積極財政論の出発点 ー 失われた20年の正体(序)

積極財政論の出発点

こんにちは、島倉原です。

  • 日本経済の停滞に代表される、いわゆる「失われた20年」の根本的な原因は1990年代後半以降の「緊縮財政」(政府の支出総額を削減、または横ばいに抑える政策)である。
  • したがって、経済政策のスタンスを、政府の支出総額を毎年一定程度拡大することを前提とした「積極財政」に転換し、現状を克服すべきである。

というのが、プロフィールでも紹介されている通り、私の持論です。
もちろん、こうした見解は新聞やテレビの報道、あるいはそこに登場する経済学者、エコノミスト、評論家といった、いわゆる「専門家」が述べる見解の大半とは異なるものです。

こうした専門家の方々は、「失われた20年(あるいは日本経済の停滞)の原因は何か」という問題については異なる意見を持っていても、こと財政支出に関しては足並みを揃えて、

「公共事業などによって財政支出を増やしても、経済成長には効果が無い」
「政府の支出はできるだけ抑えて、既にGDPの2倍以上になっている政府の借金をできるだけ増やさないようにして、財政を再建しなければならない」

という見解を表明することが多いでしょう。
昨今の「アベノミクス」でも、「第2の矢=『機動的な』財政政策」とされていますが、これとて「積極財政」とは異なる代物です。

かく言う私自身も、最初から上記のように考えていた訳ではありません。
私は経済学者ではないどころか経済学部の出身でもなく、事業企画部門での仕事が長かったことや、個人的な投資活動を通じてマクロ経済に興味を持つようになり、自分なりに研究を続ける中で、徐々に確信を深めてきた次第です。

「財政政策は国民一人一人にとっても重要なテーマ」

大多数の人々にとって(私も含めてですが)、「国の財政」や「政府の支出総額」といっても、恐らく日常感覚とはかけ離れた概念でしょう。
しかし、「営利を目的としない」「通貨発行権を持つが故に家計や企業のような予算制約には直面しない」という意味で特殊なのが、「政府」という経済主体です。

その経済活動、すなわち財政政策のあり方は、地域や国全体の経済のあり方、場合によっては「経済活動」とは必ずしも認識されない分野での国家の方向性を決めてしまうほどの影響力を持つのが現実です。

それによって生じる結果や問題点の多くは、それが上述した「政府の特殊性」に由来するが故に、個人や企業レベルのミクロの、いわゆる「民間の自助努力」では解決困難なものばかりです。

他方で、議会制民主主義の下では、間接的とはいえ、財政政策の究極的な決定権を持つのは選挙権を持つ国民の投票行動です。
したがって、「財政政策がどうあるべきか」とは、本来国民一人一人が自分自身の問題として、地に足の着いた議論や判断をするべきテーマであると言えるでしょう。

この連載では、財政政策が日本経済の根本的な問題であると私が考える根拠、あるいはそこに至る経緯などを書き連ねることで、私見についてご理解いただく共に、「日本の経済や社会にとって何が必要なのか」「それをどのように実現すべきなのか」について問題提起をしたいと思っています。

今回は第1回ということで、私が持論を展開する際に最もよく使う、2つのグラフをお示ししたいと思います。

→ 次ページ:「名目政府支出伸び率が高い国ほど、名目経済成長率も高い」を読む

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西部邁

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コメント

    • 鳥見光洋
    • 2013年 11月 20日

    いつも動画等で島倉様の経済分析や提言について勉強させていただいております。そして、私自身も、日本経済の成長のためには、政府支出の継続的な拡大が必要であるとの見解に至っており、全面的に賛同です。
    しかし、一点、気になる島倉様の分析があります。この論でも提示されている経済成長率と政府支出伸び率との相関関係についてです。確かに非常に強い相関があることは明白なのですが、まず高成長率があり税収増となり、その結果政府支出が伸びているとも考えられませんか?どこの国でもそうなのですが、基本は財政均衡主義を採用しているため、税収増ならば政府支出拡大、そして成長率増加の好循環、税収減ならば政府支出縮減、そして成長率鈍化の悪循環というメカニズムになっているかと思います(本来は逆の経済政策が必要なのですが)。
    島倉様の論には全く異論はないのですが、そのような反論も可能かと思いコメント入れさせていただきました。

    • 鳥見さん

      いつもご覧になっていただき、有難うございます。
      ご指摘の反論は当然可能ですが、「政府以外の民間部門(家計および企業)の支出レベルは、金融バブルやその崩壊などの短期的な影響は受けるものの、突き詰めると所得に基づいてほぼ決定される」という、現実からも外れていない世界(主流派経済学が想定しているものではもちろんありません)を前提とすれば、「GDPの水準を決めるのは政府支出の総額である」という結論は、数学的に導き出すことができます(上記前提を「非現実的だ」と言われてしまうと、それ以上の説得は困難ですが)。
      ちなみにケインズが提唱した「乗数効果」は、上記「民間部門の支出」を「家計消費」に限定して議論を展開したもの、と捉えることができます。
      上記を前提としたマクロ経済モデル(理論)については、改めてきちんとした形でご説明したいと思っております。その際も是非ご覧いただき、コメントをいただければ幸いです。

      島倉

        • 鳥見光洋
        • 2013年 11月 21日

        島倉様

        ご丁寧な説明ありがとうございます。よく分かりました。今後ともよろしくお願いいたします。

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