日本のTPP協定交渉第2ラウンドが始まった
- 2013/12/18
- 経済
- TPP
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国民の不信感を募らせた政府の対応
これまでの日本政府の動きを振り返ってみると、本気で交渉をしようとしているのか甚だ疑問で、米国の言いなりになってしまうのではないかという国民の不安を掻き立てるような対応が続いていました。日本政府の発表や報道が、参加国政府の発表や海外メディアによる報道とあまりにも違いすぎたことが、国民の不安が政府への不信へとつながった大きな原因の一つと言えるでしょう。特に4月12日の事前協議の結果を受けた日米合意に関して、日米両政府の発表が大きくかい離していることに対して、外務省は「日米合意の内容は佐々江・マランティス書簡が全てで、米国が国内向けに発表する内容は関知しないし、仮訳も作成しない」という見解を出しました。しかしその往復書簡と、外務省が仮訳を出したUSTRから上下両院議長宛に出した通知書を熟読すると、日本が米国の要求に沿ってどこまで国内の規制緩和を行うかを話し合う、ということが書いてあるだけです。
一方で、産業競争力会議参加者の顔ぶれをはじめ、安倍首相の「世界で一番企業が活動しやすい国」にしたいという宣言、麻生副首相の水道事業への公設民営化促進発言がありました。12月のシンガポール閣僚会合で1ミリも譲らないと、甘利TPP担当大臣の代わりに頑張った西村副大臣にしても、米国での講演の後で「国内の反対勢力を説得していく」と、交渉が始まる前から向いている方向が間違っているようでした。西村副大臣は国会で自分の発言は、間違って受け取られたようだと弁明しましたが、日本を取り戻すと言って政権を取り戻したはずの自民党の政策が、むしろ日本を多国籍企業に売り渡す、というTPPの基本的な目的と合致したものへ傾いていく、これはとても恐ろしいことです。
秘密裏に行われているTPP協定交渉に関して、漏れ伝わってくる内容のひどさもさることながら、表に見えている部分でのちょっと調べればすぐに分かるような矛盾と、それを取り繕うための苦しい説明が、どんどん政府と国民との距離を広げていきました。これでは政府と国民が一体となって交渉に臨むなど、到底あり得ません。そこへ今回、とうとう政府が日米間の認識に大きな違いがあると認めたこと、そして日本の立場をはっきりとさせたことで、皮肉なことに政府と国民の間の溝が、少しだけ埋まったような気がしたのです。これでやっと政府がちゃんと交渉を始めたのだな、ということが伝わったということです。何でも公開すればいいというものではありませんが、すぐにばれる嘘はいけません。これは男女の仲を上手く保つための大原則ですが、政府と国民との間にもこれは当てはまるというわけです。
日本のTPP協定交渉は始まったばかり
もちろん、日本政府が国民と向き合う姿勢を見せたからといって、これでTPPの方向性が多国籍企業のための貿易協定であるという実態が変わったわけではありません。こんなTPP協定にはそもそも交渉自体に参加してもらいたくはありませんでした。しかし、安倍首相の高度に政治的な判断により、日本は交渉に参加してしまったのです。参加したからには交渉半ばでの撤退はまずあり得ないでしょう。
10月24日の参議院予算委員会における山田俊男議員の質問に「日本は瑞穂の国ですから、この麗しい国をしっかりと守っていくために、その手段としてのTPPがある」と答えた安倍首相の言葉が実行されるのか見守りたいと思います。この「見守る」という言葉は実は正確ではなく、まだ「監視する」
と言ったほうが実際の感情に近いと言えます。今後、安心して見守ることができるようになるまでには、まだまだ越えなければならない山がいくつもあります。まずは日本政府が新自由主義的政策から決別すること、もう一つは更なる情報公開が必要です。
私たちはこれからのTPP協定交渉を第2ラウンドと捉えて、真に日本の国益となる協定の形を模索していかなければなりません。現行のTPP協定交渉がいかにひどいものかは大方分かりました。これからはそのひどさをどう正していくのか、どのような協定になれば私たちが失ったものを取り戻し、日本らしい持続可能な繁栄と世界に対する貢献ができるのかを真剣に考え、政府に提案していくことが求められています。
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