若者のデモはメディアの消耗品
- 2015/9/4
- 社会
- feature4, WiLL
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※この記事は月刊WiLL 2015年9月号に掲載されています。他の記事も読むにはコチラ
ギャルが反戦デモ
国会前の交差点で毎週金曜日に行われる「安保法制」への抗議集会が、大きな話題になっている。
主催者は「SEALDs」(シールズ/自由と民主主義のための学生緊急行動)。アメリカ海軍特殊部隊の略称「(Navy)SEALs」に限りなくスペルが似ているが、全く違う団体だ。
テレビ朝日「報道ステーション」を筆頭に、各種メディアがこぞってその街宣や抗議活動の模様を伝えている。七月十七・二十四日号の『週刊ポスト』では、この「SEALDs」に関して「安倍総理がSEALDsを非常に気にしている」として取り上げたほどだ。
新聞も同様だ。
〈未来のため声上げる 学生「許せない」〉(東京新聞、六月二十五日付)
〈SEALDs 「まじおかしい」が原動力 安保法案反対 大きなうねり〉(東京新聞、七月十二日付)
〈安保関連法案に反対する大規模な抗議行動が始まった。催したのは都内の大学生らによる「SEALDs」だ〉(朝日新聞「天声人語」七月十二日付)
など、できたばかりの学生団体をかなりの頻度で取り上げている。
一方、札幌では、六月二十六日に「戦争したくなくてふるえる」と銘打った「安保法制」反対デモが行われた。主催者は十九歳の女性フリーターで、その容姿から「ギャルが主催した戦争反対デモ」として地元紙「北海道新聞」はもとより、地上波各局もその模様を追った。「ニュース23」などは五、六分放送していた。
なぜ、既存の大手マスメディアは「SEALDs」や「ふるえる」デモを競うように大きく取り上げるのか。
七月十日、私は、「SEALDs」が主催する国会前の抗議集会を見に行くことにした。東京メトロ国会議事堂前駅を一歩地上に出ると、黒山の人だかりである。
この日は、「SEALDs」の抗議集会では過去最大級の参加者となった。毎日新聞は翌日、その数を「主催者発表で一万五千人」と伝えた。しかし、国会前の狭隘な歩道を占有して行われたこの抗議集会の参加者は、どんなに多くても四千~五千人というところだった。五千人でも多いことには変わりないのだから、明らかに事実とは違う水増しには感心しない。
私は警察官らに守られた抗議集会の最前列に進んだ。やはり「SEALDs」は学生緊急行動と銘打つだけあって、圧倒的に若い。
「SEALDs」の創設メンバーで実質的なリーダー格である奥田愛基さんは明治学院大学四年生で、二十二歳。その周りを取り囲むメンバーたちも、一様に二十歳前後の大学生だ。
特に前面に出ている女子大生メンバーの姿に、私の目が眩んだ。普通にキャンパスを歩いていたら、十中七、八の割合で「可愛い」と思うような子たちばかり。男子大学生らも、若い大学生がよく読むファッション誌『smart』のスナップに出てきそうな小綺麗な格好をしている。
私の大学生時代がなまじ陰惨で憂鬱だっただけに、彼らの醸し出す雰囲気には嫉妬すら覚えるほどだし、その洗練性は右派の集会にはないものだ。
貧困な語彙
しかし、肝心の彼らの放つ言葉の語彙は貧困だ。奥田さんがマイクを片手に「I say ABE, You sayヤメろ!」「なんか自民党感じ悪いよね!」とラップ(調)を始めると、それに呼応してメンバーがオウム返しを始める。
彼らなりの高度な政治的主張や演説を期待していたが、そのような展開はほぼない。むしろ理論的主張は幕間に登壇する文化人や民主党議員、憲法学者らが補完している。
六月二十七日に行われた渋谷での街宣活動も、共産党の志位和夫氏や山本太郎議員が登壇する一方で、「SEALDs」のメンバーはスマートフォンを片手に、ポエム調の反戦詩を読みあげる場面が散見された。
たしかに、彼らが憲法について無知なわけではあるまいし、相応の勉強もしているだろう。表情にはたしかに真剣さを感じる。「それが若者の表現」と言われればたしかにそうなのかもしれぬ。しかし、「(安倍)ヤメろ!」「(自民党)感じ悪い」と歌われても、私の心には何も残らなかった。
重要なのは、主催者である「SEAL-Ds」はたしかに若いが、その周りをぐるりと取り囲む聴衆は「SEALDs」とは明らかに異なっている、という点だ。
「SEALDs」の抗議集会に集まっている主力は、明らかに四十代以上の中高年である。
「SEALDsの抗議集会に一万人が参加した」という報道は「SEALDsの抗議集会にSEALDsと同じような年齢の若者一万人が参加した」という印象を与えるが、これは全く事実ではない。「SEALDsの抗議集会を中高年一万人が見物した」というのが正解だ。
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