近代を超克する(17)対デモクラシー[10] デモクラシーを超克する

代議制

 代議制とは、国民が代表者を選出し、その代表者が政策を決定する制度のことです。この制度は、民主制と貴族制の合成になります。つまり代議制は、制度論的には間接貴族制かつ間接民主制ということになります。
 ただし、代議制を間接貴族制と呼ぶ場合と、間接民主制と呼ぶ場合では、相違が生まれます。間接民主制と呼ぶ場合には、代議士は民衆の奴隷となります。民意に従えと言われるようになるわけです。間接貴族制と呼ぶ場合には、代議士は精神的貴族となります。代議士は、自身の判断によって政治を行うことが求められるのです。
 そのため、民主政体において代議制を採用する場合、代議制は間接民主制とも呼ばれることになります。一方、混合政体において代議制を採用する場合、代議制は間接貴族制とも呼ばれることになります。

日本の伝統的な政治

 日本の政治について考えてみます。日本の政治は、日本の歴史に根ざした政体によって行われてきました。日本の政体は、神道・仏道(仏教)・儒道(儒教)という三道の一致の上に築かれてきました。

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 政治における三道は、神道は天皇の道を、仏道は衆生の道を、儒道は聖人の道を指し示しています。この三つの道の調和において、日本人の政道は行われてきたのです。
 西欧の政治制度に当てはめれば、神道は君主制に、仏道は民衆制に、儒道は貴族制に類似性があると言えるかもしれません。その三つの制度の調和が政治に安定をもたらすのですから、西洋で言う混合政体が日本の政治制度となります。

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 世の中がうまく治まるには、試行錯誤しながら、なんとか調和を模索しなければなりません。それは容易ならざる営為でしょうが、日本人が昔から普通に行ってきたことでもあります。日本の政道において、君主制・貴族制・民主制の異なった要素は、互いに助け合いながら日本史を紡いできたのです。
 つまり、天皇の道と、衆生の道と、聖人の道は、それぞれの特徴を踏まえた上で交じり合ってきたのです。皇道・易行道・王道の交差と言い換えることも可能です。もし、これらの一つだけしか日本になかったならば、日本史の安定性は大きく崩れていたと思われます。日本は和の国だと言われるように、それぞれの道が交じり合い、調和し合った上で、秩序を保って成り立ってきたのです。


※第18回「近代を超克する(18)対リベラリズム[1]西欧の自由」はコチラ
※本連載の一覧はコチラをご覧ください。

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西部邁

木下元文

木下元文

投稿者プロフィール

1981年生。会社員。
立命館大学 情報システム学専攻(修士課程)卒業。
日本思想とか哲学とか好きです。ジャンルを問わず論じていきます。
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