前回まで、安倍内閣の外交・安全保障政策に関して概ね肯定的に論じてきたが、筆者は決して安倍内閣の政策を全面的に支持しているわけではない。「アベノミクスの第三の矢」と言われる「成長戦略」には不適切なものが多いと考える。
安閑と眺められないアベノミクスの「第三の矢」
なかでもとりわけ問題なのは、外国人労働者の受入れ政策である。東京五輪の開催決定以降、安倍内閣は建設分野での人手不足を理由に、外国人労働者の受入れ拡大を検討し始めた。そして今年四月四日に「当面の一時的な建設需要の増大への緊急かつ時限的措置」として、外国人建設労働者の受入れ拡大策を発表した。
具体的には「技能実習制度」の規制緩和である。従来の最長三年の上限を撤廃して二年間の延長を認め、最長五年間の在留を認めた。更に、最も危惧された再入国にも踏み切った。三年間の技能実習を終えて帰国した外国人に再入国を認め、帰国後一年以内の場合は二年、一年以上経過している場合は三年、つまり最も長いケースで通算六年の在留を容認したのである。
技能実習制度は、もともとは発展途上国の人材育成を目的として一九九三年に導入されたが、実際には人件費が安い中国人労働者を合法的に入国させるという、本来の趣旨とは違う目的で運用されている。それは法務省の出入国管理統計からもあきらかだ。新規入国した技能実習生の国籍をみると、第一位の中国人が、二位のベトナム人、三位のインドネシア人を大きく引き離し、八割近くを独占している。この結果どうなっただろうか?
戦後日本において「在日外国人」といえば、戦前から日本に居住してきた朝鮮半島出身者とその子孫が中心という状況が長らく続いてきた。だが西暦二〇〇〇年以降、中華人民共和国の旅券を所持したまま日本に長期在留する中国人が猛烈な勢いで増加し、二〇〇七年末についに在日韓国・朝鮮人の数を追い抜いて最大勢力となり、ピーク時の二〇一〇年には六十八万七千人に達した。
永住在日中国人の急増で「移民国家」化する日本
このうち永住者の数も一貫して増え続け、在日中国人に占める永住者の割合は二〇一三年六月末には三〇%へと拡大している。これがいかに中国人限定の特異現象であるかは、永住許可件数の推移を他の外国人と比べてみると歴然とする。第二位のフィリピン人、第三位のブラジル人はいずれも永住許可件数が近年減少している。二〇〇八年のリーマンショック以降の国内不況のため、日系人ブラジル人の離職者に対して帰国支援事業を実施したからである。逆に言えば、在日中国人は景気の変動や震災の影響等に左右されることなく、一貫して日本の永住権を求める傾向が顕著なのだ。
現行の日本政府の方針が移民受入れを前提としていないにもかかわらず、いつのまにか在日中国人社会は「三人に一人は永住者」という状態に近似するまで定住化が既成事実となってしまっている。しかも、日本の「移民社会化」が、国民の多くに気づかれないまま、水面下でなし崩し的に進行してしまったことが問題である。特に中国は、共産党一党独裁国家で、人民は反日教育を受けており、在外中国人も有事には「国防動員法」の動員対象と法律上義務づけられているなど、他の外国人に比べて政治的リスクが著しい。これは治安や安全保障にも関わる問題だ。安倍内閣が、技能実習制度を規制緩和しようとするのなら、まずこの慄然たる現状をきちんと検証し、国民の不安を厳然と妥協なく払拭することが先決であるといえよう。
そしてなによりも、東日本大震災・福島第一原発事故からの復興を象徴するという触れ込みで開催されんとする2020年東京五輪は、外国人に頼らず、我々日本国民自身の手で、成し遂げてこそ、歴史的意義があるはずだ。
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2014年 6月 14日トラックバック:最後には ブレンバスター
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