フラッシュバック 90s【Report.24】「護憲サヨク」、「改憲保守」というねじれはどうして生まれた?

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90年代、テレビで政治的なショーを繰り広げた番組といえば、「サンデープロジェクト」、「朝まで生テレビ!」といったテレビ朝日系列のものが多かったように思います。Report.15でも取り上げたように、椿発言で放送免許停止直前までいったテレビ朝日ですから、その番組のコンセプトはいわゆるサヨクだったことに間違いありません。

冷戦が終わり、見えやすい対立軸がなくなった

私が定義する90年代の始まりは、昭和天皇の崩御から始まりますが、同年、ベルリンの壁が崩壊し、2年後にはソビエト連邦が崩壊し、第二次世界大戦以後続いてきた冷戦体制が崩れてしまいました。

この時点で、日本におけるサヨクと保守の戦いは終止符を打ったはずでした。大澤氏や宮台氏あたりは、「大きな物語が終わった」とか「終わりなき日常」といった言葉を使いそうです。

ただ、見えやすい対立軸が無くなり、その対立だけが残りました。つまり、サヨクと保守が対立することが前提にあり、国会での論議などは、ただただ、その対立をパーフォーマンスとして争う場になっていったわけです。

湾岸戦争・PKO法を通じて出てきた9条という対立軸

時代背景的に、まるでソビエト連邦の崩壊を待ったかのようにイラグがクウェートへ侵攻し、国連軍が派遣され、湾岸戦争が勃発します。

ここから、憲法9条に基づいた自衛隊のあり方や国外の戦時に対する日本の支援のあり方に火がついていったわけです。
実際に、憲法9条を支持する「九条の会」のホームページには下記のような記載があります。

アメリカのイラク攻撃と占領の泥沼状態は、紛争の武力による解決が、いかに非現実的であるかを、日々明らかにしています。なにより武力の行使は、その国と地域の民衆の生活と幸福を奪うことでしかありません。一九九〇年代以降の地域紛争への大国による軍事介入も、紛争の有効な解決にはつながりませんでした。だからこそ、東南アジアやヨーロッパ等では、紛争を、外交と話し合いによって解決するための、地域的枠組みを作る努力が強められています。

間違いなく、憲法9条が湾岸戦争以降の90年代の中で、いわゆるサヨクと保守の新たな対立軸となっていったわけです。

国の骨組みである憲法の改正を求める保守?

さて、そもそも論ではありますが、憲法というのは、英語で表現すると“Constitution”となります。元々は、骨組みといった意味を持ち合わせた言葉です。

言葉の意味上ではありますが、保守というのは、急進な変革を嫌い、漸進的に物事を進めていく考え方や政治的姿勢をあらわしています。しかし、90年代以降の保守は、憲法9条を中心とした改憲論を展開していきます。

前述した「サンデープロジェクト」や「朝まで生テレビ!」などでも、西部邁氏や西尾幹二氏などが少数派として槍玉に挙げられることも珍しくありませんでした。

国の骨組みである憲法の護持を求めるサヨク?

一方、現行秩序の改革を求めていくはずのサヨクは国の骨組みである憲法を徹底的に護持する方向にシフトします。

日本共産党ですら、党として目指す方向は、天皇制の廃止でありながらも現行憲法下においては、憲法で定められた制度としての天皇制を認めています。ただ、民主主義が徹底すれば、天皇制は解決できる問題というよくわからない論理がございますが、民主主義を徹底したら、日本共産党が政治の世界から退場させられる危険もあるという突っ込みはしないでおきましょう。

つまり、革新を求めていくはずのサヨク勢力は、憲法による体制の護持に重きを置いているという二重構造が作られているわけです。

90年代においては、このようなサヨクが知識人や一般人の間で主流な考え方であったわけです。

→ 次ページ「憲法についてまわる「諸国民」の概念」を読む

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西部邁

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