TPP協定署名間近の危機感が足りない日本
- 2016/1/7
- 国際, 経済
- TPP
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TPP協定はもう「秘密交渉中」ではない
結果として、前述の通りTPP協定交渉参加12か国は5年半に及ぶ長い交渉を終え、2015年10月のアトランタ会合で妥結に至りました。大筋合意をしていないと信じていた人に、すでに大筋合意どころか合意をしたことを伝えると、まずは驚いて、次にそれでは急いで自分も政府の資料を読まなければならないんですね、と返ってきます。その通りです。交渉内容が明らかにされた今、伝聞だけを頼りに騒いでいても、政府は相手にしてくれません。
それなら仮訳でいいから早く日本語の条文を出してほしいものですが、冒頭で述べたように、署名して正文が出てくるまで日本政府からTPP条文の仮訳が出ることはなさそうです。しかしすでに交渉は終わり、もはや協定の内容は秘密ではありません。対投資家への透明性だけでなく、国民に対する透明性を確保するために、政府は説明責任を果たさなければなりません。真面目に政府の資料や原文、又は有志による翻訳等を読み込み、疑問点を見つけて質問すれば、主に内閣官房TPP政府対策本部がきちんと答えてくれるはずです。万一質問に答えてくれない場合は、国民との約束である「国民的議論」を経ないままに承認、批准へと進んでいくことになってしまいます。首相官邸がどのように考えているかは別として、交渉に携わった交渉関係者としては、手続き論ではなく中身で判断してほしいというのが願いでしょうから、国民の疑問に対しては丁寧に答える必要があるのです。
政府はTPPの内容が良いものと考えているわけですから、メリットについては詳しく解説したものを提供していますが、問題点や疑問点など、こちらから質問しないことには、わざわざデメリットを教えてくれたりはしません。そもそも多くの国民が何をデメリットと考えているのかも良く分かっていない可能性があります。ですから、面倒でも自分で内容を知り、不安材料を消したり、特定したりする作業が必要です。
TPP協定暫定文仮訳&解説公開中
もし、今、政府の資料を読まず、質問もしないで放置したら、国民の関心が低いからこれでいいのだと判断されかねません。TPPって何?では、暫定協定文が出された11月5日から、日米並行協議の結果や投資章、遺伝子組み換えに関する取り決め、医療や食の安全に関する条項などを選んで有志による仮訳と解説を公開しています。
http://notpp.jp/documents.html
TPP協定の影響試算に関する政府の資料の在り処もリンクを貼っておきました。ぜひとも自分で一次資料に目を通し、分からないところは政府に質問して、自分で判断していただければ幸いです。
注釈:
注1:TPP Countries to Sign Trade Pact in New Zealand Feb. 4(Bloomberg BNA)2016年1月6日
http://www.bna.com/tpp-countries-sign-n57982065797/
注2:「環太平洋パートナーシップ閣僚声明」(現地時間2015年10月5日発表)
日本語(仮訳)【PDF:114KB】http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2015/10/151005_tpp_atlanta-statement.pdf
英文(原文)【PDF:37KB】http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2015/10/151005_tpp_atlanta-statement(e).pdf
注3:第189回 参議院 予算委員会 平成27年11月11日 閉1号
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/189/0014/18911110014001.pdf
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