国会議員の皆様「真面目な」議論をお願い致します
ざっと振り返ってみてもこれだけコロコロ理由が変わっているのです。実際のところ誰もまともに消費税を増税しなければならない合理的な理由は説明できていないというのが現実ではないでしょうか?にもかかわらず、「増税はしなきゃいけない」という結論だけは何故か変わらず、結果として昨年は消費税8%への増税を行い、GDPや国民所得が大幅に下落し、あらゆる数値データが「今回の8%の増税は失敗であった!!10%の増税を断行すれば日本経済は今後取り返しのつかない打撃を受ける可能性が高い!!」と警告しています。
それにも関わらず、与党の政治家は口を開けば、「消費税増税の影響は想定内」(むしろ、これほどの景気後退を想定したうえで増税を決定したのであれば、それこそ増税を決定した安倍首相が想定外の馬鹿だったと言っているに等しいと思うのですが・・・)だの「景気の落ち込みは消費税増税前の駆け込み需要の反動だから、消費者心理を考えると今後はすぐさまV字回復する」だの、果ては「夏場の景気が悪かったのは雨がたくさん降って消費者が買い物に行く気が失せたからだ!!」だのと言っており、全く真面目に議論を行おうという姿勢が感じられません。
京都大学の藤井聡さんは、最近ことあるごとに「現在の日本を救うにはまっとうな議論こそが必要とされている!!」と述べていますが、実際に政策を決定する政治家がこの有様では、もはや日本を救うための真っ当な議論など全く望むべくもないでしょう。さすがに、「景気が悪かったのは雨がたくさん降ったせいだ!!」という発言には驚きましたよ、雨がたくさん降っただけでGDPが7%も落ち込むのであれば、もしかしたら次の首相には与党の政治家ではなく、テルテル坊主作りの達人を就任させるべきかもしれません。
ここまで、如何に過去から現在の増税議論がふざけたものであったのか、ということについて説明してきましたが、私個人の考えとしては、残念ながら、もはや消費税10%への増税はほとんど回避不能なのではないかと思っています。理由は簡単で、安倍首相が消費税増税に前のめりであることは言うまでもありませんが、また同時に与党の反安倍の政治家も野党の政治家も誰も消費税10%への増税を止めようとはしないからです。これは、反安倍の政治家や、次に政権を狙う野党の政治家の心理を考えればわかることで、次に自分たちが権力を握った時に、消費税増税という問題が残っていると、非常に難しい立場に置かれるので、はっきり言ってしまえば、消費税増税のような国民の反感を買うような政策は、もう安倍首相が首相のうちにさっさと片付けてほしいと皆心のどこかで思っているわけです。
もちろん、中には消費税増税に反対を唱えている政治家もいるでしょうが、まあそれもちょっとしたパフォーマンスのようなもので、実際には、消費税を増税したい安倍首相と、安倍政権のうちにさっさと消費税増税という課題を片付けてほしいその他の政治家で無言のうちに結託し、暗黙の了解事項として消費税増税の準備を着々と進めていると考えるのが妥当でしょう。気味の悪い話ではありますが、このように考えると、どうにも不合理な与党政治家の弁解弁明発言も、それに対して大した批判も行わない野党の政治家の姿勢も理解できます。
あまりにも悲観的過ぎる見方かもしれませんが、所詮どんな高邁な理想も、理知的な思考能力も、不屈の精神も、ある種の政治的な力学の上では紙のように簡単に吹き飛んでしまうのが政治家の性であるようです。さてでは、ここで、政治家批判をすべきでしょうか?まあ、そこはあえて控えておきます。仮に「民主政治のもとでは、国民のレベル以上の政治家は現れない」という言葉が真理であるなら、ここで政治家の精神性を非難罵倒することは、あたかも自分の目の前にある鏡に向かって罵声を投げつけるようなものですから・・・。
最後に、今回の消費税増税議論で一つの重要な要素であった(と言われている)3党合意における景気条項というものが、“如何におかしな出鱈目なものであったか”という問題について解説したいと思います。
消費税の長所と短所、確認しましょう
まず、最初に述べておきたいことは、私は自分のブログの記事内で、三党合意がなされた時点で、例え景気条項があっても消費税増税は断行される可能性が高いということを主張していました。詳しくは私のブログ記事を参照していただきたいのですが(筆者ブログ:超個人的美学より『消費税問題についてアレコレ・・・』 『消費税問題についてアレコレ・・・②~景気条項さえあればいいのか?麻生元総理&三橋貴明さんの対談から~』)、この三党合意の内容に関して重要な点を一つ挙げると、実はこの景気条項にはどこにも「名目3%、実質2%の成長が達成できなければ消費増税は行わないという」なんてことは書いてないのですね。「名目3%、実質2%の成長」というのは、実は、「まあ、そのくらいの経済成長を一つの目標と目安にしつつ、その他の色んな事情を勘案して総合的に消費税の増税について決断しましょうよ」という程度の目安としてしか設定されていません。ですから、その証拠に現在、「たとえ経済が減速しているとしても消費税は増税すべきだ!!」なんて主張する政治家や評論家がたくさん出てきています、結局、景気条項なんてものは、解釈次第でどうにでも取れる実質的な空手形のようなものでしかなかったのですね。いま読み返してみると、一体何故こんな条文でもって一部の評論家たちが「三党合意はなされたが、景気条項があるから絶望するのはまだ早い!!」などと自信をもって言っていたのかが全く不思議に思えてきます。
このように、そもそも景気条項の有効性自体が全く怪しいものであったのですが、最後に、また、そもそも論として、この景気条項の内容自体が、消費税増税の判断の是非の基準としておかしいのではないかという問題について解説したいと思います。
消費税の長所と短所、確認しましょう
まず、第一に重要なのが消費税の性質です。当初、消費増税は「税と社会保障の一体改革」の柱として位置づけられた案だったのですが、何故、そうなったのかというと、理由は消費税の税収の安定性にあります。消費税は、消費に対して一定の割合で課税するという性質の税のため、累進課税である所得税や、赤字企業は払う必要のない法人税などと比較して、景気の動向に左右されずに安定した税収を確保できるという性質があります。なので、この安定的に税収を確保できる消費税を、今後継続的に上昇していく社会保障のための財源に活用しようというのが、そもそもの「税と社会保障の一体改革」の趣旨でありました。
しかし、これは逆から見ると、どんなに景気が悪化しても国民の所得が下がっても、社会保障の財源を確保するために容赦なく税を課していくということでもあります。
ということは、消費税というのは、最初から、景気の動向と関係なく一定の税収を確保することが目的なのですね。しかし、そうなると、消費税を増税するかの判断において、その時の景気の動向の如何によって決定するというのは如何にもおかしいと思えてきませんか?繰り返しますが、そもそも消費税というのは景気が悪くても一定の税収を確保することが目的なのですから。つまり、消費税増税を実行するのかしないのか?ということを判断するのに、景気条項のようなその時点での景気動向によって判断するという基準を設定するのがそもそも間違っているはずです。
では、消費税を増税するかしないのか判断するための基準は、どのように設定すべきであるか?私の考えはこうです。つまり、消費税増税を行うと、経済が悪くなった時でも、容赦なく国民から税金を取るという性質ゆえに、国民経済を加速度的に悪化させる危険性が存在するため、「消費税の増税は、国内の消費や投資が大幅に増加し続け、非常に景気が過熱して抑えの利かない状況、あるいは、たとえ消費税を増税しても、5年もしくは10年という中長期のスパンで、力強く安定的な経済成長が見込まれるほどに経済運営が堅調である場合に限る。」とすることです。
「そんな条項入れたら、いつまでたっても消費税増税なんてできないじゃないか!!」と思う方もいるかもしれません。もしそうであるなら、きっとそもそも現時点で消費税増税などするべきではないのでしょう。
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