サブカルがまたオタクを攻撃してきた件 ——その1 トランプを支持するオルタナ右翼とは?
- 2016/10/14
- 政治, 社会
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せや、フェミを棍棒にしてネトウヨ殴ったろ!
「オルタナ右翼」という言葉をご存知でしょうか。
映画評論家の町山智浩さんがラジオ番組「たまむすび」で紹介し、話題になった言葉で*1、近年アメリカで台頭してきた新勢力とのこと。トランプ支持、「差別を肯定し、民主主義と平等を否定する」と主張している、のだそうです。
——はい、これでもう、皆さんおわかりかと思います。
要するにこの言葉、「ネトウヨ」のアメリカ版ですよね。事実、町山さんの口からも「ネトウヨみたい」といった発言が聞かれました。
しかしこの概要自体は町山さんの口を通して語られたことであり、本当に、彼らの生の発言を忠実に拾い上げたものかどうか、疑問です。いえ、仮に事実を忠実に伝えているとしても、「世間で言われる差別や民主主義はキレイゴトであり、我々はその欺瞞を認めない」との持論を、彼ら自身が露悪的に表現しているのではないかという気が、ぼくにはします。
これはむろん、類推に過ぎません(し、仮に町山さんが事実を忠実に伝えていたのだとしたら、ゲスの勘繰りを詫びねばなりませんが)。しかし日本で「ネトウヨ」であるとされる人々の言動を鑑みると、そう思われるのです。彼らは「予め悪者扱いをされている」がため、不必要に偽悪的になる傾向があるように思えますし、これはまた、トランプの主張が「暴言」の形を取ってしまいがちな状況とも、パラレルでしょう。
ラジオを聴いていくと、町山さんは
(トランプの演説で一番印象的だったのは)「今はもう、政治的な正しさなんかは構っている暇はない!」っていう言葉なんですよ。
(中略)
そこが熱狂させてるんですよ、オルタナ右翼の人たちに。
と嘆いていますが、ここが象徴的で、今時「ポリティカルコレクト」なんて「偽善」の別名であるとしか思われておらず、しかし町山さんだけがその現実に気づいていない、というのが実情ではないでしょうか。
もう一つのポイントは、町山さんが彼らの実力行使ぶりをまず、非難している点です。オルタナ右翼が『ゴーストバスターズ』に主演した黒人女優のツイッターに差別的なツイートを繰り返し、首謀者がツイッターを永久除名される、といった事件も起きたそうです。
町山さん自身、「言論は自由だが、このような手段は認められない(大意)」とおっしゃっており、それは確かにもっともな主張です。ここまでであれば彼の考えは100%の正論でしょう。しかし残念なことに、ラジオを聴くにつれ彼の秘めた本音が露わになって行くのです。
この『ゴーストバスターズ』、第一作目は1984年に公開されたSFコメディ映画です。本来は四人の男性キャラクターがメインだったものが本年、それを全員女性に入れ替えたリメイク作品が作られ、一部でブーイングが巻き起こったそうです。You Tubeにアップされた予告編は大変悪評で、そこについたコメントに対しても、町山さんは嘆いてみせます。
で、コメントを見ると、その時についていたコメントは「何でこんな女にやらせるんだ?」とか、後、「一人も可愛子ちゃんが出ていないじゃないか」とかね。
(中略)
後はその黒人のレスリー・ジョーンズさんという、身体のでっかい人なんですよ。もう男よりもでっかい人。で、要するに「一人も美人がいないじゃないか」とかね。「おばちゃんじゃないか」とか、そういう非常に差別的なことがバババババッて上がっていったんで、ソニーが慌ててそれをYou Tubeに頼んで消してもらったりね、その、差別的な嫌がらせみたいなものを。
あのー、申し訳ないですが、それは差別とかとは違うんじゃないでしょうか?
ぼくは『ゴーストバスターズ』について多くを知らないのですが(旧作を見たことがあるくらいです)、例えば『巨人の星』がキャラクターを女性にしてリメイクされたらどうでしょう。男性が自らのジェンダーの指針にしているような作品のキャラクターの性別を入れ替えられたら、(うまくすればギャグとして評価されるでしょうが、下手をすれば)バッシングを受けることは、大いに想像できる話です。
また、「おばちゃん」「可愛子ちゃんがいない」とあるように、出てくる女性キャラクターが全員不美人というのでは、確かに男性が見るには厳しい、というのは充分に理解のできる話ではないでしょうか*2。
これは男女を入れ替えても同様で、仮にですが来年の戦隊シリーズ*3で、変身前の役者さんがデブでハゲでブサメンのオヤジばっかりだったら、当然、女性によるそうしたコメントで溢れるはずです。
もちろん、近年のネットにおける、殊に映画や漫画などのファンの作品に対する罵詈雑言は酸鼻を極めるものであり、それが望ましいものだとは全く思いません(ぼくも普段はアダルトゲームのシナリオを書いており、された経験があります)。が、単なる悪質なファンのブーイングを「差別的言動」といっしょにしてしまってはもう、それは「表現の自由など認めないぞ」と宣言しているのも同然です。
近年フェミニストは、「ミソジニー(女性嫌悪)」という言葉をワイルドカードとして濫用する傾向にあります。上野千鶴子キョージュの『女ぎらい』を読むと「ミソジニーとは女性蔑視である」と安易に断じており、その身勝手さには頭がクラクラします。「嫌悪」という「感情」そのものを絶対に許されない悪として断罪せよとするのは「ヘイト」という言葉も同じですが、いずれにせよ受け容れられる発想ではありません。
町山さんの主張はこうしたフェミニストの偏狭な正義を援用したものと言えます。いえ、後に述べる通り、彼は反フェミニストを悪だと決めつけている人なのだから、当たり前のことなのですが。
また、こうした流れを見ていくと、町山さんの論自体に「極端な一部の人間を持って来て全体を悪しきものとミスリードさせようとしているものなのではないか」との疑念を、抱かざるを得ません。
確かにツイッターによる個人攻撃は、褒められたことではないでしょう。
しかし、それはフェミニスト側も同じです。日本では最近も、フェミニストがツイッター上で男性を「オスジャップ」などと罵倒すると共に、萌え絵をアップしているオタクを「児童ポルノをアップしているのだ」と称してツイッター運営に通報するという事件が起きました*4。それでアカウントを凍結されてしまった人も出たようです。
いえ、これに限らずフェミニストたちが萌え絵をバッシングし、取り下げさせようと運動を続けて来たことは、今までも繰り返しお伝えした通りです*5。
そしてまた、フェミニストが男性に対して聞くに堪えない「ヘイトスピーチ」を繰り返すのは、商業出版物にあっても変わりません。彼女らは今まで「粗大ゴミ」「濡れ落ち穂」「産業廃棄物」と酸鼻を極める表現で男性たちを罵倒してきました。
が、町山さんはそれを問題としている様子はない。
大変に、不思議ですね。
*1「町山智浩 共和党大会とオルタナ右翼とゴーストバスターズ出演者ヘイトを語る( http://miyearnzzlabo.com/archives/38826)」。どうも個人のブログのようなのですが、会話が採録されています。
*2 『ゴーストバスターズ』第一作目はどちらかと言えば男性向けに思え(こういうことを言っただけで「決めつけは許せぬ」と集団で襲いかかってくるのがフェミニストなのですが)、その意味でリメイク版は女性向けの「男性に媚びない格好のいい女の活躍する話」として見れば、その意図は理解できます。これはぼくが以前の記事(http://asread.info/archives/3536)で『シン・ゴジラ』の女性キャラがいささか不美人であったことに疑問を呈したことと、それとは裏腹にその女性キャラを支持した女性ファンが一定層いたことの対比と、全く同じ構造を持っています。
*3 戦隊シリーズは男の子向けの集団変身ヒーローシリーズですが、近年では変身前のイケメン目当てのお母さんを大変に意識した作りになっています。
*4 「ツイッターの凍結システムを悪用し、成人向けの絵描きアカウントを凍結させている集団がいる模様。(http://togetter.com/li/1030484)」
*5 「海女ちゃんが「女性差別」と騒がれている件(http://asread.info/archives/2189)」など。
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