ポケモンGO狂想曲

大人がバットマンに喝采する国

 「ポケモンGO」は2014年にGoogleが「やせいのポケモンを集めてくると採用」と題した、エイプリルフールのネタとして作った映像が出発点とされます。はじめは「ジョーク」だとしても、それを実現した米国と、できなかった日本には、コンテンツに対する認識の違いが横たわります。

■Google Maps: Pokémon Challenge
https://www.youtube.com/watch?v=4YMD6xELI_k

 CG技術が発達したいま、「特撮」という表現には語弊が含まれますが、米国は「スパイダーマン」「スーパーマン」「バットマン」など、何度も同じヒーローがリニューアルされ、ヒット作も生まれています。幼き日に胸躍らせた特撮ヒーローが、大人になってもスクリーンのなかで活躍しているアメリカ人。普遍のヒーローを受け入れる国民性に一神教の影を見つけます。

 対して日本は「秘密戦隊ゴレンジャー」からはじまった「戦隊もの」や「仮面ライダー」シリーズがあり、ほぼすべてが1年間のシリーズ放送で、毎年、新しいキャラクターが登場します。これは八百万の神の影響ではなく「オモチャを売るため」という大人の事情です。

 今年の戦隊モチーフは「動物」、前回は「忍者」、さらにその前は「電車」と、独立した世界観が設定されています。その結果、それぞれのヒーローは世代を超えた共通言語とはならず、シリーズ全体が「子供向け」とまとめられ固定化します。「ポケモン」も同じく、毎年のように新作がリリースされ、少年期に通過する子供向けゲームの定番と位置付けられています。そこから大人をターゲットとする「スマホゲーム(アプリ)」には不向きと判断されていたのでしょう。

 コンテンツに大人と子供の区別を付ける日本人とボーダーレスなアメリカ人。いまでも、戦隊ヒーローモノをこよなく愛する私としては負け惜しみが止まりません。

 とはいえ慶事は慶事。日本のモバイルコンテンツの「初勝利」です。鳴り物入りで米国市場に切り込んだものの、泣かず飛ばずの撤退ばかり。武士の情けで名前は控えますが「俺たち任天堂の倒し方を知っているぜ」と嘯いた社員がいたゲーム会社は、海外進出に失敗し、国内に閉じこもり、その国内でもじり貧にあえでいます。

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西部邁

宮脇 睦

宮脇 睦

投稿者プロフィール

一九七〇年生まれ。プログラマーを振り出しにいくつかの職を経た後、有限会社アズモードを設立。著書に『楽天市場がなくなる日』『Web2.0が殺すもの』(洋泉社ペーパーバックス)、の他、電子書籍で『完全ネット選挙マニュアル』を刊行。

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