近代的な価値観を超克するために、ここからしばらくは、経済上におけるキャピタリズム(資本主義)について検討していきます。
資本主義という言葉
資本主義(capitalism)という言葉は、かなり曖昧に使用されているように思えます。
資本主義という言葉は、19世紀中ごろからイギリスで使われるようになりました。その背景には、18世紀末に起こったイギリスの産業革命が影響しています。
『岩波 現代 経済学事典』には、「資本主義は、資本が私有され、利潤追求が経済活動の主要な要因になり、労働市場が生まれ、商品生産が一般化した社会と考えられている」と説明されています。「封建制の経済に代わる経済体制が生まれてきた。これを資本主義という」とも説明があります。
ちなみに「資本」については、「一般的には、私的に所有され、利潤を求めて投下されている富の総体ということができる」と定義されています。資本は、貨幣資本(お金)と実物資本(機械、工場設備、在庫、商品など)などに分類されます。
資本主義は、社会主義(socialism)との比較で論じられることが多いようです。「社会主義は、協同的で自由平等な社会を形成し、私利私欲や他人に支配される不公正と貧困から人々を解放しようとする思想、社会運動、および社会体制の三面から成っている」と説明されています。「近世以降は、資本主義経済の矛盾と抑圧を批判し、それらを克服しようとする特徴を強め、資本主義と対概念をなすに至る。socialismという用語は、1827年にオウエン派の機関誌に最初に登場し、フランスの空想的社会主義者たちにもつうずるものとして定着していった」とも説明されています。
資本主義を否定すると言っても、安易に社会主義に飛びつくわけにはいきません。ましてや共産主義などは論外です。そのため、資本主義を検討していく中で、社会主義や共産主義にも注意を払いながら、それらに代わる価値観を探っていくことになります。
そのために、まずはマルクスの検討が必要になります。
『共産党宣言』の共産主義
マルクス(Karl Heinrich Marx, 1818~1883)は、ドイツの経済学者です。科学的社会主義の創始者でもあります。共産主義者同盟に参加し、後に第一インターナショナルを創立しました。
マルクスの『資本論』を検討していく前に、マルクスがエンゲルス(Friedrich Engels, 1820~1895)と共に1847年に宣言した『共産党宣言』に触れておきます。注目すべきは、「共産主義者は、その理論を、私有財産の廃止という一つの言葉に要約することができる」という文章です。『資本論』の資本主義はこの私有財産を否定した共産主義との対比で捉えることができます。
ちなみに『共産党宣言』の序文によると、1847年には、社会主義がブルジョアの運動を、共産主義は労働者の運動を意味していたと語られています。労働者の解放は労働者階級自身の仕事だという見解から、マルクスとエンゲルスは、社会主義者ではなく共産主義者であることが分かります。
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