『日本式正道論』第三章 仏道

「日本正道論」特集ページ

【目次】
第三章 仏道
第一節 平安仏教
第一項 天台宗の最澄
第二項 真言宗の空海
第三項 天台宗の源信
第四項 西行
第二節 鎌倉仏教・浄土系
第一項 浄土宗の法然
第二項 浄土真宗の親鸞
第三項 時宗の一遍
第三節 鎌倉仏教・禅系
第一項 臨済宗の栄西
第二項 曹洞宗の道元
『正法眼蔵』
『正法眼蔵随聞記』
第四節 鎌倉仏教・法華系
第一項 日蓮宗の日蓮
第五節 鎌倉仏教・鎌倉旧仏教
第一項 天台宗の慈円
第二項 法相宗の貞慶
第三項 華厳宗の明恵
第四項 華厳宗の証定
第五項 真言律宗の叡尊
第六項 華厳宗の凝然
第六節 中世仏教
第一項 臨済宗の夢窓疎石
第二項 臨済宗の中巌円月
第三項 臨済宗の抜隊得勝
第四項 浄土真宗の蓮如
第七節 近世仏教
第一項 日蓮宗の日奥
第二項 臨済宗の沢庵
第三項 臨済宗の盤珪永琢
第四項 浄土宗の大我
第五項 浄土真宗の仰誓
第六項 曹洞宗の良寛
第七項 浄土真宗の竜温
第八項 浄土真宗の徳竜
第八節 近代仏教
第一項 清沢満之
第二項 鈴木大拙

第三章 仏道

 仏教は、釈迦[仏陀] (前463~前383、または前565~前485)を開祖とする宗教です。仏道とも称されます。
 仏教が日本へ伝わったのは、朝鮮三国時代の百済からです。飛鳥時代には、朝鮮半島の影響を受けながら次第に国家仏教の形を整えていきました。奈良時代には、南都六宗と呼ばれる学問仏教が整備され、国分寺や東大寺大仏などに代表される国家護持の方向が明確化されました。平安時代には、最澄が天台宗を、空海が真言宗を開き、仏教の普及につとめました。鎌倉時代には、鎌倉新仏教と呼ばれる仏教運動がおこり、法然・親鸞らの浄土教、栄西・道元などの禅、日蓮の法華信仰などが宗派として定着しました。その後も日本の仏教は、独自の発展を遂げていき、現在に至るまで大きな影響を及ぼしています。
 仏教の教えは様々ですが、基本は「仏の道」です。ですから、仏教関連の書物には、仏の「道」についての伝統が展開されています。本章では、日本の仏教における仏の「道」を見ていきます。

第一節 平安仏教

 平安仏教は、平安時代に創始された仏教の宗派のことです。具体的には真言宗、天台宗の二宗を指します。その特徴の一つは山岳仏教です。奈良仏教が都市仏教であるのに対し、最澄は比叡山に延暦寺を、空海は高野山に金剛峯寺を開きました。

第一項 天台宗の最澄

 最澄(767~822)は、空海とともに平安仏教の双璧と称される、日本天台宗の開祖です。『法華経』を中心としながらも、法華円教のみならず、密教・禅・戒律・浄土の諸思想を含んだ仏教を比叡山に樹立しました。
 最澄の『山家学生式(天台法華宗年分学生式)』では、道心が語られています。〈国宝とは何者ぞ。宝とは道心なり。道心あるの人を名づけて国宝となす〉とあります。国宝とは、国家の宝として崇敬すべき人を指します。道心とは、菩提心(悟りを求めようとする心)で、真実の道を求める心です。
 道心のある人については、〈乃ち道心あるの仏子を、西には菩薩と称し、東には君子と号す〉とあり、道心のある仏弟子は、インドでは菩薩、中国では君子とされています。具体的には〈悪事を己れに向へ、好事を他に与へ、己れを忘れて他を利するは、慈悲の極みなり〉という心を持つ人です。では、日本においてどうかというと、〈釈教の中、出家に二類あり。一には小乗の類、二には大乗の類なり。道心あるの仏子、即ちこれこの類なり。今、我が東州、ただ小像のみありて、未だ大類あらず。大道未だ弘まらず、大人興り難し〉と語られています。釈迦の教えの中で出家に二種類あり、一つは小乗(上座部)で、二つ目は大乗です。道心がある人は大乗の方です。今の日本には、小乗の形だけで大乗の人が居ないと言っています。大乗の道法が未だ広まっておらず、大乗の行人が出てこないと嘆いているのです。
 『顕戒論縁起』においても、〈皆なこれ生を軽んじて道を重くし、広く自他を利する所以なり〉とあり、大乗の道が大切だと述べられています。
 また、『得業学生式(比叡山天台法華院得業学生式)』では、〈中道の心を上となす〉とあります。中道とは、両極端を離れた中正なる道です。中道は、仏教の根本的立場で仏教各宗により種々に説いていますが、天台宗では空仮中の三諦の説を立て、すべての存在は一面的に考えられる空・仮(け)をこえた絶対であり、それを中とします。またこの三は相互に別なく円融し、即空・即仮・即中としての中道であるとされています。

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西部邁

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