消費税増税の問題点について改めて考える

20140421

今回は、今月5%から8%に増税された消費税の問題点について考えてみたいと思います。「すでに、増税されてしまったものについて今更云々しても仕方ないだろう」と思う方もいるかもしれませんが、今後さらに8%から10%への増税の議論が控えていることや、この増税による景気減速にどのように対処すべきかという問題について考える上で、今改めて消費税増税の問題点を整理しておくことは決して無意味ではでしょう。

消費税の効力

これは一般に言われることですが、現在の日本のようなデフレ不況期における消費税増税は景気を急激に悪化させます。一般に需要を抑えるため、景気締めつけの効果がありますが、特に需要不足によるデフレ状況で、消費税増税のような需要を抑えるタイプの増税を行うとデフレギャップをさらに拡大させる結果としてインフレ期の増税と比較して加速度的に景気を減速させる効果が予測されます。

つまり、一般的な大原則として、デフレ不況下での消費税増税はNGであるわけですが、安倍首相はその他の様々な要因を考慮した上(と思いたいですが、実際はどうもそうではなさそうな様子)で消費税の8%への増税を決定しました。しかし、ここで考えておきたい問題の一つは、果たして本当に、「消費税自体が、景気に対するブレーキ効果を有する方策であるにも関わらず、なぜ政府が現在の日本の状況で消費税増税に踏み切ることの必然性を感じるに至ったのか?」という問題です。

一般に、今回消費税を増税する必要の論拠となった点は次の二つです。一つには財政再建、そしてもう一つは税と社会保障の一体改革です。一つ目の財政再建とはいわゆる国の借金問題と呼ばれるもので、「果たして国の借金が1000兆円を超えるような状況で増税をしないでやっていけるのか?」という問題です。

消費税引き上げによる財政再建は可能か

財政再建については次の二つの視点から考えるべきでしょう。確かに、現在の日本政府債務残高は1000兆円を突破しており、この数字だけを見るなら早急に対処すべき非常に深刻な事態であるように思えます。しかし、一方で、現在の日本国債は金利が0.6%程度と世界で最も低い水準にあり、インフレ率もマイナスであることを考慮するなら、少なくとも「明日にでも日本が破綻する!!」などということは到底考え難いことであり、少なくとも何をおいても第一に解決すべきというような性質の問題では決してなく、また急激な景気悪化のリスクを負ってでも今すぐ増税によって解決すべき問題でもないでしょう。

さらに、「増税による財政再建」という議論は、「増税をすると税収が増える」という前提に立った議論でありますが、1997年に橋本政権下で消費税がそれまでの3%から5%に引き上げられた際には、消費税による税収は増加したものの景気の悪化により所得税や法人税が減収となり全体の税収が減ってしまったということを考えると、そもそも「増税をすると税収が増える」という前提そのものが成り立たない状況もあるため、「増税による財政再建」のための消費税増税という議論は非常に根拠薄弱であると言えます。

税と社会保障の一体改革って何ですか

次に、税と社会保障の一体改革について考えましょう。税と社会保障の一体改革という議論の意味は必ずしも明確ではなく(そもそも民主党政権時に出てきた文言を流用する時点で思慮の浅ささとプライドの低さを感じさせますが…)、それについて明確に定義付けすることは困難なのですが、重要な目的の一つは、法人税や所得税といった景気の動向によって大きく税収が上下する税ではなく、消費税のような景気の動向によってあまり税収の額が上下しない税を社会保障費に充てることにより安定的な社会保障の財源を確保しようというものです。

確かに、この議論自体には一理あるかとは思います。社会保障のような重要な支出項目の財源をできる限り景気の変動による税収の上下が少ない消費税によって賄うというのは悪い話ではありません。ただし、これには当然デメリットも存在します。消費税は、所得税や法人税と違い、景気が悪化しても税収が低下しにくいという特徴がありますが、それは同時に、景気が悪化した状況でもほとんど変わらないだけの税が課されるということで、景気の悪化を加速させます。

所得税や法人税と比較するとわかりやすいのですが、所得税は、累進性を採用しているため、景気が悪化した場合、労働者の賃金の低下とともに所得税の税率が下がることで、絶対的にも相対的に税負担が低下します。また、法人税は基本的に赤字の企業からは徴収しないため、景気が悪化して赤字企業が増えると、赤字企業は法人税を払わずに済むため、その分だけ税の負担が軽くなるのです。じつは、ここには景気の調整弁という重要な意味が存在します。所得税や法人税という税は、景気が悪化すると税負担が軽減することで更なる景気の悪化を防ぎ、逆に景気が良くなると、税負担が大きくなるので、それによって景気の過熱を抑制します。

果たして、現在のようにデフレ不況で、しかも、世界恐慌の気配の去らぬ状況において、景気が悪化した状態で、輪をかけて景気の低迷を加速しかねない消費税の増税を簡単に決定していいわけがありません。国土強靭化も同時に力強く推し進めていれば、違ってくるかもしれませんが、そのような気配は今のところありません。

→ 次ページ:「ちゃんと議論してくださいよ」を読む

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西部邁

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コメント

    • unk
    • 2014年 5月 31日

    消費増税のことになると『しょうがないね』とかいった声がよくきかれます。
    政府の間違った政策に対して日本国民はよく考え怒らないといけませんね。

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