「原油安」と「円安」…2つの「安」で日本経済は新たな夜明けへ
- 2015/7/1
- 経済
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円安で潤う日本経済
原油安と並んで、日本経済に大きな恩恵を与えているのが円安である。冒頭に述べたように、安倍政権発足前には80円台だったのが、現在では120円超の水準となっている。これにより、日本企業は空前の利益を出せるようになった。
平成26(2014)年4~9月期の決算では上場企業約1500社の経常利益は1兆5000億円増えて過去最高となった。平成27年3月期の通年でもリーマンショック前の過去最高にほぼ並ぶ見通しだ。
その理由は簡単で、たとえば輸出で1億ドル儲けていた日本企業は、円に換えれば80億円の利益だったのが、120億円と1.5倍となる。原材料を輸入している場合は円安によるコストアップはあるが、それを補って余りある利益が得られる。
あるいは外国企業とドルベースで張り合っている場合では、円ベースのコストが勝手に下がってしまうので、価格競争力が増して、売上が増える。
また、円安は観光業界も潤す。円安によって、たとえば外国からの観光客が、日本国内の旅行で20万円使おうとすると、かつては2500ドル必要だったのが、1667ドルで済む。
これに伴い外国からの訪日客は平成24(2012)年の836万人が、26年には1341万人と60%も増加している(日本政府観光局統計)。これによりホテル・交通・飲食など国内業界が潤っている。
日出ずる国の新たな夜明け
なぜ、こんなに急激な円安が実現したのか。その原因として長谷川氏が指摘するのが安倍政権誕生直後に実施した「資金の移動に対する金融機関への規制撤廃」である。これにより、日本の銀行が国内にだぶつく長期資金を自由に外国に投資できるようになった。[1,p93]
日本は家庭の貯蓄などで国内に膨大な資金があり、そのため金利が非常に安い。たとえば、平成26(2014)年末の10年物国債の利回りは日本で0.3%と、アメリカの2.1%とは桁違いの水準である。その日本の資金を求めて海外の一流企業が日本のメガバンクに殺到した。
…今や日本の3大メガバンク(みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行)の役員は多忙を極めている。連日連夜、世界各国の一流企業のトップと会わなければならないからだ。世界の一流企業が借り手となるので、3大メガバンクにとっても貸し倒れを心配する必要がない。
こうして3大メガバンクから何十億円あるいは何百億円にのぼる巨額の資金が融資という形でどんどん海外の一流企業へと移動しているのだが、当然ながらそのさいに3大メガバンクは円を売ってドルを買わなければならない。これは外国為替市場では円売りドル買いだから円安の原動力となる。[1,p69]
日本のメガバンクから見れば、たとえば今まで国内向けの住宅ローンでは利回りが0.8%程度だったのが、外国の一流企業相手にアメリカの国債利回り2.0%に1.3%を上乗せして貸し出せる。
世界一資金の余裕のある日本が、世界的なドルの実需に応えている。我が国は優れた技術商品の輸出大国、知的財産で稼ぐ技術大国のみならず、豊かな資金を世界に提供する資本大国にもなりつつある。
原油安と円安は日出ずる国の新たな夜明けを示す暁光である。
文責:伊勢雅臣
■参考■
1. 長谷川慶太郎『大波乱: 長谷川慶太郎の大局を読む緊急版』李白社、H27
『Japan on the Globe-国際派日本人養成講座』
著者/伊勢雅臣
購読者数4万3千人、創刊18年のメールマガジン『Japan On the Globe 国際派日本人養成講座』発行者。国際社会で日本を背負って活躍できる人材の育成を目指す。
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