EATEN IN JAPANの価値
最近、Made in Japanではなく、Used in Japanが海外で大人気だそうです。例えばMade in Chinaだとしても、Used in Japanであれば、日本人が認めた品質に違いない、と考えるからです。中古車もJapan Used Carsとして、日本の厳しい基準の元使用されていた車ですから安心だと考えるようです。同じように、日本の食卓で国産のお米と同じように選ばれて食べられていることを売りにすれば、お米の味にうるさい日本人が認めたお米、として海外で人気がでるかもしれません。
近年、カリフォルニア米も以前と比べて国産米と見劣りしない味を出せるようになってきたと聞きます。冷や飯ではまだ違いがはっきりしているとききますが、炊き立てでは場合によってはカリフォルニア米のほうが美味しいと感じることもあるようです。そもそも日本人の中に、白米の味にこだわりを持たない人が増えているようにも感じます。そのような現状ではありますが、米国のコメ生産者は、Eaten in Japanつまり日本の食卓でも食べられているということをプレミアにして、海外に自分たちのお米を売り込みたいと考えているのではないかと思います。
そんなこと思いもしませんでした、と言われたら、得々とEaten in Japanの価値を説明してあげなければなりません。万が一米国が言うところの意味のある市場アクセス=日本の家庭の食卓に上る米国産米の流通を確保するという要求を呑まされることになるとしたら、日本の交渉官には「食べてやるんだ、ありがたく思え。その代り何かよこせ」と言ってもらわなければなりません。傲慢な物言いと思われるかもしれませんが、もともと「自国のルールは変えません、こちらが譲歩するのは要求を少し緩めてあげるだけですよ」という姿勢で向かってくる米国を相手にするのですから、それぐらいは言わなければならないでしょう。Eaten in Japanの価値を安売りしてはいけません。
日本の農業を守る革新的な方法はあるのか
昨年8月にブルネイラウンドのイベントとして行われた首席交渉官とのフリーダイアローグ(自由会話)で、農水委員会の国会決議や自民党の決議について伝えるとともに、重要品目への関税撤廃は難しいと考えていると伝えると、NZの首席交渉官は関税以外の新しい方法を編み出してくれ、とにこやかに答えてくれました。
今回、関税を維持しながら一方で低関税枠や無税の枠を米国産米用に増やしてあげれば満足するのでは、という意見も聞こえますが、米国の要求はそんな生ぬるいものではないはずです。これまで日本が守ってきた流通制度を変えることは、一体どのような意味を持ち、日本の農業にどのような影響を与えるのでしょうか。
加えて、日本のコメ市場を狙っているのは米国だけではありません。ベトナムも首席交渉官会合と並行して行われた市場アクセス交渉では日本へのコメの輸出拡大につながる措置を強く求めてきたと言います。 [※注11]
TPP交渉官の皆さまには、他の参加国の交渉官を出しぬき、日本の農業を守るための革新的な裏技を編み出して、なんとか日本のコメを守ってもらいたいと思います。そしてどうしても上手くいかないとなった時には、どうぞ思い切って交渉から抜けるという選択肢を選んでいただきたいものです。そのとき、国民はあなた方を非難することはなく、英断に対する称賛の拍手を送ることでしょう。
注1:Cutler Says TPP Talks Intensifying, But Downplays Singapore Meeting As ‘Check-In’(IUST)2014年5月7日
注2:2014年5月20日 シンガポール閣僚会合後の共同プレス声明
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2014/05/140520_tpp_Singapore-statement.pdf
注3:Japan Engages In More Market Access Talks, But Substantive Work Lags(IUST)2014年5月15日
注4:Obama-Abe Breakthrough Consisted Of U.S. Dropping Tariff Elimination
Demand: Sources(IUST)2014年5月21日
注5:TPP交渉 日本、99年後の全品目関税撤廃案を米に打診(日経新聞)2014年1月5日
https://id.nikkei.com/lounge/auth/password/proxy/post_response.seam?cid=2586393
注6:USA Rice Briefs Senate Staff on Trans Pacific Partnership egotiations (USA Rice Federation) 2014年4月28日
http://archive.constantcontact.com/fs138/1102736301303/archive/1117208722952.html
注7:米国通商代表部(USTR)外国貿易障壁報告〔日本に関する部分〕(米国大使館)2002年4月2日
http://japan2.usembassy.gov/j/p/tpj-jp0082.html#コメ輸入制度
注8:2014 National Trade Estimate Report on Foreign Trade Barriers:Japan(USTR)2014年3月31日
http://www.ustr.gov/sites/default/files/2014%20NTE%20Report%20on%20FTB%20Japan.pdf
注9:JAグループ訪米団・成果と課題 中 脅威 米輸出拡大に的 強気の姿勢警戒(日本農業新聞)2013年6月21日
http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=21773
注10:2014年米国通商代表(USTR)外国貿易障壁報告書(日本の貿易障壁言及部分:外務省
作成仮要約)2014年4月22日
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000036362.pdf
注11:ベトナム 米輸入拡大を要求 対米姿勢で足元見られる? 日本は強く拒否(日本農業新聞)2014年5月20日
http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27804
≪参考文献≫
・米豚肉業界、日米TPP合意阻んだ壁 (真相深層)(日経新聞)22014年5月8日
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO70850810Y4A500C1SHA000/
・USAライス連合会(日本語サイト)
http://www.usarice-jp.com/
・ミニマム・アクセス米に関する報告書(農林水産省)1999年3月31日
http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/0903/pdf/ref_data2.pdf
・我が国の農林水産物の関税制度について(農林水産省大臣官房国際部貿易関税等チーム)2013年6月
http://www.maff.go.jp/j/kokusai/boueki/triff/pdf/kanzeiseido.pdf
コメント
-
2014年 5月 28日トラックバック:【東田剛】革命政権 | 三橋貴明の「新」日本経済新聞
この記事へのコメントはありません。