当事者として唱える「有権者」教育

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18歳選挙権と「有権者」

 先日、公職選挙法が改正され、選挙権が18歳に引き下げられました。選挙権年齢が引き下げられるのは70年ぶりとのことです。より若い国民の意見を取り入れることができると歓迎する声がある一方、義務と責任が不十分な若者に権利を与えるべきか、という慎重論もありました。

 私は本改正案に賛成でしたし。また今回、議論された十代の若者の一人です。とはいえ、そういった立場から観ても確かに慎重派、反対派の方々の意見も頷けます。そんな今回の改正案の成立にあたって、最も重視されたのは教育です。若き国民をどう政治に関心を持たせるか、これは本改正案の賛成、反対の別なく重要なテーマと言えるでしょう。しかし、この議論には賛同できますが、その議論の過程に私は違和感が拭えません。それはこういった教育が「有権者」教育とされているからです。

「有権者」とは誰か

 有権者教育ーこの名前に皆さんは違和感を覚えないでしょうか。なぜ「有権者」の教育なのでしょうか。こう言えば不思議な言い方ですが、有権者とは権利を有するもののことを言いますが、同時に有権者は義務と責任を有する存在でなくてはなりません。どちらか一方のみを有するという状態は不均衡な状態と言えます。しかし、今回の改正公職選挙法案、18歳選挙権に関連する議論では権利を有する有権者への教育ということのみについて議論され、有権者が有義務者であるということについてはほとんど議論されていないと言って良いでしょう。私も高校生であり、有権者教育を受ける身ですが、このようなことではいけません。

 そして、有権者は有義務者であり、それは即ち、国民であるという視点もすっぽりと今回の議論では抜け落ちています。そういった歪んだ議論の後に策定された、権利偏重の教育を未来を担う学生に行っても、国家の将来が明るくなるとは思えません。行うべきは権利を有する者への教育ではなく、国家の未来を切り開かんとする教育ではないでしょうか。

国體の保守と教育

 では、具体的にどのような教育を「有権者」すなわち若き国民に行うべきか。そのことについて、九州大学大学院准教授の施光恒氏はこのように述べています。

 人は、自分自身だけで存在しているのではない。他者の厚意や、国や地域の伝統文化の蓄積、先人の苦難のうえに今の自分がある。つまり、「おかげさま」で生きている。自分の権利や利害を主張するだけでなく、地域や国のあり方、文化伝統に大いに関心を持ち、さらなる発展に貢献し、次世代へ引き継ぐ義務や責任も負わなければならない。こうした自覚を持つ者こそ、よき有権者である。

 このように言えるとすれば、有権者教育では、児童・生徒に、有権者としての権利や諸々の政治的知識やスキルを教えるのと同時に、自分は「おかげさま」で生きているという自覚を身に付けさせることもまた重要となってきます。この自覚こそが、公共の事柄に対する関心と責任の基礎だからです。

 よりよき有権者教育のあり方を、歴史や地理、道徳などの授業とも連携を図りつつ、活発に探求していく必要があるといえるでしょう。
(産経新聞九州版 2015年6月18日)

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西部邁

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