日本愛国ポルノと日本自虐本、どちらに理がある?
- 2014/4/16
- 思想
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未だにいる幼稚な「外国かぶれ」
ちなみに、この谷本真由美は、愛国ポルノの現状をヨーロッパ人に見せたら驚かれたというようなことを書いていますが、私としてはむしろ、このような典型的なヨーロッパかぶれな人物が未だに存在し、しかも一丁前に言論活動を行っているということの方に驚きました。戦前や戦後の敗戦のショックから欧米に対して強いコンプレックスを抱いていた時期であるならいざ知らず、もはやとっくに経済的にも文化的にも欧米に追いついている現状において、ここまで、「日本ってヨーロッパに比べて、遅れてるし、品がないよねー。まったく日本人って本当に遅れてるし、野蛮で恥ずかしいワ」的なあまりにも戯画的な帰国子女像を体現している人物がいることに驚きます。
ちなみに、この海外へ留学、あるいは出張した後に、やたらと欧米かぶれになるこのような人物の精神を藤井聡さんは『コンプライアンスが日本を潰す』や『日本破滅論』といった著作において解説しており、また、かの福澤諭吉は『通俗国権論』という論考において、このような「西洋心酔の輩」を「余輩に於ては概して之を心酔者流と称するより外に評の下すべきものなし」と論じております。
「欧米に追いつけ追い越せ」で頑張っていた時代であるならともかくとして、現在においても、このような西洋心酔者流的な姿勢でいるのは、どうにも滑稽でまともな感覚の持ち主から見れば、ほとんど揶揄や嘲笑の対象にしかなりえないわけです。
さらに、笑えてくるのが、この筆者の著作である『キャリアポルノは人生の無駄だ』という著作の最終章では、
・私は私、あなたはあなた、成功者は成功者と自覚する
・自分を受け入れる
という項を設けている点です。どうやらこの筆者は「私は私、あなたはあなた」ということには思い至っても、「日本は日本、ヨーロッパはヨーロッパ」という考えには至らなかったようです。
また、筆者は、最後に「日本は、マッチョで自己愛的な愛国オナニー本ばかり出してる一方で、イギリス人は諧謔的な自己風刺も出来てクールよね」ということを書いてイギリスの本を数冊紹介していますが、残念ながら自虐に関しては日本の方が数歩先に進んでいます。
『無策! あと一年で国債は紙クズになる』(著 森木 亮 長谷川 慶太郎)
『日本銀行倒産前夜』(著 森木亮)
『国債・非常事態宣言 「3年以内の暴落」へのカウントダウン』(著 松田千恵子)
ちなみに、数年前までは経済本のコーナーをほとんど独占していたこれらの日本破綻本ですが、2010年8月に出版された『無策! あと一年で国債は紙クズになる』は3年以上経った現在、日本国債ではなく、この本が紙屑になり、2011年9月に出版された『国債・非常事態宣言 「3年以内の暴落」へのカウントダウン』という本も、どうやら、あと半年でチリ紙以下の価値しかならないゴミ屑となりそうです。
本を書く、本を売る、言葉を吐く者の責任
ところで、ここまで明白に予想を外しておいて、なんの弁解も弁明もなく何事もなかったかのような顔をして、言論活動というより妄言活動を続けている彼らの精神は私にはどうにも理解し難いものがあります。特に、2010年に『無策! あと一年で国債は紙クズになる』を書いた長谷川 慶太郎氏は2013年には『日本は史上最長の景気拡大に突入する アベノミクスは沈まない』という本を出しています。一体、この3年間の間に日本経済に、あるいは彼の脳みその中にどのような重大な変革が起こったのか、なぜそのような変革が起きたのかを分かりやすく説明して欲しいものです。「よく調べもせずに過激な文言を並べ立てて騒ぎ立てることで危機感を煽り、小銭を稼いで凌ごうとしています。そういう本です」と帯に書いておいてくれれば話は早いのですが、出版社側も、即売れることが現在の取次システムにおいてはとても重要ですからそういう著者をなかなか手放せない、売れないかもしれないけれど真っ当なことが書いてあるものを出版していく、ということは大手であればあるほど「僕はマーケティングに詳しいんだ」などという実際売上を産んできた文化的レベルの低い方々が上位の職に就いていれば、なおのこと難しいことなのでしょう。
最後に、ふたたび谷本真由美氏の話に戻すのですが、彼女は、先に書いたように日本とヨーロッパの違いについて解説するよりもむしろ、「日本はダメな国だー!!」「もう、日本はおしまいだー!!」「日本は破綻するー!!」という日本破綻本や、反日本、自虐本ばかりであった状況から、なぜこうも状況が一変し、「日本サイコー!!」「日本愛してる!!」「これからは日本が世界の経済を牽引していく!!」などという自己愛的な国家観を持つに至ったのか?というような問題について解説したほうが面白い論考が可能であったのではないかと思います。
私個人としては、日本における欧米との感覚のズレなどという問題よりも、むしろ、ほとんど国民全体が躁うつ病にでも罹ったのではないか?と思われるほどの国民全体の雰囲気や、精神や、認識等が乱高下していく全体主義的傾向の方がよほど危険かつ、深刻な問題を孕んでいるように思えるのですが。
コメント
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高木さんの記事はアスリードの中でも一番楽しみに見させてもらってます。
今回の記事はいつもとやや毛色が違うようには感じながらも、
「いるよねこういう人」というような頷ける言葉が多く、笑いながら読ませていただきました。
これからも記事を楽しみにしています。
長々と失礼しました。
僕個人の主観ですが、日本と言う国全体が自己愛性パーソナリティ障害に陥ってる気がします。
「ここは日本だぞ、外国とは違うんだ」と言う価値判断が余計に病状を悪化させているように僕は思えます。
国民全体の雰囲気や、精神や、認識等が乱高下していく全体主義的傾向の方がよほど危険かつ、深刻な問題を孕んでいる
と言う高木さんの結論には同意します。
正しいか間違っているかと言う判断より、自分が気持ち良いか気持ち悪いかと言う判断で「正しさ」を認識する人が増えたのだと思います。
宮台真司氏の言葉を借りれば、「感情の劣化」が起きているのだと思います。
しかし、ドイツは日本が言ってる「自虐史観」をひきうけて今のEUの地位を手に入れたのですから、
自己愛的に「自虐史観ガー」と日本は国際社会に意見を言うより、戦争責任を引き受け、それから日本が国際社会へどういう役割を果たしていくかと言う国民的な議論が必要なのではないのでしょうか。
「自虐史観」とか被害者ヅラして主張する癖に、一方で一人前の国に扱ってくれみたいな事を言ってたら、それこそ幼児の論理しかない国だと思われる証左ではないでしょうか。
これを言った瞬間に「韓国ガー」「中国ガー」の人が沸いてくると思いますが、まずは自分の襟元を正したらどうなんでしょうか。
とりあえず、自称愛国者の人たちはもう一度義務教育を受けなおした方がいいと思いますよ。つーか、お前らみたいな奴らが居てるおかげでな、日本の国益はどんどん損なわれてるんだよ。お前らバカには見えない国益がな。
戦後日本教育を批判するとしたら、まず俺はお前らみたいなイカレポンチを生み出してしまった事を全力で批判するし、日本国民の一人として猛省するわ。