消費税増税の問題点について改めて考える

ちゃんと議論してくださいよ

上記のように”現時点”で、”消費税”を、引き上げるという判断をする異常さをお伝えしてきましたが、そこに至る議論の行い方にも納得することができません。たとえば、民主党時代の消費税増税の議論では、初めは、ギリシャショックの時から始まって「日本も財政破綻でギリシャのようになるぞ」ということで、増税の議論が始まったのですが、「日本のような世界最大の債権国(世界で一番外国にお金を貸している国)で、しかも自国通貨立てで国債を発行して、そのほとんどの債権者が国内の投資家であるような国が、ギリシャのように破綻するわけないだろ!!」という声が上がるようになって以降は、いつの間にか議論がすり代わり、「税と社会保障の一体改革のために消費税を増税しよう」という議論になりました。しかし、もともと消費税とは社会保障を充実させるための税ではないでしょう。もし仮に、消費税が社会保障を充実させるための税であるとしたら、20年前に消費税が増税されて以降社会保障費は充実しているはずなのですが、現実には、現時点で社会保障費が全然足りていないという状況になっているという一点のみを取ってみても、「消費税増税は社会保障の充実のためだ」という議論は成り立たなくなります(まあ、増税賛成派は「社会保障費が足りないからこそ増税だ」と言うかもしれませんが)。

これらの議論の転換に関わらず、常に消費税増税という結論だけは変わらないというある意味で、非常に歪な議論のあり方を考えると、結局のところこれらの議論はどれも消費税増税という結論ありきで持ち出され、単に正当化するため、議会を通したという既成事実の為だけに拵えられたものだったのではないかと思えます。

つまり、「今の日本の現状において消費税は増税すべきか否か」という問題について真摯に考え抜くための議論ではなく、「なんとなく、税収が足りないから消費税は増税したほうが良いよね」という雰囲気から生じた結論を正当化するために適当に持ち出された議論だったのではないかということです。そんななんとなく醸しだされた空気によって日本の重要な政策が左右されるなどというのはとんでもない話ではありますが、これまでの議論をみているとそんなノリで消費税増税を決定したようにどうしても思えてしまうのです。

このような議論は、おそらくTPPに関する議論でも似たような現象が起こっているように思えます。なんとなく、「デフレだし少子高齢化だから、日本の内需は拡大しないよね。日本が経済成長するには外に打って出るしかないよね」という空気が形成され、そのような状況において「TPPっていう貿易協定があって、参加国は、どの国も関税が撤廃されて輸出しやすくなるらしいよ。外に打って出なきゃいけない日本は、この協定に入らないとまずいよね」という日本全体を覆っている雰囲気や閉塞感からTPP参加を決断したという側面があるわけです。

そのような、なんとなくの空気で結論ありきの議論となってしまっている場合の特徴として具体的な問題点の指摘に対して明確な反論がなされないままに、強制的に議論が打ち切られるという傾向があるのです。消費税の議論に関しても、TPPの議論に関してもそのような傾向が強く見られました。「消費税を増税しても逆に減収となってしまったら元も子もないのではないか?」「TPPに参加してもほとんど輸出は増えないのではないか?」といった質問に対して政府から明確な回答はついに得られませんでした。ただ、「消費税増税は先送り出来ない課題」「TPPは国家100年の計」などといったほとんど無意味で空虚なスローガンが連呼され、最終的には様々な課題を残したまま議論が打ち切られ非常に重要な決定がなされました。このようなやりとりを、議論とは到底呼べません。何となくあるイメージに対して、具体的な政策決定をしていくことは、活動的な馬鹿の姿そのものではありませんか。

消費税問題を考える上で、それが日本経済や世界経済にどのような影響を与えるのかという問題もさることながら、もう一つ重要な論点として、このような日本国内における非合理的あるいは非論理的な議論のあり様ついてもよくよく考えていく必要があるでしょう。もし、この点を踏まえずに、ただただ消費税増税の経済への影響のみの議論に終始するなら、今後も経済政策その他重要な意思決定において、皆が「何かおかしいのではないか?」と疑問を持ちながらも、結局間違った決定がなされてしまうということが繰り返されるでしょう。悲しいことですね。

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西部邁

高木克俊

高木克俊会社員

投稿者プロフィール

1987年生。神奈川県出身。家業である流通会社で会社員をしながら、ブログ「超個人的美学2~このブログは「超個人的美学と題するブログ」ではありません」を運営し、政治・経済について、積極的な発信を行っている。

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コメント

    • unk
    • 2014年 5月 31日

    消費増税のことになると『しょうがないね』とかいった声がよくきかれます。
    政府の間違った政策に対して日本国民はよく考え怒らないといけませんね。

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