フラッシュバック 90s【Report.3】90年代前半にあらわれた「なりたい自分」と「トレンディドラマ」

ライフスタイルを流行にした「トレンディドラマ」

記号を消費するということはとどのつまり、自分のライフスタイルを着飾るということです。もう少し、砕いた言い方をすると、「なりたい自分になる」ということです。

「なりたい自分になる」ためには、服も選んで買わなければいけないし、化粧品もこだわり、髪型やメイク、場合によってはくりだす盛り場も選ばなければいけないでしょう。

そして、代理店やメディアはここに目をつけます。「なりたい自分」を流行の中で作り出して提供し、定期的に更新していくことによって、人々の購買意欲を刺激し続けるということです。

その流れで生まれてきたのが、いわゆる「トレンディドラマ」でした。春夏秋冬3ヶ月ずつを一区切りとしており、少なくとも年に4回のトレンドを作り出していくことができたわけです。

「トレンディドラマ」が作り出した世代

そこで、冒頭の「月曜日の夜、街からOLが消える」という言葉に戻りますが、この頃のOLは「東京ラブストーリー」の世界観に「なりたい自分」を投影し、いろいろな選択をしてきたことでしょう。

東京ラブストーリーの原作者である、柴門ふみ氏と林真理子氏の対談の中で林氏は、東京ラブストーリーでさとみ役を演じた有森也実さんが同姓から「あなたの生き方は嫌い」となじられたエピソードを語っています。

ご存知の方も多いと思いますが、さとみという役どころは比較的、古風な考え方で幼稚園の先生をしているのですが、ご縁があれば、家庭に入りたいというタイプです。鈴木保奈美が演じる、帰国子女で奔放なリカとは正反対のタイプとして描かれています。

ここで、注目したいのは、「生き方が嫌い」という言葉です。性格ではなく、「生き方」つまり、「ライフスタイル」なのです。やはり、「トレンディドラマ」にライフスタイルの影響を受けた人々は少なからずいる証左といえます。

下の図は内閣府男女共同参画白書の平成24年版より引用したものです。
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ちょうど、平成3年ごろから、専業主婦の世帯と共働きの世帯が同数となり始めています。もちろん、政府の男女共同参画の取り組みの効能もあるでしょうが、奇しくも、東京ラブストーリーが放送された年でもあります。

織田裕二演じる、完治はリカとさとみの間を、ドラマの作品中いったりきたりしていました。今考えれば、さとみのような生き方が主流だった一方で、リカのように奔放な魅力で振り回してくる女性の生き方が現れ始めたことへ戸惑っていた、同時代の男性陣の深層心理を描いていたのかもしれません。

このように、ライフスタイルを流行化した「トレンディドラマ」は90年代中ごろまで勢いを保ちますが、90年代後半に入るとドラマの持つ側面は違ったものになっていきます。

次回は90年代後半のドラマから人々を読み解いていきましょう。


※第4回「フラッシュバック 90s【Report.4】
「ポストトレンディドラマ時代」のリアルとファンタジー」はコチラ
※本連載の一覧はコチラをご覧ください。

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西部邁

神田 錦之介

投稿者プロフィール

京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程修了。
大切なことを伝えることとエンターテイメントは両立すると信じ、「ワクワクして、ためになる」文章をお送りします。

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