インスタント記事 VS AMP包囲網にみる○○の時代がこない理由

空騒ぎのポジショントーク

 「インスタント記事 VS AMP包囲網」を騒ぐ人々から、こうした指摘を耳にしません。

 指摘するべき立場にあるものらは、すなわち「記事」を提供する新聞社や出版社、Web業界で、すでに朝日、毎日、産経新聞に日刊スポーツ、シネマトゥデイがAMPのプロジェクトに参加しています。そして彼らは、わずかでも表示時間が短縮されるメリットを享受する側。つまり「インスタント記事 VS AMP包囲網」の抗争を騒ぎ取りあげるのは、自社の利益のために行動を正当化する「ポジショントーク」なのです。

 そもそも「インスタント記事 VS AMP包囲網」も、FacebookとGoogleの利益拡大のための取り組みに過ぎません。表示速度を上げることにより、利用者の増加と連動する広告収入を期待してのことです。いわば、業界におけるシェア競争であり、キリンとアサヒによる「ビール戦争」レベルの話し。社会現象などではありません。

マスコミとは情弱ビジネス

 Facebook、Twitter、古くはブログにメルマガ。これを礼賛する人々や、彼らを取りあげるWeb業界と、連なるマスコミは、そこから利益を得る側にいます。ツールに過ぎないネットサービスは、ブームになることはあっても、社会を変えるほどの力はありません。しかし、社会が変わると煽り記事にして換金します。新しい時代の到来に乗り遅れてはならぬと脅し煽る構図は、1999年に人類は滅亡すると「予言」した「ノストラダムスの大予言(シリーズ)」と同じです。

 情報を咀嚼することが苦手ないわゆる「情弱(情報弱者を略したネットスラング)」は、この手の脅しと煽りに弱く、すると本が売れ、記事が読まれ金になります。そして二番煎じ、三番煎じの記事が粗製濫造されます。未来のことなので事実確認は不可能と開き直れば裏付け取材は不要で、労せずして実入り多いお得な記事。さらに予言が外れても返金どころか説明責任すら不要であることは「ノストラダムスの大予言」が立証しています。

 自らが利益を得るための「ポジショントーク」を、社会現象であるかのように取りあげるのがマスコミの手口。だから、「これからはセカンドライフの時代」「Twitterが社会を動かす」「Facebookでビジネスが変わる」といった、Web周辺の「予言」はことごとく外れるのです。一般社会では「キャッチコピー」と呼ばれるものに過ぎませんからね。

固定ページ:
1

2

西部邁

宮脇 睦

宮脇 睦

投稿者プロフィール

一九七〇年生まれ。プログラマーを振り出しにいくつかの職を経た後、有限会社アズモードを設立。著書に『楽天市場がなくなる日』『Web2.0が殺すもの』(洋泉社ペーパーバックス)、の他、電子書籍で『完全ネット選挙マニュアル』を刊行。

この著者の最新の記事

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 2014-10-20

    主流派経済学と「不都合な現実」

     現実にあるものを無いと言ったり、黒を白と言い張る人は世間から疎まれる存在です。しかし、その人に権力…

おすすめ記事

  1. ※この記事は月刊WiLL 2016年1月号に掲載されています。他の記事も読むにはコチラ 「鬼女…
  2. はじめましての方も多いかもしれません。私、神田錦之介と申します。 このたび、ASREADに…
  3. 酒鬼薔薇世代
    過日、浅草浅間神社会議室に於いてASREAD執筆者の30代前半の方を集め、座談会の席を設けました。今…
  4. 多様性(ダイバーシティ)というのが、大学教育を語る上で重要なキーワードになりつつあります。 「…
  5.  お正月早々みなさまをお騒がせしてまことに申し訳ありません。しかし昨年12月28日、日韓外相間で交わ…
WordPressテーマ「CORE (tcd027)」

WordPressテーマ「INNOVATE HACK (tcd025)」

LogoMarche

ButtonMarche

イケてるシゴト!?

TCDテーマ一覧

ページ上部へ戻る