フラッシュバック 90s【Report.9】30分に込められた大人の事情と子どものヒーローショー

ヒーローは普段何をしている?

最近、ネット上でこのような比較が流布しています。
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単純に言えば、正義の味方は場当たり的な対応がメインであり、悪の組織はまるで会社組織のように目的を持って動いているということを比較しているわけです。

このスライドを作った人物が正義の味方をどのようなイメージをもっていたかわかりませんが、私の見ていた戦隊モノなどに関していえば、的を射ているかと思います。正義のヒーローは、移動販売で稼いでいたり、学生だったり、フリーターだったり。基本的には、一般的なサラリーマン組織(9時~5時の土日休み)とは別の時間軸で動いている人々が多かった印象があります。

そういうライフスタイルを「正義の味方」として印象付けられた私たちの世代は一般的なサラリーマン組織を「悪の組織」とみなしてしまっているのかもしれません。

正義とはいかにあるべきか

ジョンロールズの正義論では、正義の原理は利益を求める人々の相互合意の上に成り立つとされています。

その原理で見ると、照らせ合わせると、現行秩序を乱して、自己の利益を実現しようとする「悪の組織」は正義を実現しようとはしていないわけです。一方、「悪の組織の企み」に対するアンチテーゼとして、正義のヒーローは力を行使し、まったりと日常は過ごしているわけです。

この解釈で行くと、正義の味方には向上心や変革といったモチベーションはほとんどなく、現在秩序が乱れる際に現れるということになります。

現行秩序を変えていくイノベーション

現行秩序を乱して、自己の利益を追求することは、現代におけるイノベーションにも置き換えられると思います。イノベーションは資本主義、capitalismの原動力であり、それなしでは経済活動は停滞していきます。

後付感もありますが、「悪の組織」というのはcapitalismの象徴として描かれていたのではないでしょうか。だとすれば、その「悪の組織」に対抗してきた「正義のヒーロー」は一体何者なのか。冷戦の時代であれば、共産主義をあげることもできそうですが、90年代はフランシスフクヤマの言葉を借りるまでもなく、「歴史の終わり」を迎えたあとでした。

90年代に「正義のヒーロー」に熱狂し、自分を置き換えていた私たちは、現実の世界において、居場所がなかったといえるかもしれません。

引きこもりや社会への不適合といった現象も、もしかすると、こういう細かな出来事が影響しているかもしれません。


※第10回「フラッシュバック 90s
【Report.10】ゲームセンターから卒業した私たち」はコチラ
※本連載の一覧はコチラをご覧ください。

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西部邁

神田 錦之介

投稿者プロフィール

京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程修了。
大切なことを伝えることとエンターテイメントは両立すると信じ、「ワクワクして、ためになる」文章をお送りします。

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