小沢一郎・志位和夫 ブキミな蜜月関係

あの二人が「熱くトーク」 野党共闘という名の妖怪が、政界を徘徊している。

 今夏の参院選の一人区で野党の候補者調整を行って、与党の自民党、公明党に対抗し、安倍政権を打倒しようというのである。

 その仕掛け人の一人は、日本共産党の志位和夫委員長である。

 そして、もう一人。岡田克也代表すら、表面上は拒絶するこの革命政党に寄り添い、民進党に共産党提案を呑むように迫る元保守政治家がいる。小沢一郎である。

 岩波書店の月刊誌『世界』の「2015年安保から2016年選挙へ」と題した別冊(平成二十八年三月発売)は、「野党共闘が安倍政治を倒す」と題する二人の対談が巻頭を飾っている。

小沢 志位委員長と私と、この二人での対談なんて、かつてでは考えられないことでしたよ(笑)。
志位 ほんとうにそうですね(笑)

 そう述べながら、両氏は気持ち悪いほどに野党共闘に取り組むお互いを褒め合っている。その盛り上がりたるや、「しんぶん赤旗」が〈熱くトーク〉〈エールを交わしています〉と紙面で取り上げたほどだ。何より異様なのは、やはり共産党委員長とともに打倒安倍政権を熱く語る小沢一郎の姿である。

「(安倍政権については)戦後最悪の政権という言葉に尽きる」

「政治の本来の役割を忘れて、自由競争と市場原理を最優先し、弱肉強食で政治を行ってきている」

「資本主義のデメリットは社会保障などのセーフティネットを作ることで補われてきました。つまり資本主義は民主主義という形によって生き残ってきたのです。安倍政権の考えかたはそれを完全に否定するものです。民主主義に逆行し、歴史に逆行する政権だと思っています」

 何が歴史に逆行するのか。我慢して聞いてみよう。

「(今や)戦前回帰的な政権となっている。経済大国たるニッポンは軍事大国としても世界に影響を及ぼさなくてはいけないという感覚が安倍さんの心情の中には色濃くある。それが安保法制の転換であり、日米同盟を理由とした軍備拡張、沖縄の基地問題にもつながってくる。
 このような歴史が間違っていることは、戦前戦後の歴史を通してすでに証明されていますし、二一世紀の世界の理想、国連の理念、日本国憲法の理念を真っ向から否定するものです」

「安倍政権は、日本の行く末を、国民の生活を危うくする政権です。なんとしてでも、ここで流れを変えなくてはいけない」

安倍サゲのため自民アゲ

 そこまで言われて志位は、普段と正反対に、過去の自民党政治にも評価すべき点があったかのように語る。

「かつての自民党はいわゆるケインズ主義でやってきたわけです。(中略)大企業の利益の一定の部分が設備投資などをつうじて経済全体に広がり、結果として国民生活のそれなりの向上にむすびつくという一面がありました。しかし、今は、ひたすら企業を儲けさせることだけになってしまった」

「戦後長い間、保守政治がある目配りをしてきたことを全部壊して、寒々とした弱肉強食に置き換えてしまった」

「(安倍政権は)従来の保守政治とは異質なものでもある。その点で、これまで保守といわれていた方々、あるいは自民党政治の中にいた方々とも、私たちは一緒にやっていけるのではないかと思っています」

 と、ここまで語っているのである。
『世界』編集部もこう煽った。

「政界の大ベテランの小沢さんにうかがいます。共産党と一緒にやることになるとは思わなかったと先ほどおっしゃっていましたが、まだそのように思っている野党の方々は少なくないと思います。共産党に対して何かアドバイスはあるでしょうか」

 これに対しても、小沢は共産党への称賛を繰り返している。

「いやいや、もう共産党はここまで決断すれば十分だと思いますよ(笑)。(中略)現実に自衛隊も安保もあるというその事実は認めると言っているし、天皇陛下の出席する国会の開会式もちゃんと出た。これは画期的な話ですよ」

 共産党が言う連合政府など、国民の目を欺く偽装に決まっている。 いやはや、この人物は本当の姿を隠す赤いカメレオンに利用されていることが分からないほど耄碌しているようだ。
 ここにきて志位は、

「野党間で賛否があることですので、いったん横に置いて」

 選挙協力を優先する考えを示しているが、諦めたわけではなさそうだ。

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西部邁

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