フラッシュバック 90s【Report.18】成人式を荒らした新成人の心理と今

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さて、『江戸前の旬』というマンガで、主人公の旬が成人した際、成人式の日にお客さんが誰もお祝いに来ないというエピソードがありました。

それで、しょんぼりしていると、3日ほど経って、続々とお祝いを持って常連さんが駆けつけてきました。

一体何があったかというと、いわゆる「ハッピーマンデー法」が導入されて、1月15日から成人の日がスライドしていたという落ちです。

さて、今回のテーマは成人式です。2000年にハッピーマンデー法で1月の第2月曜日に移動した成人の日でしたが、90年代は「荒れる成人式」ということでメディアに取り上げられるようになりました。

成人式を荒らすものの背景

ちょうど面白い論文がありました。
「荒れる成人式」考』です。

その論文では、1999年ごろからメディアに、成人式が荒れていることが取り上げられるようになってきたとのことでした。メディアで取り上げられるということはつまり、その数年前から現場では現象が起きていたということです。

この論文の分析が面白いのは、コミュニティを「公共圏」と「親密圏」に分けていることです。掻い摘んでいうと、「公共圏」はパブリック、「親密圏」はプライベートといった感じでしょう。

著者によると、1970年代ぐらいまでは、国家や企業、地縁などが、プライベートな空間を規定していたということです。
私なりに例えれば、自治会や青年会といった組織が強かったのは、それまで存在していた組織に入ることが「当然」であり、そこの中でプライベートな友人などができていったということでしょう。

それが、70年代以降、個性や主体的な選択を主張する教育が導入され、教師や医師が「指導者」から「助言者」となることによって、徐々にプライベートに対するパブリックの影響力が弱まっていったそうです。
そして、90年代、ことさらに個性的な教育を強調された若者たちはの個は「肥大化した」と述べられています。

この「肥大化した個」を守るため、若者たちは、「公共圏」よりも、ゆるやかなつながりで構成される「親密圏」を重要視するようになったといいます。

成人式を荒らすものと支持するもの

そうすると、彼ら、彼女らにとって大事なのは、既存のルールが支配するパブリックスペースよりも、自分の「肥大化した個」を守るためのプライベートなスペースになるでしょう。

そして、その集団のルールがパブリック、つまり成人式の場に現れて、これまでのルールとは違った動きになったということです。何より、1人が飛びぬけてその行為を行うのではなく、その行為の支持者が多く存在するということ自体が、プライベートなルールで動いていることを如実にあらわしているでしょう。

しかし、プライベートなルールが先行する集団を選択する自由はまた、他の犠牲を払うことになるのです。

→ 次ページ「自由の代償は使い捨てであること」を読む

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西部邁

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