21世紀のサイバー国防! 足を引っ張るのは戦後生まれの老体たちか?

いつも、「フラッシュバック90s」をASREADにて担当しております、神田錦之介です。

さて、先日、安倍政権が閣議において、サイバーセキュリティ基本法の改正案を衆議院に提出することが決定しました。報道によれば、柱となる内容は、2点あげられています。

①内閣サイバーセキュリティセンターの監視対象を中央省庁から日本年金機構のような特殊法人にも拡大
②「情報処理安全確保支援士」という国家資格を創設

また、2016年度の予算においても、サイバー分野は大きく金額を伸ばしています。

21世紀の戦争は新たなステージへ

2015年の大晦日、東京MXテレビで放映された西部邁ゼミナール「アメリカニズムを如何とせん」において、伊藤貫氏は、21世紀の戦争について、下記のように述べていました。

20世紀の戦争というのは、陸・海・空軍の3つの戦力が主力だったが、21世紀の戦争は、その3要素に、核・サイバー・宇宙といった3要素が加えられる。

上の指摘において、核というのは比較的理解しやすいでしょう。第二次世界大戦は核で終わったが、第三次世界大戦の幕開けは核で始まると述べた人もいます。第三次世界大戦が起こりうるか否かは別問題としておきますが、20世紀において最新だった核兵器は、21世紀の現代では抑止力として最高の役割を各国で担っています。

宇宙空間での攻防

宇宙空間での攻防というと、マクロスやガンダムを思い浮かべる人もいるかもしれませんが、現実の宇宙戦争の主体は人工衛星です。上記で紹介した番組で、伊藤貫氏は、米国の人工衛星保有数を300、中国の人工衛星保有数を100と述べています。

その人工衛星の使用用途は、地球上におけるGPS測位や各国の情報収集などです。特に、GPS測位に関連した位置情報技術は重要で、無人探査機や爆撃機の操縦はこの人工衛星の能力に拠っているといっても過言ではありません。

また、人工衛星による情報収集はスパイを配置せずとも弾道ミサイルに燃料を注入し始めたことがわかり、先制攻撃を仕掛けることも可能なわけです。ちなみに、JAXAのホームページによると、日本が現在運用している人工衛星機は15基です。

全てをつなぐサイバー空間

宇宙・核とまるで、近未来のような話ばかり出てきましたが、その全てをつなぐのがサイバー空間です。

最近では、IoT(Internet of Thing)というフレーズが流行りだしています。とどのつまり、全てのモノがインターネットへつながっていくということです。このモノは人間とて例外ではなく、実際、人間にチップを埋め込み、GPSなどを把握できるようにしようという試みも現実に始まっています。

振り返ってみれば、私たちの生活自体がサイバー空間を抜きにして語れない状況になっています。そもそも、この文章を読んでいらっしゃる方は何らかの端末からインターネットへアクセスしているでしょうし、いまどき会社の財務や在庫管理を全て手書き伝票や帳簿で対応している会社なども存在しないでしょう。

私たちは、様々な情報をサイバー空間で、やり取りし、保管していますが、いざ、そこの情報が操作されてしまったり、最悪、アクセス不可になった場合のリスクなどを考えている方は少ないのではないでしょうか。

ある意味では、政府もまた、同じような状況にあったわけです。

人材確保の問題

新たな戦場と化しつつあるサイバー空間ですが、情報処理推進機構によれば、2013年度、センサー監視等による脅威件数は前年のほぼ、5倍、508万件まで増加しています。また、1件あたりの被害総額も1億円を超え、大規模な組織や情報ソースを狙った攻撃が増えているということです。
このサイバー攻撃の接続先の97パーセントは海外ということですから、一種の戦争状態といっても過言ではないでしょう。

同団体は現状の最大の問題点は、サイバーセキュリティを構築する人材が質的にも量的にも不足していると述べています。現在、情報セキュリティ従事者は26.5万人いるとされていますが、その中で、充分な実力を持っていない人材が約16万人といわれています。さらに、量的にも8万人の人材育成が必要となっています。

この分野は、まさに日進月歩の世界ですから、一旦プログラムや仕組みを構築して終了し、ある程度のスパンで開発・更新していけばよいというわけでもありません。それより、考え方としては、消防士、あるいは軍隊のように日夜訓練と防衛の研究・鍛錬を行い、日々、サイバー空間での防衛に勤しむようなイメージでしょう。

民兵の考え方がない日本にはそぐわない?

この人材確保の大きな壁になりそうなのが、組織の経営層と実務者レベルでのリーダー層と報告されています。

結局のところ、サイバーセキュリティ人材は営利を生まない、NPC(ノンプロフィットセンター)扱いになるわけでして、営業マンや現場の作業者などと比べたら肩身の狭い思いになるでしょう。

そこの意識改革を上の資料でも重要と述べていますが、そもそも、このサイバーセキュリティ人材は、企業の防衛、あるいは国防とも紐付く内容なわけです。そして、今の経営層はほぼ、戦後生まれであり、徴兵制や義勇兵として戦争に関わった経験もなく、さらにいえば、地域コミュニティが崩壊し始めた頃の世代でもあるわけです。

彼らの意識を改革して、サイバーセキュリティ人材、もっといえば、サイバー空間における新たな戦士たちを養っていくことができるのか否か。安倍政権の腕の見せ所といえるでしょう。

西部邁

神田 錦之介

投稿者プロフィール

京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程修了。
大切なことを伝えることとエンターテイメントは両立すると信じ、「ワクワクして、ためになる」文章をお送りします。

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