前代未聞!!ネット上の批判に首相が激怒?!~安倍首相の経済への無理解~

ネット上の批判にブチ切れる総理大臣って・・・

1月18日の参議院予算委員会で、福島みずほ議員が安倍首相の過去の発言を批判し、「そろそろ景気が本格的に良くなってきたから働こうか?なんて思う人がいるんでしょうか?」「パートの女性で月収25万ももらえる人なんているんでしょうか?」といった質問をした際に、安倍首相が突然キレ気味に、「インターネットで私を批判している人達」などと発言しました。

↓3分35秒くらいから安倍首相のネット発言
https://www.youtube.com/watch?v=0WaEBDQOxeE

安倍首相
「例えば、インターネットの中で私を批判している方達の中にはこの『妻が働き始めている』にカッコをしてパートと書いてあるんですよね。私、言っていませんから。カッコをしてパートと書かなければ、この文脈の中では読めないのかなと思います。」

(おそらく、安倍首相はこういった記事を指して批判しているように思います
『【批判殺到】安倍首相「妻が(パートで)月25万。景気が良くなったから働こうとする」⇒ネット上で批判の嵐!経済音痴に怒りの声!』
(URL http://saigaijyouhou.com/blog-entry-9501.html

安倍首相、支離滅裂な発言は止めてください

ことのきっかけは、1月8日の衆議院予算委員会での安倍首相の発言です。

民主党の山井和則議員がパートの増加や一人あたりの賃金の低下を指摘した際に、安倍首相は、次のように発言しました。

安倍首相
「え~私と妻。妻は働いていなかったけれども、『景気がそろそろ本格的に良くなって来たからそろそろ働こうかしら』と思ったら、我が家の収入は妻が25万円で私が50万円で75万円にふえるわけでございますから。2人で働くことから2で割ると平均の収入は下がっていく」

以下の動画の27分頃
https://www.youtube.com/watch?v=4zGbO4v1MM0

この発言は、ネット上の一部で批判を浴び、「月に25万ももらえるパートなんてないだだろ!!」と一時話題になっていました。

確かに、先の発言を確認してみると、「パートで」とは言っていないようですが、文脈上明らかにパートで働きに出る女性としか捉えようがありません。この発言では、それまで仕事をしていなかった専業主婦の女性が働きに出ようとするという文脈なのですが、パート云々は抜きにしても、突然、正規社員として25万以上の収入を得るような女性がいるんでしょうか?あまり「パートで」という文言が入っているかいないかは関係ないように思います。

安倍首相は現在の日本経済の問題を全く理解できていない?

また、仮に「妻が働きに出て25万稼ぐ」という金額の問題は気にしないにしても、明らかにこの時の首相の発言は間違っているように思います。安倍首相は、「景気が良くなると実質賃金が低下する」という実に珍妙な論理を持ち出して、その説明として、
「景気が良くなる⇒専業主婦だった妻が働きに出ようと思う⇒妻は夫より稼ぎが少ない⇒稼ぎの少ない女性がたくさん働きに出ることで一人当たりの実質賃金は低下する」
といった説明で、「景気が良くなると実質賃金が下がる」などというバカバカしい論理を唱えているのですが、実際には因果関係は全く逆です。
「男の実質賃金が低下する⇒女性が働きに出ざるをえなくなる⇒景気が良くないのに賃金の少ない女性が多く働きに出ることでさらに実質賃金が低下する」
おそらく、こちらが一般的な認識です。

福島みずほ議員は、「多くの人は、「景気が良くなったから働こう」などと考えて働きに出るのではなく、みな自分たちの生活のために必死になって働いているんだ」と述べていますが、こちらの方がおそらく正しいでしょう。つまり、夫の稼ぎが少なくなることで、生活が苦しくなり妻も働きに出ざるを得なくなるということです。

また、安倍首相は福島みずほ議員の質問に対して、「景気が悪かった頃は、そもそも仕事がなかったから女性が働きに出ることが出来なかった」などと述べていますが、これも現在の日本経済の問題を理解できていないように思います。実際のところ、景気に関係なくコンビニや飲食店のパートなどはいつでも募集をしています。要は低賃金のパート労働やアルバイトの仕事はいくらでもあるんですね。現在の日本経済の問題は、労働や雇用の面から考えるなら、人々に仕事がないことではなく、労働者にとって質の高い雇用が不足しているということです。このような労働の質の低下は、安倍政権になってからは特に悪化し、2015年には、初めて非正規の賃金労働者の割合が4割を超えています。つまり、現在の職や雇用の問題はすでに失業率や求人倍率などで表される量の問題ではなく、低賃金で質の低い労働しか存在しないという質の問題になっているのです。安倍首相のノー天気な答弁には、このような問題意識が決定的に欠如しているように思います。

→ 次ページ「日本経済の二つの問題」を読む

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西部邁

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コメント

  1. 商品の価格は需要と供給によって決まる、というけれどそのためには需要量と供給量が自由に動かせなければならない。需要が減少したときに供給量が減らせない商品があったなら、その商品の価格は無限に低下してゆき、最後はタダ、自由財になってしまう。

    供給量を減らせない最も代表的な商品は何か。

    「労働力」だ。

    父ちゃんの賃金が減ると専業主婦だった女性がパートタイムに出る。労働力の供給は増えてしまう。すると賃金はさらに下がり、子供は学校を辞めて働くよ、などということが起こる。労働者の間で乳幼児死亡率が上がり、次に高齢者の寿命が下がり、労働者本隊が飢餓で労働戦線から脱落するようになって始めて労働の供給量が下がる。ここではじめて労働力の供給と需要が均衡する。これはリカードの賃金鉄則の世界だ。

    マルサスは、人口は等比級数で増えるが食料の供給は等差級数でしか増えない、だから労働者は常に飢えているのが常態だ、などといったが、ねずみは等差級数的にしか増えないが猫は等比級数で増えるから猫は常にねずみに飢えている、などということがあるだろうか。

    軽い貯蓄過剰の状態を維持し、常に労働者のごく一部が餓死する程度の労働力過剰の状態を作り出せば賃金は極小に、利潤は極大にすることができる。その技術を〝彼ら〟はすでに手に入れているのだ。

    竹中平蔵が、提示された賃金が気に入らないのなら働かなければよい、その賃金で働くことを自分で選んだのだから文句を言うほうがおかしい、という意味のことを言ったらしいが、そんな経済理論はない。夜道を一人歩きしている女性にレイプ犯が大きな棍棒をつきつけて、おい姉ちゃん一発やらせろ、さもなければこの棍棒をお見舞いするぞ、どっちかいいか自分で決めろ、といい、女性が仕方なくやらせたとしたら、それはレイプではないことになる。竹中とはその程度の人なのであり、それが慶応大学の経済学の教授なのだそうだ

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