安倍首相の靖国参拝に反対する理由
- 2014/1/2
- 政治
- 安倍晋三, 靖国神社
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支持率向上等が靖国参拝の上位目標であってはならない
フリージャーナリストの谷田川惣さんは、今回の靖国参拝について、ツイッターで次のような意見を述べております。
安倍総理の靖國神社参拝について、外交的に失敗だったという見解もあるが、安倍政権にとって何が成功かということは総理が任期を終えたときにはっきりするだろう。黙ってみておけと言っておく。
— 谷田川惣 (@yatagawaosamu) 2013, 12月 27
しかし、私は二つの理由からこの意見自体に反対します。もちろん、先に確認したように、今回の靖国参拝は外交的な判断として正解であったか否かについては、容易に結論を出すことはできません。よって、「何が成功かということは総理が任期を終えたときにはっきりするだろう」という意見には全く同意します。だからといって、黙ってみておかなければならない理由にはならないでしょう。
厳密な意味においては、あらゆる政治判断の是非は後世の人々が判断するほかありません。一般には、大恐慌脱却の切り札となったといわれるルーズベルトのニューディール政策のようなものであっても、未だその是非が経済学者の間で問われていますし、日本の近代化の最も重要な転換点であるとほとんど人々が疑い無く信じている明治維新にしても、歴史家の中では、果たして本当にあれが唯一無二の正解であったのかと疑問を投げかける人もいます。つまり、どのような政治的判断もそれが是か非かという問題は究極的な正解は導き出せないものばかりであって、もし仮に、是か非かわからない問題には、口を出さずに黙って見ていなくてはならないとするなら、TPPだろうが、消費税だろうが、特定秘密保護法だろうが、原発問題だろうが、あらゆる問題に対して、「それが究極的に是か非かの判断などつかないであろう」という理由で一切の意見表明を禁じられることとなり、ただひたすら政府の決定に全ての人々が唯々諾々と従わなくてはならないことになるでしょう。
それから、もう一つ、こちらがより決定的な理由なのですが、今回の安倍首相の参拝に限らず、靖国参拝の問題は外交や内政における政治的判断の問題だけで、その是非が問われるべきではないという点です。
仮に、保守の側から、「今回の安倍首相の靖国参拝は外交的に失敗であった、ゆえに安倍首相の靖国参拝は行うべきではなかった」という意見があったとするならそれは少々的の外れた意見であって、むしろ、真に批難すべき理由は、安倍首相が靖国参拝を自分たちの内閣の支持率を上昇させる政治的手段とした用いた事それ自体ではないでしょうか?
藤井聡さんは、『プラグマティズムの作法 閉塞感を打ち破る思考の習慣』の中で、あらゆる目標には上位目標が存在すると述べています。例えば「治安の維持」という一つの目標の上には、「全ての国民にとって安心できる生活基盤」や「社会の安定性」等の目標を設定できるでしょう。さらに、これらの目標の上位目標には「国家の存続」や「国体の護持」といった目標が設定できるかもしれません。そして、これらの上位目標の下位に位置する下位目標は上位目標を達成するための手段であると言えるでしょう。もちろん、これらの上位目標と下位目標は常に固定的ではなく、考え方よっては国家の存続が全ての国民にとって安心できる生活基盤を維持するための手段であるとも考えられます。
このように考えた時、一つ重要な問題として浮かび上がってくるのが、上位目標、下位目標が何か、という問題です。まず、靖国神社に参拝する目的を根本から考えたとき、当然その目的は戦死者の慰霊・顕彰でありますので、政治の問題とはひとまず切り離されてしかるべきです。戦死者の慰霊・顕彰という目標はそれ自体がかなり上位の目標として設定されるべきで、かりにこの戦死者の慰霊・顕彰にさらに上位目標とするなら、過去から未来にわたる国民の精神性の向上及び保持等であり、少なくとも内閣支持率を向上させるためや、国内外に強いリーダーシップをアピールするためといった政治的目的はこの靖国参拝に対する上位目標としてはふさわしくないということが容易に理解できるでしょう。
しかし、安倍首相はこの本来政治的手段にすべきでない靖国参拝を、内閣支持率が50%を切ったタイミングで支持率上昇のための手段として行ったように少なくとも私には思えたので、私は安倍首相の靖国参拝を批判しているワケです。もちろん、私だけがこのような見方をしているわけではありません
アジアの諸隣国との関係と右翼からの支持との二者択一で安倍氏は後者を取った形だ。
出典:靖国参拝:中韓のパートナーより右翼を取る安倍首相: The Voice of Russia
政治の問題は、非常に多義にわたり、ありとあらゆる問題を完璧にこなすことなど到底不可能です。しかし、そのような複雑な問題を処理する上では、一体何か重要であり、逆に何が相対的に重要でないかを判断する能力は決定的に重要な一要素であると思います。そのようなことを念頭においた上で、仮に安倍首相が内閣の支持率上昇という極めて内向きな政治的目的のための手段として靖国参拝を行ったとするなら、それは十分に批難されてしかるべき行為なのではないか?私にはそのように思えるのです。
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コメント
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いつも拝見しております。
私は、結果的に保守層の支持率がアップしたことは、(いい意味で)したたかな総理だと感じましたが、それはあくまで総理がご自身の「心」に従って行動した結果の副産物であり、それが狙いだとするのはいささか言い過ぎかと。(選挙もしばらく無いですし、もしそうであるなら過去に参拝をしなかった総理大臣は何故参拝しなかったのでしょうか?)
私は、靖国参拝するな(中韓北朝鮮を刺激するな)というメッセージを米国から受け取っていたにも関わらず、米国の言いなりにならずに、堂々とご参拝されたことを頼もしく思います。
米国としても、日本が「世界の安定の為に協力は惜しまないが、国益に反する事や、心の問題については言いなりになりません」という姿勢をより鮮明にした(主権国家としてはあったりまえですが)事で、これまでと付き合い方が変わってくるのでは?
そうですね、これは後から入った情報なのですが、
安倍首相は25日の会見で、仲井真弘多沖縄県知事と辺野古地区への移設で合意したと会見で述べた。
http://news.livedoor.com/article/detail/8397524/
ということもあり、こちらの問題でアメリカとの調整がひと段落ついた段階で頃合をみて参拝したという見方もありますので、必ずしも、自身の支持率低下に焦りを感じて参拝しだだけとは言えないかとは思います。実際、安倍首相ご自身にとっても、不参拝によって、保守層の支持者を失望させたという自覚はあったと思いますので、そういうった保守層の期待になんとか応えたいという思いで参拝したのであれば、必ずしも利己的な動機と判断することは出来ません。
この問題に関しては、本当に一言で「こうだ!!」とカタをつけられるような問題ではありませんので、私の意見もあくまで一つの意見として参考にしていただければと思います。
先程の私の意見は言葉足らずでしたので、再度、ここで述べます。
川端祐一郎氏は安倍総理がご自分の支持率を高めるために靖国神社を利用したというようなことを述べておられるようですが、果たしてそうでしょうか。勿論、保守派や右翼の人々の支持率は上がるでしょうが、その他の一般の人々、産経・読売を除くNHK・朝日新聞社に代表される左派系マスコミは徹底的に安倍政権壊滅に動くことは当然安倍総理にはわかることで、結局、今回の安倍総理の靖国参拝は安倍総理の全く個人的な思いによるものと判断されます。
ですから、政治問題化しているのは結局は、反日日本人と言われている日本人達にしか過ぎないのではないでしょうか。
この私の意見は安倍総理の靖国参拝の報道を冷静に見ての意見だと思いますが、川端祐一郎氏は私の意見をどう思われますでしょうか。できましたら、先程述べましたように、私のメールアドレスまでご反論戴けますよう、宜しくお願い申し上げます。