経済政策、その間違いの歴史~何故、日本と世界は道を誤ったのか?~

冷戦後、世界は迷走している

しかし、多くの論者が、このような資本主義の持つ社会主義的特性の強みを明らかに過小評価しました。結果として、表面的な「資本主義VS社会主義」という対立構造における資本主義の勝利を強調し、資本主義こそが勝利を勝ち取り、そして、その核となる要素は国家や政府の不介入と市場原理の調整能力にあるという確信を抱きました。そのような理念のもとに構築された経済体制がリーマンショックという大破綻により大いなる挫折を経験したことは誰しもが知るところであります。

リーマンショック後の奇妙なねじれ現象

リーマンショック後の各国の対応は様々です。中国は、中央当局による為替介入や、大幅な公共事業の拡大により危機を乗り越えました。そして、アメリカはオバマによる公共事業や減税を中心とした大型の経済対策により現在回復へと向かっています。一方、ヨーロッパは、共通通貨ユーロにより縛りもあり、緊縮財政へと突き進んだ結果非常に危機的な状況に陥りましたし、現在最悪の状況は乗り越えたものの未だ危機がマグマのように潜在しています。

そして、我が国日本はというと、緊縮財政や各種の改革路線と、財政拡張や規制再整備の間で揺れ動いている状況でしょう。ただし、そのような均衡状況も、今回の衆院選の自民党対象により崩れるのではないかと思います。安倍首相は、今回の参院選の前後で、選挙に勝って規制緩和や構造改革を中心とした成長戦略を積極的に推し進めると宣言していましたので、これからは、予告通り自民大勝という世論の声を背景に、さらなる改革を推し進めていくことになるでしょう。TPPや労働規制改革やGPIF改革はその先鞭であると考えるべきです。

自滅への道を突き進む日本

残念ながら、現在の状況から軌道修正することは困難であると言わざるを得ません。現状で、二〇一四年度の経済成長はマイナス0.5%と世界で最低クラスのパフォーマンスを記録しながら、多くの評論家が「アベノミクスは上手くいっている」「アベノミクスで来年以降はもっと良くなる」などと言っている状況であり、また、世論が安倍政権の経済運営に反対の意を表明していれば、もう少し状況は良くなっていたかもしれませんが、現在、自民党に対抗できる強力な野党は皆無の状況では、安倍政権に反対の意を表明したところで、「じゃあ、他にどうするの?」と言われてお仕舞いです。他に、いくらでもやれることはあると思いますが、多くの人々や評論家が、「安倍以外に誰がいるの?民主党?維新?そんなの全然ダメでしょう?」というレベルで思考停止しているのが現状であり、現状を改善するためには、先に説明したような「資本主義が勝利した!!資本主義は素晴らしい!!政府は経済に介入するな!!市場の調整メカニズムを重視すべし!!」という単純すぎる認識と同時に、このような思考停止状況を何とかして、政治家や有権者の脳みそを活性化させることも不可欠となるでしょう。「日本を取り戻す!!」とは素晴らしいスローガンだと思いますが、出来ることなら同時に「我が国に理性と思考能力を取り戻す!!」というスローガンも付け加えて欲しいと思います。

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西部邁

高木克俊

高木克俊会社員

投稿者プロフィール

1987年生。神奈川県出身。家業である流通会社で会社員をしながら、ブログ「超個人的美学2~このブログは「超個人的美学と題するブログ」ではありません」を運営し、政治・経済について、積極的な発信を行っている。

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コメント

  1. 高木克俊様

    世情に流布している「マルクス主義」について、マルクス本人が、「これがマルクス主義なら、俺はマルクス主義者ではない」と言ったという話が伝わっています。

    資本主義の否定としての社会主義ではなく、資本主義の完成としての社会主義、がマルクスの考えた社会主義であると私は考えています。

    以下のものがご参考になればと思うのですが。

    8.試行第六八号 1986年2月10日発行 より転載
    http://homepage2.nifty.com/okutamahomeless/jokyo8.htm
    (文中、「主催者」とあるのは、先年亡くなられた吉本隆明氏のことです。)

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