「スプラトリー危機」「沖縄危機」へのカウントダウン(第1弾) ~東南アジアと沖縄が赤く染まる前に~

1998

『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』から10年ほどが経ちます。私はきちんと見てはいないのですが、友人たちの感想の中に、「島嶼防衛が戦略的に重要なんだな」という意見がありました。

第二次世界大戦の頃は補給基地としての意味合いが強かったですが、海洋資源の開発、タンカーや輸送船での輸出入が活発化した今日においては、海の上の国境をどこに引くかというのは国防だけでなく、経済的にも大きな問題となります。

そして、その権益を奪うために、最も積極的に動いている国こそが、中華人民共和国です。

南シナ海を舞台にした「スプラトリー危機」

2015年6月15日、レコードチャイナは、フィリピン軍が中国を名指しし、「今日の戦争は国際法上の制限を受けるが、主権や自衛を理由に戦争が発生する可能性は依然存在する」と報告書に記載したと伝えています。
ただ、これは一方的にフィリピン軍がクレームをつけているわけではありません。日本国政府が公式に発表している資料でも一方的に中国が覇権を広げていることが一目瞭然です。

2015年5月29日に、防衛省からリリースされた「南シナ海における中国の活動」という資料を読めば一目瞭然ですが、ここ5年ほどで、中国が一方的にスプラトリー諸島周辺の岩礁の埋め立てを行っています。

南シナ海において中国と国境を持つフィリピン、マレーシア、ベトナムも警告しており、上の声明も出ている以上、局地戦も起こりかねない「スプラトリー危機」と呼ぶべき状況です。

南シナ海の重要性

さて、この南シナ海にどうして中国がこだわっているのでしょうか?

高木誠一郎氏の報告を参考にわかりやすく魅力をまとめると、以下の3点があげられます。

①南シナ海海底には天然ガスを中心とした資源や豊富な漁業資源の獲得
②中国、東南アジア、インドという21世紀の経済成長力を持つ人口30億人の経済ブロックの中心
③世界貿易の商業財の半分以上が南シナ海を通過する

この南シナ海は、今後の資源、経済成長、貿易に大きくかかわってくる土地である以上、周辺国家だけでなく、アメリカを含めた世界中の国家が注目する問題となっているのです。その海域の権益を狙い、次々に岩礁を埋め立てていく中国は、意図的に「スプラトリー危機」を演出しているといえます。

「スプラトリー危機」の“被害者”になろうとする中国

ただ、おかしな話なのですが、拡大政策をとっている中国の方が、中国国内のメディアの論調では、“被害者”になっているのです。論調としては、ベトナムやマレーシア、フィリピンといった周辺国が中国の国境を侵してくるため、海洋の安全を保持するために拡大しているのだといった具合です。

どうして、このような立ち回りを中国は取ろうとするのか。それは、狙いがただただ、南シナ海の覇権を手に入れるだけではなく、国際世論も味方につけようとしているからです。

政治でも外交でもなく、司法で決着を狙う中国

金永明氏の論文に寄れば、東シナ海の問題でガス田を中国が単独開発した場合に、日本が国際海洋裁判所に問題をかけることを気にかけていたそうです。そのことから、政治で決着できない場合は、国際司法の場で決着をつける研究を進めるべきだと著者は述べています。

間違いなく、この考え方に則って中国は、南シナ海の岩礁において、港湾施設や滑走路を作成しています。これは上に紹介した防衛省の資料でも明らかにされています。基本的に構造物を建てることは主権が存在している場所にしかできないため、現在の中国の行動は主権の既成事実を作っている段階です。

国際世論を気にした「拡大政策」

ここまでを見ると、中国は国際世論に対して慎重に対処しながらも、確実に主権を拡大していっています。孫子の兵法の中に「戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。」という教えがあります。

フィリピンやベトナム、マレーシアといったASEAN諸国と兵力差があるとはいえ、中国が解放軍を用いて武力攻撃を行えば、国際社会の批判を受け、経済制裁や何らかの打撃を与えられることになるでしょう。例え勝つことができたとしても、国力を損耗し、そもそも共産党王朝自体の崩壊を招きかねません。

しばらくは、このような国際協調を意識した拡大政策が続いていくでしょう。実は、この動きは間違いなく、沖縄の自己決定権回復といった動きにも通じており、今の「スプラトリー危機」とは違った形の「沖縄危機」が発生すると考えています。

西部邁

神田 錦之介

投稿者プロフィール

京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程修了。
大切なことを伝えることとエンターテイメントは両立すると信じ、「ワクワクして、ためになる」文章をお送りします。

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