中国人留学生のグローバリズム批判

1812

 勤務する大学で二年生のゼミを担当しています。新学期が始まって、今年のゼミ生は18名。そのうちなんと6名が留学生で、内訳は、中国人4名、韓国人1名、香港からが1名。自己紹介をさせた時、香港出身者が自分を中国人と名乗らなかったのが興味深く感じられました。

 それはともかく、最初の授業の残り時間が半分ほどになった時、ある文章を配って感想文を書いてもらいました。

 ある文章とは、『三橋経済新聞』2015年2月6日に掲載された施光恒(せ・てるひさ)氏の「『グローバル人材』って『植民地人』のこと……」という記事です。この記事で施氏は、グローバル化に向けてやたらと英語の早期教育を実践する自治体が増えてきたり、大学の授業をすべて英語でやったりする最近の傾向を憂えて、こんなことを進めていくと、やがては日本人が母国語や自国の文化を英語文化圏に比べて劣ったものであると信じるようになり、さらに思考パターンまで英語圏のそれになってしまうのではないかと危惧を表明しています。それが「植民地人」という表題の意味です。

 また施氏は同じ記事で、逆に外国人が日本に来て日本語を話すようになると、その特性がいつの間にか身について、相手の立場に立ってものを考え、一方的な自己主張を控えるようになるという例も挙げています。母国語はまさにその国の文化の性格を如実に表しているわけですね。

 ただ、施氏の文章では言及されていませんが、この事態をただよいこととだけ見ようとすると、問題がないわけではありません。長所は裏を返せば短所でもあります。日本人は、はっきり主張すべきときに主張せず、合理的な議論が必要な時に意見も言わずに空気の支配にまかせてしまうというのは、よく指摘されることです。これをただ「奥ゆかしい文化」と自惚れているわけにはまいりません。他人への過剰な配慮によって自分を殺すことが結局物事をこじらせてしまう場合もあることを心得ておくべきでしょう。

 さて私はこの施氏の文章を、タイトルだけ「これからの英語教育と、日本語の特質」と変えて学生たちに配り、感想を書かせました。

 集まった感想文のうち、一人の中国人女子学生の書いたものに、なかなか面白い文章がありました。本人の了解を得たうえで、その全文を以下に掲げます。なお、小さな言葉遣いのほかは、ほとんど修正を加えてありません。

 この文章を読んで、小学校から英語を学ばせるのは、なんかやりすぎるんじゃないかと思っています。英語は世界共通語だと言われていますが、全世界の人間が英語を学ぶ必要はないと思います。

 小学校で英語を1年生から正式教科にするということは少し早いと思います。小学生たちは、まずちゃんと学ぶ物は日本語と日本の文化であるべきだと思います。英語が話せないということは恥ずかしいことではありません。自分の国の文化についてや、きれいで正しい日本語が話せないなどは、一番恥ずかしいことだと思います。

 将来日本人の多くが「あの大学、まだ日本語で授業してる。三流大学だなwww」、「社内で日本語が聞かれるようでは一流企業ではない」などと普通に思うようになるのではないでしょうか、という話を読んで、私は本当に泣きたいです。もし日本語が三流な物なら、日本人としてのあなたたちは三流なんですか。日本という民族は三流な民族ですか。外国人としての私には、このような考えが一番、三流だと思われます。

 鈴木孝夫氏と施光恒氏は、日本語に現れている、他者との共存を大切にする柔和な日本文明の世界観を、世界の人々がもっと知ってもらうべきだと主張しています。私も大賛成です。

 日本という民族は偉い民族だと思います。(歴史のことを考えないで)

 これを読んで、いくつかのことを思いました。

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西部邁

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コメント

    • 岡部凜太郎
    • 2015年 5月 12日

    小浜先生失礼します。
    私が物心ついた頃からグローバルという言葉が中央政界から小学校まで世間の様々な場で騒がれていますが、英語の公用語とはグローバル化ここに極まれりと思って、なんとも言えない気分になってしまいます。
    このような風潮の先に、果たして何が待っているのか不安で堪りません。
    また、若者は保守的だ、内向き思考だと、最近、よく言われますが十代の私からすれば内向き思考を悪と捉えている知識人、経済人の方々は自国文化に自虐的な老害(言葉は悪いですが)と思って仕方がありません。もう少し年長の方には年相応に保守的になってもらいたいところです。(経済的自虐史観からの脱却)
    こういった思潮を正す為にも九州大学の施先生や京都大学の柴山先生ら若き保守派の方には頑張っていただきたいと思います。

  1. 岡部凛太郎さんへ

    コメント、ありがとうございます。

    「内向き」「保守的」などの言葉は、それ自体はネガティブなイメージはないはずなのに、こういう言葉で現代の若者を言い括って批判した気になっている人たちは、自分の軽薄な「外向き志向」「進歩的傾向」が、アメリカ発のグローバリズム追随でしかないことを自覚していないのですね。

    私の周囲には、岡部さんはじめ、物事をよく考える多くの若者が、その結果として、彼らの言う「内向き」「保守的」な位置を取らざるを得ない状況になっているようです。これを非難する彼らこそは「地球市民」や「コスモポリタニズム」を安易に気取る「戦後レジーム」症候群に罹患しています。そうして、この主力は、残念ながら、わが団塊の世代が占めているようです(笑)。彼らは、そのステロタイプ化した若者批判のパターンによって、かえって時代の流れを正確に見抜けず、物事をきちんと考えようとしないという意味での固陋な「保守派」なのです。

    一部の中高年世代の若者批判など、根拠がありませんから、どうぞ気になさいませんように。

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