則が規程されるわけです。ただ、メディアやどこぞの野党が好きな「任命責任」とかいう責任を政権が事業者に託せば、一番組によって電波停止が行われるかもしれませんが、それはもはや与党の良心を信じるしかないでしょう。

1個人であるキャスターや出演者が怒る理由

そのような状態で、テレビに出演しているキャスターやコメンテーターが怒っているのはなぜでしょうか?

私は少し皮肉な面も書いているのですが、この方々は自分たちが「政治的中立性」をキープした発言やポジションを取ることができないことを自覚しているのだと思います。それ故に、怒って抗議行動を起こすことで、放送法の規制対象となる事業者(テレビ局)に対して圧力をかけているんでしょう。

要は、「俺たち、私たちのクビを切るなよ!」というテレビ局に対するロビー活動の範囲を出ていないのです。

規制をかいくぐってこそのジャーナリズム

本当は、六本木や赤坂のテレビ局の社長のコメントを出してほしいのですが、朝日新聞がコメントをとったのはフジテレビの亀山社長でした。バラエティ出身なので、報道に精通しているとはあまり思えないのですが。

コメントは以下のようになっています。

「公権力の介入は抑制的であるべきだ。もちろん自ら律して、介入のすきを与えないことが大前提。決して萎縮するわけではなく、自らを守るためには自らが(放送法を)守るという気持ちは強い」

至極当然の発送ですね。それ故に、社長や報道の方向性を決める人物は軽率な発言をしてはいけない。政治的中立を取りながらも、メッセージを伝えるために、コメンテーターやニュース報道の方法、カメラの取り方などの工夫の余地はあるわけです。
規制の目をかいくぐって、物事を発信していく技量こそが、ジャーナリストには求められているわけで、ただただ、床屋談義を超えないコメントを垂れ流すのならば、バラエティ番組と変わらないわけです。

ただ、やりすぎると、赤坂のテレビ局のように、サブリミナルなどまで使ってインプリンティングしてきますから、そこは視聴者のリテラシーの問題なわけです。

改めて確認しておきますが、政治的中立性が求められているのは電波を使った媒体だけなので、新聞媒体にはそのような規制がかかっていません。

90年代のように電波停止の危機がありうるのか?

私は、これからのマスメディアの危機は、電波停止ではなく、広告収入の大幅減少だと思っています。

そもそも、国民がテレビメディアによる報道を全く求めていないとなったとき、高額な広告料を一体誰が払うでしょうか?

現にマス媒体への広告費用はインターネット広告費用に負けており、その傾向はますます強まっていく可能背が高いです。
そうして、ネットとテレビがクロスオーバーして、メディアミックスが始まっていくと、テレビの中で、床屋談義をしていただけのキャスターやコメンテーターの活躍の場はなくなっていくでしょう。

今回、彼らが怒っている最終の問題はここなわけで、90年代の緊張感とは全く違ったものといえるでしょう。


※第28回「フラッシュバック 90s【Report..28】男女平等社会・家事の外注化が進んだ90年代の結果は保育所難民?」はコチラ
※本連載の一覧はコチラをご覧ください。

西部邁

神田 錦之介

投稿者プロフィール

京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程修了。
大切なことを伝えることとエンターテイメントは両立すると信じ、「ワクワクして、ためになる」文章をお送りします。

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