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デフレ脱却は、財政を拡大すれば1年以内に脱却できる。昭和恐慌の際は年率10%を超える物価の下落を高橋大蔵大臣は財政拡大により1年でデフレの完全な脱却に成功している。デフレは税収を減らし財政を悪化させる。日本はこのデフレが約20年も続いており、この間だけで国の借金は約700兆円も増えてしまった。もし、財政を適切に拡大していたら、デフレは1年で脱却できたし、デフレ脱却後はGDP拡大のため国の債務のGDP比は、現在のようなレベルに増加することはなかった。もちろん、景気刺激のための財政拡大と言っても700兆円もの規模は必要でなく、年間10~50兆円レベルで十分で,名目GDPも増加していくので、債務のGDPは増えないし、景気がよくなれば財政は健全化していったはずだった。
残念ながら経済を理解しない「識者」達が、財政拡大を止めた。財政を拡大すれば、円も国債も暴落するという説を唱え続けてきた。それらはいずれも間違いであったことは証明されつつある。この20年間、国債は暴落どころか、一貫して値上がり(つまり金利低下)続けてきた。10年物の国債ですら金利がマイナスになるほど、国債価格は上がってしまった。日銀が国債を買えば、国債価格はいくらでも高くなるし、国債の暴落はあり得ないことの証明だ。円の暴落を我々は警戒しなければならないのだろうか。むしろ逆だろう。アベノミクスは円安・株高を誘導する政策で、それが唯一の売りだったろう。円安とは円の信認=日本政府への信認を失うことであり、それをアベノミクスの売りにするのは奇妙なことだ。
一方で、中国経済の減速など、何か世界経済の危機と言われるような大事件が起きるとマネーは安全資産と見なされている日本円へと流れ、円高に向かう。日本は対外純資産において世界一だし、政府は緊縮財政を20年間も続けているし、その意味で日本円は世界一「安全な資産」である。日本円に対する信頼が大きければ大きいほど、保有し続ける価値が増す。つまり、使わなくても保有しているだけで、価値を失わないから、流通速度が遅くなり、通貨としての機能が失われ、経済は停滞する。逆説的な表現だが、通貨への信認が大きすぎると、経済は停滞する。逆に通貨への信認が適度に失われ2~3%程度のインフレになると、保有するだけでは、確実に価値が失われるので、人々はそれを使おうとし、マネーが流れ始め、経済が活性化する。
国の借金が1000兆円を越して以来、財政を伴う景気対策は影を潜め、ひたすら消費増税へと向かってきた。デフレ脱却をしない時の、このような増税は、まるで集団自殺のようだ。しかし、やっと来年の消費増税を延期せよという声も出始めた。また政府も2016年度予算が成立した後に、財政出動で景気対策を行う議論を始めるという。このタイミングでOECDも日本は緊縮財政を続けているから成長しないと言い始めた。政府は、日本経済は拡大していると言うが、1997年には525兆円だった名目GDPは、まだ499兆円だ。拡大どころか縮小した。499兆円という数字も消費増税でゲタをはいた数字だし、それを外せば更に小さくなる。消費税のゲタは、経済拡大とは無関係だから、それを除けば、安倍内閣が始まって以来の名目成長率は年率1%程度で、先進国の中では際だって少ない。政府はOECDの見解に従って財政出動を真剣に考えるべきだ。
小野盛司
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