すべての女性がぼやく政策パッケージ――女性政策の欺瞞を暴く

【第190回国会(常会)予算委員会議事録(一部)】

小島(こじま)委員長: それでは次に、国吉瑞穂(くによし・みずほ)委員の質問に移ります。本日最後の質疑です。

国吉委員: 日本国民党の国吉です。よろしくお願いいたします。早速ですが、政府は2014年10月に「すべての女性が輝く政策パッケージ」をまとめました。この政策は岸部内閣の最重要政策であると位置づけられており、「様々な状況におかれた女性が、自らの希望を実現して輝くことにより、我が国最大の潜在力である『女性の力』を最大限発揮できる活力ある社会、男性も女性もすべての人にとって暮らしやすい社会をつくることを目的に、必要な法的措置を含めて速やかに進めていく」とあって、以下の6つの課題に対する施策を示しています。

女性の視点から見た課題
1.安心して妊娠・出産・子育て・介護をしたい
2.職場で活躍したい
3.地域で活躍したい、起業したい
4.健康で安定した生活をしたい
5.安全・安心な暮らしをしたい
6.人や情報とつながりたい

http://www.kantei.go.jp/jp/headline/brilliant_women/pdf/20141010package.pdf

 謳い文句だけ見ますと、たいへん素晴らしい試みで、こんな玉虫色の政策がほんとに実現されるなら、わが党としても反対を唱える理由はありません。しかし、その内容についてはいくつもの疑問が湧いてきます。それについて質問させていただきます。
 一点目。この中には38項目にもわたる具体的な施策が述べられていますが、そのどれを見ても、男女の賃金格差についての言及がありません。もし本当に働く女性を輝かせたいのなら、まずこの問題をどうするのか。わが国の男女賃金格差は先進国中、韓国に次いでワースト2で、女性賃金の男性賃金に対する割合は7割弱です。
http://president.jp/articles/-/13740
 この点について総理の認識と見解をお伺いしたい。

岸部内閣総理大臣: おっしゃる通り、わが国の男女賃金格差は相当な開きがあります。しかしこの開きは近年縮小傾向にありますし、まさにこの政策パッケージを推進する過程において、職場で活躍する有能な女性には、それに見合った報酬を男性と同等に供与できるような体制づくりを目指すことで、この格差を解消の方向に進めていきたいと考えております。

国吉委員: 果たしてそういう結果になるか、はなはだ疑わしいですね。もっとも私自身は別に平等主義者ではないので、この格差そのものをぜひともゼロにせよと主張しているわけではありません。安い給料のパート仕事などのほうが楽で責任も軽いので、家庭を抱えた女性自らがそれを選んでいるといった面も多分にあると思います。この問題をまず取り上げた理由は他にあるのですが、後ほど述べます。とはいえ、この憲法違反とも言える格差はなぜなくならないのか、厚生労働大臣、お考えをお聞かせください。

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西部邁

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コメント

    • W.H.
    • 2015年 5月 05日

     関心を抱いていた女性政策の欺瞞について学ぶことができ、感謝をもって読みました。政府の現今の女性政策は、アメリカ流の構造改革路線がその下敷にあり、さらに硬直したフェミニズム・イデオロギーに蔽われたものであるということを理解しました。大きく括れば、前者は自由、後者は平等の問題であるでしょうか。私は、そのうち、とくに後者に関心を抱くものです。ネット、テレビなどから伝わってくる情報をもとに、ぼんやりとした危惧を覚えるといった程度ですが、何か言わずにはおれないという気持ちを抱かせられます。現在、クオータ(割り当て)を中心とする施策が進められているようですが、それはずいぶん昔、遠い異国のものと思われていた方策です。もし、こうしたアメリカ流の政策推進が、民主党なり共産党なりによってなされるものでしたら、危惧もそれほどのものではなかったでしょう。保守の本命と目される安倍内閣の行うものであることに虞れを抱くものです。なぜかといえば、こうした問題は保守陣営が番人であり、もうそれ以上に対抗する勢力が存在しないからです。私は、靖国問題において既視感のようなものを持ちます。日本の守るべき大切な外堀の一角を中曽根内閣が埋めてしまったことは、どうも間違いがないようです。もちろん政治は妥協ですから、いろいろな駆け引きが行われることは分かります。しかし、保守政党がひとつ取引を間違えた場合、他党の場合に較べてダメージが大きなものになることは否めないことです。今回、小浜さんの文章を読んで、安倍政権を保守というよりは、アメリカのリベラルに近い性格をもったものと感ずるようになりました。
     さて、男女関係の問題は、何か正解があるようなものではなく、また時代の流れに逆らえるようなものでもないと思います。しかし長い時間を経て形成されてきた習俗・文化であり、美意識の根幹をなすものです。一時的な経済政策の下におかれるべきものとは思われません。いわば「文化の革命」に通ずる問題を、安易に唱導する安倍内閣に何か軽いものが感じられてなりません。国吉議員の批判に一票を投ずるものです。

  1. W.Hさんへ

    コメント、そして国吉議員へのご一票、ありがとうございます。

    おっしゃり通り、安倍政権の女性政策なるものは、アメリカ渡来の構造改革路線(経団連、竹中一派などが後押ししています)と硬直したフェミニズム・イデオロギーの結託の下に出てきたものですね。この面での安倍政権の性格が、アメリカのリベラルに近いものだというご判断にも賛同します。これでは、「戦後レジームからの脱却」はとても果たせないでしょう。問題は、日本の保守派がそのことに気づいていない点ですね。いつのころからか、女性、女性ともてはやせばだれも文句が言えないという風潮が、一種のタブーのように全世界的に出来上がってしまいました。

    W.Hさんは、この困った流れのうち、フェミニズムの文化破壊、伝統破壊的な動きへの危惧を一番重要視されているようです。もちろん私もその危惧を共有しますが、それに加えて、女性を抽象的なかたちでおだてることで低賃金の女性をそのまま労働市場に駆り出し、社会格差をいっそう助長しつつ、結局は不況からの脱出をさらに困難にしてしまうという問題も大いに気になるところです。これはまさに安倍政権の公約違反であり、「すべての女性が輝く政策」なるものは、その公約違反から国民の目をそらさせる政策に他ならないのですから。

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