テロとグローバリズムと金融資本主義(その3)

④「死ぬまで働け」・始発まで待機……ワタミ、当時の実態
http://digital.asahi.com/articles/ASHD85Q03HD8ULFA02X.html?rm=450

 ブラック企業の代表・ワタミが、女性社員の自殺から7年たってようやく過労自殺の責任を認めたわけですが、それにしても、社長の渡辺美樹氏が自民党の参議院議員をぬけぬけと勤めているというのは、許し難いことですね。

⑤一億総貧困社会がやってくる ニッポンの最貧困密着ルポ(週刊スパ2015年12月29日号)から一例を引きましょう。

 中高年にとって「介護離職」は年々、深刻な問題になっている。離職をきっかけに貧困生活へと転落してしまう例も少なくない。群馬県で母親の介護を続ける山西さん(仮名・52歳)も、介護が原因で、年収が520万円から160万円まで激減した。
「82歳になる母親は、心臓病や甲状腺の病気のほか、20年以上もうつ病にも悩まされていたりと、もともと体が弱い人でした。それが父の死や私の離婚などが重なり、とても一人じゃ生活させられない状態になってしまって」
当時、山西さんは都内で勤めていたが実家に拠点を移し、片道1時間半の通勤と介護生活に耐える日々を続けたという。(中略)
毎日終電近くまで残業を強いられ、たまの休日は母親の病院の付き添いで休むこともできない。そんな山西さんを病が襲った。
「無理がたたったのか、私もうつ病になってしまったんです。休職しても改善せず、母親の介護もあるので復帰をあきらめて地元の教育関係のアルバイトを始めました。今は大量のうつの薬を飲みながら、何とか介護を続けています」
貯金も底をつき、頼りたい嫁も今はいない。山西さん自身のうつも悪化と再発を繰り返し、現在は母親の年金にも頼る生活だという。
「この先、もっと介護の出費が増えたらバイトの掛け持ちもしないと……自分の老後を考える余裕などありません」

⑥貧困寸前! 急増する「女性の生活苦」知られざる実態
http://diamond.jp/articles/-/83467
http://diamond.jp/articles/-/83467?page=2
http://diamond.jp/articles/-/83467?page=3
http://diamond.jp/articles/-/83467?page=4
http://diamond.jp/articles/-/83467?page=5

 この記事の中の概要部分を引用しておきましょう。

色々な指標を見ると、そうした現状が見て取れる。たとえば、日本は子どもの6人に1人が貧困と言われ、OECDの発表によれば子どもの相対的貧困率はOECD加盟国34ヵ国中10番目に高い。また、ひとり親世帯の子どもの相対的貧困率はOECD加盟国中最も高い。ひとり親家庭の貧困率は50%を超える。そして、日本の平均世帯所得は1994年の664.2万円をピークに下がり続けており、2013年は528.9万円となっている。
なかでも前述したように、若年層を中心とする女性の貧困は深刻だ。昨年1月にNHKで放送された「深刻化する“若年女性”の貧困」では、働く世代の単身女性のうち3分の1が年収114万円未満と報じられた。非正規職にしかつけず、仕事をかけ持ちしても充分な収入が得られないという状況だ。

⑦また、現在年収200万円以下のワーキング・プアは、1100万人もいて、男性は全勤労者の1割ですが、女性勤労者では、なんと4割を占めます。
http://www.komu-rokyo.jp/campaign/data/
http://heikinnenshu.jp/tokushu/workpoor.html

 そういう人たちの多くは、乳飲み子や幼子を抱えながら、働かなければ食べていけないので、仕方なく職に就いているのです。

 以上、貧困化へと邁進している日本国民の経済状態を詳しく見てきましたが、政府は、有効な景気浮揚策(それは何よりも、アベノミクス第二の矢であったはずの財政出動です)をなんら打たずにこの現状を放置し、見て見ないふりをするために、「一億総活躍社会」だの、「すべての女性が輝く社会」だの、「GDP600兆円」だのと、空しい掛け声だけを上げています。そうしてやっていることは、先に見たような、グローバル資本家、グローバル投資家を富ませるだけの新自由主義的政策ばかりなのです。

 こうして、グローバリズムと行き過ぎた金融資本主義は、たとえ直接にテロや暴動や革命に結びつかなくても、中間層を貧困層へと追い落とし、そのすそ野をどんどん広げていきます。そうして怨嗟の蓄積が限界に達した時、相互扶助精神の発達したこのおとなしい日本国民も、いつか単純なスローガンのもとに集結して立ち上がるかもしれません。それがいまわしい全体主義への道に通ずるものであることは、歴史が教えています。

 EU・ユーロ圏の悲惨な状態や中東の終わりなき紛争、中国経済の破滅的状態に対して、日本は一国としてはほとんど何もできないでしょう(これらの危機が波及してきたときに瀬戸際でガードすることはできますが)。しかし、国民生活の安定と秩序を維持するためには、わが国は他国に比べて数々の有利な点を持っているのです。それらを活かすことは不可能ではないのに、安倍政権は国民経済や国民文化を破壊するグローバリズムの方ばかり向いています。

ウォール街のような強欲資本主義ではなく瑞穂の国の資本主義を」と宣明したのは安倍首相自らです。いったいこの言葉を彼は覚えているのでしょうか。グローバリズムべったりの現在の安倍政権の性格に何としてもストップをかけなくてはなりません。

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西部邁

小浜逸郎

小浜逸郎

投稿者プロフィール

1947年横浜市生まれ。批評家、国士舘大学客員教授。思想、哲学など幅広く批評活動を展開。著書に『新訳・歎異抄』(PHP研究所)『日本の七大思想家』(幻冬舎)他。ジャズが好きです。

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