何故、保守派の言論人たちは安倍批判を出来ないのか?

901

 4月10日の文芸春秋の記事に、現在の安倍政権に関する面白い分析が書かれていました。

「株価依存内閣」の危うい舵取り

アベノミクスのバロメーターは、なにより株価だ」3月11日、首相官邸。安倍は居並ぶ経済関係閣僚を前に漏らした...

危機感を強めるのは官房長官の菅だ。菅は安倍に「とにかく経済優先で」と説き、靖国参拝にも最後まで反対の立場をとった。それだけに、株価の下落傾向が定着してしまえば自らの立場は揺らぎ、政権の勢いも失われる...

法人減税以外に、アベノミクス効果を維持する手段はみあたらないというのが「経済優先」を唱える菅、そして経産省出身の首相政務秘書官・今井尚哉の共通認識...

安倍内閣に期待を寄せさせた“自称”保守言論人の罪

 震災復興、長期に渡るデフレ不況、複雑な国際情勢、来るべき大震災への対応と、様々な危機に対応するため「危機突破内閣」と銘打たれて誕生した安倍政権ですが、現在では支持率維持のために株価上昇を狙って汲々としているというのが、現状であるようです。まさに、「すべては株価のために、株価は支持率のために」といったところでしょう。もちろん、安倍政権発足当初の期待が大きすぎたということは事実でしょうが、あまりの期待と現実とのギャップに戸惑う方も多いのではないでしょうか?「まさか、こんな体たらくになってしまうとは・・・」と。

 一方で、安倍首相を擁護したり、アベノミクスの成果を強調する論客の中には、「株価を上げるのは良い事だ!!」とか、「民主党政権の時より、これだけ株価が上がったじゃないか!!」と説明する人も多いのですが、「昨年末に1万6000円台をつけて以降はずっと伸び悩んでるじゃん」というツッコミはさておいても、少なくとも、現在のように、外資を呼び込むために、残業代ゼロ制度を導入したり、GPIF(年金積立金管理運用法人)の運用で、株式投資の比重を上げさせたりするような国内の労働者や国民生活を苦しくさせるような制度変更を行ってでも株価を引き上げさせようとするのはおかしいのではないでしょうか。本来、経済や国民生活を良くさせるための一つの手段としての株価の上昇であったハズなのに、国民生活を犠牲にしてまで、株価を引き上げようとするのは全く本末転倒でしょう。おまけに、それを政権の支持率を維持する目的で行うなどというのは言語道断であります。

 そこで、安倍政権のやっていることはオカシイ!!と批判すると必ず出てくる意見は、「安倍しかいない!!」とか「じゃあ、安倍以外に誰がいるんだ!!」といった意見です。しかし、私は、この意見はずっとおかしいと感じていました。別に、安倍さん以外なら麻生さんや谷垣さんに戻したっていいし、自民党の中に、安倍首相より良い人材が一人もいないってことはさすがにないだろうと。確かにあらゆる分野において、ただただ全くの無能ぶりを晒すのみであった民主党政権から見事政権を奪還した首相に対して過度な期待を抱いてしまう心情はわからなくはないですが、あまりにも彼らはムキになって安倍擁護をしすぎなのではないか?とそんなことを思っていた時に、たまたま西尾幹二さんが第一次安倍政権時に書いていた次のような文章を発見して、思わず「なるほど」と納得してしまいました。

 首相になる前の靖国4月参拝も、なってからの河野談話の踏襲も、米中両国の顔色を見た計画的行動で、うかつでも失言でもない。しかるに保守言論界から明確な批判の声は上がらなかった。「保守の星」安倍氏であるがゆえに、期待が裏切られても「7月参院選が過ぎれば本格政権になる」「今は臥薪嘗胆(がしんしょうたん)だ」といい、米議会でのホンダ議員による慰安婦謝罪決議案が出て、安倍氏が迷走し、取り返しのつかない失態を演じているのに「次の人がいない」「官邸のスタッフが無能なせいだ」とかわいい坊やを守るようにひたすら庇(かば)うのも、ブレーンと称する保守言論界が政権べったりで、言論人として精神が独立していないからである。
(http://homepage3.nifty.com/ronten/nishio.htm)

 つまり、「保守言論界が政権べったりで、言論人として精神が独立していない」ことこそが、問題の本質なのであって、彼らは、「私たちが応援して安倍政権が誕生した!!」と思っているかもしれないですが、実態は全く真逆で、彼らこそが安倍政権に依存していたということです。だからこそ、少しでも安倍を批判したり、安倍は首相を辞めるべきだという議論になると、ヒステリックに反応して否定しだすということなのでしょう。

選択肢は誰から与えられているのか、それを制限するものは誰か考えよう

 しかるに、現在の状況を考慮した上で、この批判を見るなら、「この7年間日本の保守論壇は1ミリたりとも前進することがなかった」と断言してよいのではないでないかと思います。民主党は売国だとか、マスゴミはけしからんとか、左翼はアホだとかお花畑だとか、そんな分かりきったことを繰り返す前に、少しでもこの保守論壇の惨状を見つめてみたらどうですか?と思います。もう、「民主よりはマシ」とか「安倍ちゃん以外に誰がいるんだ」とか「竹中さんも頑張ってるんじゃないですか?」とかそんなこと言っている場合ではないでしょう。そんなものは、「日本を中国に売り渡すのと、アメリカと財界に売り渡すのとどっちが良いか」という話と同じくらい下らない。どう考えても、「どっちもダメだ!!」以外に答えはないでしょう?

 いや、しかし、現在の状況というのは実に戦後日本的な末路だと思います。戦後の日本は吉田茂内閣以降、軽武装で、経済重視の路線でひたすら突き進んできました。どこまでいってもその路線を見直すこともなく安全保障を軽視し続けて、そして平成になって財界とアメリカの要求に応えて、ビジネス重視の構造改革と効率性追求を続けていって、挙句の果てに現在では財界の要請を受けて移民の大量受け入れを検討しています。三島由紀夫は自民党を偽善と欺瞞の象徴と述べましたが、ついに、「これは移民推進ではない!!移民管理のための法律なのだ!!」などという子供にすら通用しなさそうな嘘を述べて、そんな下らない嘘に騙され(あるいは騙されたフリをして?)「安倍ちゃんが移民推進なんてデマを流すな!!」などと言い出す言論人も出る始末です。しかも、こともあろうにそういう連中が保守を自称しているのですから手に負えません。

 はっきり言ってしまえば、産業競争力会議などというものを作って、そこに入れた財界のメンバーを民間議員などと称している時点で、もうすでに日本の政治は財界に乗っ取られたも同然なんですね。それから、TPPに関しては小泉政権時の年次改革要望書と違って正式な国際条約ですので法的拘束力を持つ上に、多国籍間の条約なので脱退もほとんど不可能です。まあ、せっかく鳩山政権で破棄した年次改革要望書も安倍政権で復活させてしまったワケですが。さすがはアベドリルです。如何なる既得権も無傷ではいられないドリルのパワーで正社員の既得権に穴を開けて全ての従業員を非正規労働者にして、ついでに国境と国籍の壁もぶち壊して安い賃金でこき使える移民労働者を大量に受け入れることで、日本を一億総下流社会という世界で一番ビジネスのしやすい国、投資家と経営者の理想郷を実現しようということでしょう。ビバ移民党!!あ、いや、愚民党だったっけな?

 そんなラディカルな日本解体政策を実行できるのはまさに「安倍しかいない!!」うん、そこには私も同意します。

西部邁

高木克俊

高木克俊会社員

投稿者プロフィール

1987年生。神奈川県出身。家業である流通会社で会社員をしながら、ブログ「超個人的美学2~このブログは「超個人的美学と題するブログ」ではありません」を運営し、政治・経済について、積極的な発信を行っている。

この著者の最新の記事

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. 2015年 1月 31日

  1. 1050

    2014-8-6

    経済社会学のすゝめ

     はじめまして。今回から寄稿させていただくことになりました青木泰樹です。宜しくお願い致します。  …

おすすめ記事

  1. 2918
    多様性(ダイバーシティ)というのが、大学教育を語る上で重要なキーワードになりつつあります。 「…
  2. 1559
    SPECIAL TRAILERS 佐藤健志氏の新刊『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は…
  3. 1101
     経済政策を理解するためには、その土台である経済理論を知る必要があります。需要重視の経済学であるケイ…
  4. 1162
     現実にあるものを無いと言ったり、黒を白と言い張る人は世間から疎まれる存在です。しかし、その人に権力…
  5. 1902
    ※この記事は月刊WiLL 2015年6月号に掲載されています。他の記事も読むにはコチラ 女性が…
WordPressテーマ「AMORE (tcd028)」

WordPressテーマ「INNOVATE HACK (tcd025)」

LogoMarche

ButtonMarche

TCDテーマ一覧

イケてるシゴト!?

話題をチェック!

  1. 3152
    「日本死ね」騒動に対して、言いたいことは色々あるのですが、まぁこれだけは言わなきゃならないだろうとい…
  2. 2918
    多様性(ダイバーシティ)というのが、大学教育を語る上で重要なキーワードになりつつあります。 「…
  3. 2691
     11月13日に起きたパリ同時多発テロに関するマスコミの論調は、どれも痒い所に手が届かない印象があり…

ページ上部へ戻る