僕たちの首相は憲法一三条を知らない~安倍総理と憲法解釈の問題点~

そもそも自衛隊ってなんで合憲なの?

現在、安倍政権の安保法制の強引な推し進め方と、それに対抗するシールズ等の安保法制反対派との激しいやり取りの中で、再び、「果たして自衛隊は合憲であるのか?」という問題が一部でクローズアップされています。

私自身の見解はさておき、以前書きました記事(『何故、個別的自衛権は合憲で、集団的自衛権は違憲なのか?』)では、憲法一三条を中心に現在の標準的な憲法解釈と自衛隊や自衛権の憲法解釈のあり方について解説しました。

簡単に、おさらいしておくと、基本的に日本国憲法では九条により交戦権と戦力の不保持を定めています。しかし、憲法九条の例外的措置として、憲法一三条に定める国民の生命と幸福追求権を最大限尊重するために、自国の防衛措置に限り戦力の保持を認める。

もちろん、このような解釈に対する是非の議論は存在するでしょうが、ともかくも、このような見解が現在の内閣の標準的な憲法解釈であり、この憲法解釈を認める人間であっても、認めない人間であっても、とにかく、現行の憲法解釈はこのような構造になっているということを前提としなければそもそも議論を開始することすら出来ません。

憲法一三条を知らないと憲法議論は成り立たないハズなのに・・・

しかし、なんと困ったことに、憲法改正と戦後レジームの脱却を目標とする現在の政権のトップである安倍首相は、そもそもこの憲法一三条の存在もその中身についても知らないようなのです。

民主党の小西洋之議員は、実際の国会での議事録を引用しながら、安倍首相が、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利を最大限尊重することを定めた憲法一三条について知らなかったという事実について解説しています。

安倍総理と憲法13条〜解釈改憲の本質〜』 http://blogos.com/article/89631/
(議事録は記事後半)

わざわざ、政治家の無知をあげつらって個人攻撃をするのは趣味ではありませんが
しかし、それでも首相がこの一三条を知らなかったということは大変なことを意味します。

何故なら、先に説明したように現在の憲法の条文においては、自衛隊や日本国家の自衛権を担保するための条文は憲法一三条以外に存在しないからです。一応第66条に文民統制を定める条文が存在するため、「文民統制が必要であること=日本国憲法は軍隊の存在を前提にしている」というマニアックな解釈もあるのですが、これに関しては、おそらくは旧日本軍の人間を大臣職に就かせないという目的で定められたものであり(もっともそれは破られているのですが)、この条文をもって自衛隊や軍隊の存在を肯定する根拠とすることは難しいのではないかと思います。よって、現在の憲法においては、自衛隊の存在や日本国の自衛権は(前文を除いた条文においては)全て一三条によって担保されていると考えてよいでしょう。確かに、基本的には個人の自由や権利を定め保障するための条文である一三条によって国家の安全保障や軍事権等の根拠が支えられているという非常に歪かつ不安定な構造ではありますが、ともかくも、このような解釈が現在の政府の標準的な憲法解釈なのです。

→ 次ページ「新しい政府解釈による集団的自衛権の根拠も一三条に拠っている」を読む

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西部邁

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