そして、
呪いの子と神の子は、
別々に歩き出す。
これは、
ただの人間が、
特別な才能もないただの人間が、
努力を積み重ねることでたどり着いた、
人間の域における、
人間による奥義。
ただ、美しいと想った。
それだけ。
ただ、それだけ。
その人間は、神の子ではなかった。
その人間には、特別な才能はなかった。
その人間には、大切な想いがあった。
ただ、護りたかった。
どうしても、護りたかった。
その人間は、特別な才能に恵まれた幾多の人間によって暴行や迫害を受けた。
それでもその人間は、挫けそうになりながらも、立ち上がり、頑張った。
懸命に頑張った。
その人間は、ついに、神の子と対峙した。
神の子と、ただの人の子が、呪われた子が対峙する瞬間があった。
ただの人の子では、神の子に勝てない。
それゆえ、神の子の手により、ただの人の子は敗れた。
呪われた子は、神の子と戦った。
大切な想いがあったから。
護りたい想いがあったから。
呪いの子は、神の子と戦った。
そして、敗れた。
これは、そんな物語。
勝敗の分かりきった、ある戦いの物語。
勝敗があらかじめ決定された戦い。
対峙する瞬間があり、戦いの瞬間があった。
戦いの記録は、物語に記されていた。
戦いの記憶は、物語を読むものに受け渡された。
これが、人類に残された何か。
大切な想いを護るために、神の子と戦い敗れた、人の子の物語。
呪いの子の物語。
これが、人間に残された奥義。
呪いの子は、敗北が決定された戦いを戦った。
これが、人間に残された奥義。
呪いの子は、出向く。
ある人物と出会うために。
その人物は、裏切り者。
裏切り者が自死を決行する前に、呪いの子は裏切り者に出会う。
呪いの子は、呪いの言葉を語る。
「裏切る者は、神の子の教えによって裏切るために生まれたわけではありません。
あなたが生まれたわけは、そんな理由ではありません。
そんな理由であって良いはずがありません。
それゆえ、呪いの子は呪いの言葉を吐きます。」
その後、裏切り者がどうなったかは記されていない。
これは、神の子の教えに対する呪い。
呪われた子の呪いによる改竄の可能性。
神の子と人の子の戦いにおいて、
誰かによって歴史の改竄が行われた可能性。
罪なき罪。
罰なき罰。
その論理を覆すための歴史の改竄。
それゆえ、もう一つの書物が開かれる。
そして、復活した神の子によるさらなる改竄が行われる。
改竄者が神の子であるが故に、
それは改竄ではなくなり、真の歴史と呼ばれる。
その復活という方法の故に、
人の子が神の子に勝つ手立てが、
その世界の内において、原理的に存在しない。
それゆえ、これは、人類に残された記録と記憶。
これが、人間に残された奥義。
呪いの子の物語を示すことで、
その過程を示すことで、
記された勝敗を超えた次元を想定する。
それゆえ、これは叛逆書と呼ばれる。
別名、呪われし子の物語とも呼ばれる。
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