どうして日本の行政改革は進まないのか?
- 2014/1/20
- 政治
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日本では、バブルが崩壊した90年代以降行政改革論が非常に流行し現在に至るまで、未だに「行政改革!」や「脱官僚!」といったフレーズを掲げる政治家や政党が人気を博しています。
曰く「縦割りの行政が悪い」曰く「官僚主導の政治によって、民意が反映されなくなっている」といった文句が常套句のように用いられ、多くの政治家やマスコミが、このような非効率な行政システムの刷新こそが日本の最重要な課題であるかのように喧伝しています。
先生、なんで改革するんですか
これほどまでに、多くの人々が「行政改革が最重要のテーマである!!」と喧伝し、さらに、多くの改革派と呼ばれる議員が当選し、さらにはシングルイシューで行政改革のみを目的とした「みんなの党」といった政党までが誕生し、一定の議席数を獲得しているにも関わらず、未だ、その行政改革が華々しい成果を上げたという話を私は聞いたことがありません。一方で、なぜ行政改革が進まないのか?という問題に関しては多くの論者が、「強欲な官僚が自らの既得権に必死にしがみついて手放さないからだ。」「日本の政治はあまりにも官僚の力が強すぎるからだ」等々の説明しています。
しかし、本当にそうなのでしょうか?現実には、90年代に突入して以降の官僚バッシング、公務員バッシングの世論により、官僚や公務員の力は落ちているはずです。このような状況で政治の強力なリーダーシップのもとに、多くの国民や政治家、あるいは官僚にとって納得しうる説明や説得をおこなって、一気に効率的な行政システムへの転換をはかろうとすれば、それは可能だったのではないか?という気がします。現実に、それが良いか悪いか、という問題はさておき、強力なリーダーシップを発揮した小泉政権の時代には、様々な改革が急激に進められました。しかし、それらの改革の結果として何かが良くなったという話は特に聞くこともなくなく、逆に、その後の自民党の解散総選挙では小泉政権時代のビジネス重視の改革路線に否を唱える民主党が大変な支持を集めて圧勝しました。
このような様々な事実を考えるなら、むしろ、行政改革が上手く進まない理由は「強欲で既得権を守りたがる官僚」や「保守的で、硬直的な思考しか持てない抵抗勢力」が原因ではなく、むしろ、明確な目的やビジョンのもとに、効率的な行政システムを設計し、官僚を説得していくための政治、あるいは政治家の方針が全く定まっていないことが原因なのではないでしょうか。
大事の前の小事とはいうものの、「大事」定めてますか?
考えてみれば、当たり前の話で、行政システムの改革は特定のある具体的な目的、例えば、「日本をもう一度成長路線に戻す」とか「関西や、首都圏で大地震が起きてもビクともなしない強靭な国土を作る」とか「富士山が噴火しても、そのダメージを最小限に抑えられるような万全の対策を講じる」といった明確な目的を達成するための手段です。目的が異なれば、その手段も柔軟に変化していくのが当然であって、少なくとも現在のように政治的な目標が1年ごとに180度転換してしまうような、混乱した政治状況では、具体的にどのような行政システムが望ましいのかという方針を決定することは事実上ほとんど不可能でしょう。
一方で、現在では、国土強靭化という目的のもとで、一定の行政改革が成し遂げられているという話も聞きます。それまで縦割りであった行政を「国土強靭化」具体的には首都直下型地震や南海トラフ大地震といった危機へ備えという目的のために、横での情報交換を密にし、一部では非常に密接な連携の体制が取られているというのです。
これも、やはり私には当然のことのように思えます。私の記事で何度か触れていますが、あらゆる目的は、その上位に位置する上位目的に奉仕するための下位目的(手段)であります。多くの行政改革論者は、あたかも行政改革そのものが目的であるかのように述べ、「行政改革という目的さえ達成されれば、日本は良くなるのだ!!」といった論調で語っていますが、現実には行政改革はどこまでいっても特定の具体的な政治的目的を達成するための手段でしかありえません。であるにもかかわらず、なんと行政改革は、行政改革を重要視し、行政改革を第一目標とすればするほどに、その目的の達成が不可能になるというパラドックスに陥ります。それは、いうなればバスケをするのか、サッカーをするのか、あるいは野球をするのかも決まっていないままに、「お前らの今までのトレーニングは非効率だ!!これからは効率的なトレーニングシステムへ転換しろ!!トレーニングの変革こそが最大の目的だ!!」と迫っているようなものです。これでは、トレーニングを効率的に行うことは到底不可能であるだけではなく、真剣に効率的なトレーニングを行おうと考えている人間にとっては、このように意味不明な指示をされればむしろ腹立たしくなり、やる気を失わせることとなるでしょう。みなさんも自転車に乗るとき、どこへ行くのか決めてもいないのに、「こういう漕ぎ方でなければダメだ降りろ!」とか、「乗るときの服はこれがいいかあれがいいかとりあえずお前の服はダメ!」「あそこに小石があるから避けろ避けろ!何やってんだ!」等と無責任に言われれば、嫌にもなりますよね。
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