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1月29日、日銀はマイナス金利付き量的・質的金融緩和政策を発表した。日銀当座預金の一部にマイナス金利を課す、つまりお金を預けるのに手数料を取るという政策だ。手数料を取られるくらいなら、融資に回した方がよいと銀行が考えるようになるだろう、そうすればお金が実体経済に周り景気が回復するだろうという甘い考えだ。
しかし、いくら銀行が貸し出しを増やしたくても借りてくれる企業がいなければ、貸出は進まない。失われた20年が続き、デフレ脱却もできていない日本、来年の消費増税にも備えなければならないのであり、国内に投資拡大をしようとする企業は限られている。融資先が十分あるのであれば、もうとっくに融資はしていたはずだ。政府・日銀の真の狙いは、そちらではなく円安・株高に誘導し夏の参議院選挙に備えることだろう。
2013年4月に量的・質的金融緩和を始めたときに金融政策を過信していた。2年で2%のインフレ目標が達成できるという過信だ。しかも消費増税をしても、それは黒田バズーカと呼ばれる強力な金融政策だから消費増税の悪影響など吹き飛ばすだろうと考えたのだろう。しかし我々も重ねて警告していたように、その考えは甘すぎた。
インフレ目標は2017年前半にまで先送りされた。
日銀の量的緩和により日銀当座預金の残高は258兆円、日銀券発行残高は100兆円にも膨れあがった。これ以上国債を買う速度を増やしても効果より悪影響のほうが大きいと判断して、マイナス金利に戦術を変えた。現在日銀当座預金の大部分に利子0.1%を払っており、日銀が銀行に払う利払い費は年間2200億円と言われている。
これはいわば銀行への補助金のようなものだ。本来銀行は融資を行って利ざやを稼いで経営を成り立たさねばならないが、今は補助金で経営を成り立たせているという異常事態だ。しかしこれを全部マイナス金利にすれば、金融機関の破綻が相次ぐだろう。だから日銀当座預金の大部分は現状維持で補助金に相当する部分は払い続け、それ以上に増えた部分だけにマイナス金利を課す。
銀行にとってみれば、マイナス金利(預金預かり手数料)を払うくらいなら国債という形で保有していた方が有利なので、国債を手放さなくなる。国債の奪い合いは今まで以上に激しくなり、国債価格は値上がりする。実際すでに上がっている。そこで銀行はジレンマに陥る。
日銀は国債を高い値段で買ってくれるからといって国債を売ると一時的に利益が出るが、それが現金に変わって融資しないでいるとマイナス金利を取られる。このような状況で日銀の国債大量購入は続けられるのか。
結局、マイナス金利付き量的・質的金融緩和でも、景気回復は難しいように思える。最も重要なのは減税や財政拡大による内需拡大であり、財政政策による内需拡大が行われた後であれば、日銀の金融緩和策が生きてくる。景気回復で経済拡大が確実になれば、投資を拡大する企業は増える。投資すれば、するほど利益が拡大するなら、更に投資を拡大するという「投資が投資を呼ぶ」という状態になる。
そうなれば低い金利が生きてくる。しかしながら失われた20年と言われているように長期に経済低迷が続いている日本であり、インフレ期待を持たせる余程大きな財政によるショックを与えない限り、デフレ脱却は無理だということを認識すべきだろう。これだけの金融政策をやるのだから消費増税をやっても大丈夫だろうと考えるのは全く間違いだ。
小野盛司
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