どうして日本の行政改革は進まないのか?
- 2014/1/20
- 政治
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官僚を敵に回してどうする。
逆に、政治の強力なリーダーシップのもとに明確で、かつ非常に説得力を持った、腑に落ちる具体的な目的を設定しさえすれば、官僚は懸命に努力し、その目的のために必要とあれば、むしろ自ら積極的に自分たちの組織を改変していくでしょう。大きな目標のためには組織の改変など手段にすぎないのです。現在の官僚バッシングの世論の中で「たかだかお勉強が出来るだけで、国民の信認も受けていない官僚が国をコントロールするなどとんでもない!!」といった意見に多くの人が賛同しますが、私はこの意見には全く同意する気になれません。私は、何人かの優秀な大学で優秀な成績を収めている学生や、卒業生して公的な仕事に就いた人たちと話をしたことがありますが、みな一様に真面目で、聡明で、そしてなにより国家のために尽くそうという高い志の持つ人がほとんどでした。少なくとも、強欲で(悪い意味で)保守的で、利権にありつこうとだけ考えるような一般に流布しているダーティーな官僚象とは似ても似つかない人たちでした。
ここで、なぜ、現在の安倍政権下で、国土強靭化という目的のもとに、行政改革が進み出しているのか?という理由を考えてみたいと思います。一つには、先程から述べているように、国土強靭化という明確かつ腑に落ちる、「そうなったらいいな」と思わせる目標が設定されているので、その具体的な目標を達成するためにはどのような組織改革が必要であるのかという課題のもとに官僚たちが動いているという点が大きいと思います。そして、第二には安倍政権が長期政権を担えそうだという見通しが立っていること、これまでのようにいつ政治のトップが入れ替わるか分からないという状況のもとでは、どのような行政システムが望ましいか?という問題設定さえ不可能だったために一向に効率的なシステムの設計が不可能だったのですが、今回の安倍政権が長期政権となりそうな見込みが立っており、なおかつ、その長期政権のもとで明確な中長期の目標設定がなされているこの2点は、やはり官僚にとっても非常に大きなモチベーションとなっているのではないでしょうか。
最後に、もう一度、では何故これまでは行政改革が上手く進まなかったのかという問題に立ち返ってみたいと思います、やはり、この問題は、政治が、官僚に対して明確な目的を与えられなかったという問題が大きいでしょう。なにやら、お家社会である日本の日本人の精神構造には、明確な目標が定められている時には皆と一丸になって力を合わせて頑張る一方で、一度、目標を喪失すると、やたらと権力争いをしたり、相手の足を引っ張り合って、自分たちの派閥の勢力を拡大しようとする傾向があるようです。彼らも人間であることは事実であり、具体的な目的がない状況、抽象的なお題目しかない状況ではとりあえず自己の安定を図ろうとすることも人間心理として頷けるものではありませんか。
昨今の多くの論者というに値しない論者もどきの「コメンテーター」なる人々が野次する「既得権にしがみつく強欲な官僚」あるいは「政治家をコントロールしたがる不遜な官僚」というイメージは、必ずしも官僚の持つ本質的な側面の全てではなく、むしろ、政治が不安定化して、皆で一致団結して突き進んでいくための明確な目標が喪失した状況での一時的な混乱といった側面が強いのではないでしょうか。
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