フラッシュバック 90s【Report.16】90年代、紅白歌合戦超個人的名場面集。

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昔、お化け番組がありました。

視聴率が70%を切ることは珍しく、まさに、老若男女が一年の締めに見る番組。そう、NHK紅白歌合戦です。

私も90年代後半ぐらいまでは紅白歌合戦を見ていましたが、今では録画することも珍しくなりました。最近では、東北大震災後の紅白歌合戦を録画したぐらいでした。

今回は、私が紅白歌合戦を見ていた頃の個人的な名場面を紹介していきたいと思います。

1997年 安室奈美恵 トリでヴァージンロード

1997年、飛ぶ鳥を落とす勢いの人気だった安室奈美恵さんでしたが、TRFとのSAMさんとの結婚を発表し、さらに妊娠中でした。

1997年の紅白を区切りとして、1年間の歌手活動を休止することを宣言しました。その舞台で紅白のトリを務めたわけです。

当時の紅白のトリなんかは、大御所の演歌歌手か、和田アキ子さんぐらいしか出れないところに、当時、20歳そこそこの女性が出てくるわけです。それほど、彼女の活動休止はセンセーショナルでした。

歌った曲は、その年のレコード大賞を取った「Can you celebrate?」を披露。お腹が心なしかふっくらした彼女は、ウェディングドレスをモチーフにしたような衣装に身を包み、ゆっくりと階段を下りてきました。

まさに、「ヴァージンロード」を降りて、そのまま1年の休暇に入った彼女。そのときは、この後、20年に続く色々な出来事を知る由もなかったわけです。

1998年 和田アキ子 トリでアカペラ

ちょうど、安室奈美恵さんのトリで話題になった翌年にトリを務めた和田アキ子さん。何度も務めている常連とはいえ、やはりプレッシャーもあったかとは思います。

トリで歌っていると当然に、マイクを口から離します。まさかと思ったら、アカペラで歌い始めたわけです。

うちの母が「すごいなぁ、やっぱり安室ちゃんには負けてへんで」と、和田アキ子さんの前に、1年ぶりの復帰で歌った安室奈美恵を引き合いに出して、語っておりました。

それぐらい、紅白のトリというのは権威あるものだったと心にのこった経験でした。

1995年 Hjumgle with t 裏番組の侵略

この間、カラオケ行ったときも熱唱した曲がありまして、それが、Hjumgle with tの「WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント」です。

レゲエ調で、社会人らしい独身男性の日常の叫びをそのまま歌詞にしたような内容で好きなのですが、発売されると、200万枚を超えるセールスを記録し、年間CD売上が第1位となりました。

このユニット自体、ダウンタウンが司会を務めていた「HEYHEYHEY MUSIC CHAMP」で始まった企画であり、今のように裏番組のことをあまり気軽にいじれない空気感だったテレビ業界では、NHKに出るのか出ないのかで話題になっていた記憶があります。

しかし、売上200万枚を突破したこともあり、紅白歌合戦に出場したのですが、その際、ボーカルの浜田雅功の相方、松本人志がゲイシャの姿で登場し、浜ちゃんとコントを繰り広げていました。

当時はまだ、他の放送局はおろか、番組の枠を超えた絡みも少なく、こういったサプライズは新鮮味があり、いい意味での緊張感がありました。

1998年 ポケビ&ブラビ 他局の番組がやってきた

上であげた、Hjumgle with tから、3年、ダウンタウンの盟友といわれたウッチャンナンチャンの番組、「ウリナリ!」から登場したユニット、ポケットビスケッツとブラックビスケッツが登場します。
特筆すべきは、ポケビ&ブラビのユニットの時間だったのですが、当時、人気の絶頂を誇った「ウリナリ!」のコントキャラや出演者が総集合した点です。

特に、ウッチャンのキャラクター、ホワイティが登場するなど、紅白の一コーナーを日本テレビの一番組が占拠するという、当時では「考えられない」シチュエーションであり、記憶に残っています。

紅白の低視聴率化は業界の緊張緩和が原因?

このように色々と思い起こしてみると、90年代に「しか」紅白を見ていなかった私にとって、その記憶というのは、やはりサプライズやタブーに挑戦したような企画ばかりです。

しかし、サプライズやタブーというのは、「これはやってはいけないだろう」とか「こういう演出はありえない」という人々の共通認識があって、初めて効果を持つわけです。

それが、業界自体が番組の垣根どころか、テレビ局同士の垣根も容易に飛び越えてしまう最近では、「何か起こるかもしれない」という緊張感がなくなってしまい、衝撃的なことが起こったところで全ては予定調和にしか見えなくなっているのです。

そうして、刺激を求める若者たちはテレビ離れが進み、テレビというメディアでしか情報を取り入れることのできない高齢者やファミリー層がメインの視聴者になっていき、よりテレビから毒はなくなっていくといくでしょう。


※第17回「フラッシュバック 90s【Report.17】BIG3のゴルフって何が面白いの?」はコチラ
※本連載の一覧はコチラをご覧ください。

西部邁

神田 錦之介

投稿者プロフィール

京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程修了。
大切なことを伝えることとエンターテイメントは両立すると信じ、「ワクワクして、ためになる」文章をお送りします。

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