中国発の世界同時株安

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問題の根底にあるのは、拡大を続けていた中国経済の減速である。

2008年のリーマンショックの際中国は4兆元(約56兆円、2010年まで)の景気対策を行った。地方政府がバラバラに景気対策を行った結果、地方政府の債務が大幅に増加、2014年末で24兆元(約456兆円)に達している。

2013年6月末時点では17兆9000億元だったので、1年半で34%増加し、これが景気対策の足かせになっている。夕張市のような財政破綻した地方自治体が無数に出現したようなものだ。

日本の公共投資も無駄とされ、随分非難されたが、中国の場合はそれをはるかに上回る無駄がある。例えばたくさんのゴーストタウンが生まれている。中国12大ゴーストタウンの一つ内モンゴル地区オルドスでは100万都市を目指して開発されたが、実際は3万人しか住んでいない。

汚職もひどく、政府は反汚職キャンペーンをやっていて一日500人以上処分している。しかし汚職ができないのなら仕事をしないと言い公共事業を停滞させている。

株高にして景気を刺激しようと。中国では2014年後半から、人民銀行、政府機関、国有企業さらに国営メディアまで総動員して露骨に株式ブームを演出、株価をつり上げて景気をよくしようとしていた。

しかし、そのような官製バブルがいつまでも続くわけがなく、6月12日に上海総合指数が5166になった後、急落を始めた。
7月8日には終値が3507になってしまった。32%の下落である。

問題なのは、バブルが崩壊し始めた後の中国当局の狼狽ぶりである。株式の新規公開(IPO)停止、信用取引規制の緩和、大口株主による株式売却の制限、違法売買の摘発強化といった通常では考えられない株価買い支え策を次々行ったが効果は出にくかった。

利下げや預金準備率の引き下げも行われたが、それほど大きな効果は出なかった。むしろ、当局の狼狽ぶりが逆に投資家に不信感を持たれたのが大きかったのではないか。

発展する中国経済に投資しようと海外から大量の資金が流れ込んでいたが、利下げが行われたとき、中国経済はそこまでしなければならないほど追い詰められているのかと判断した投資家は、一斉に中国から資金を引き揚げた。その結果が元売りであり、今度は元が下がりすぎないように外貨準備を売って元を買う介入を行って元を買い支えた。

もともと中国は人民元の国際化を目指しており、またAIIBを成功させるためにも、元の暴落は断固阻止しなければならなかった。元を切り下げたと思えば、元を買い支えたり、やっていることが支離滅裂であり余りにも素人っぽい。

このように、中国経済は複雑で問題の根が深い。減速する経済を救おうと思っても、抱えている問題が余りにも複雑で、単に景気対策をしただけでは、問題は解決するかどうか分からない。しかし日本の場合、問題は「国の借金」だけだ。それは財政出動をし、日銀が金融緩和して、GDPを拡大すれば、実質的に減っていく。

汚職も中国に比べてばケタ違いに少ない。財政破綻した地方自治体はほとんどいない。補正予算を組んで景気対策を行えば簡単に景気を刺激することができる。一部の企業は利益を上げているが、大部分の国民は実質賃金が減り、節約志向が進み消費が減少している。つまり国民は貧乏になっている。

今政府のやるべきことは2017年4月に予定している消費税率の8%から10%への引き上げを中止することだ。消費税率を5%に戻せば尚良い。社会保障制度を守るには、まず経済を活性化し、経済のパイを大きくしなければならない。

小野盛司

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