「原油安」と「円安」…2つの「安」で日本経済は新たな夜明けへ
- 2015/7/1
- 経済
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サウジの思惑
こうした状況の中で、サウジはなぜOPECの生産枠を削減せず、価格下落を放置したのか? すぐに思いうかぶのは、シェール潰しである。確かに、原油価格の下落により、シェールオイルの採掘を行っている約120もの上場企業の株価が大きく下落した。
しかし、長谷川氏はこの説を間違いとする。シェールオイルの生産コストは地域によって大きなバラツキがある。バレルあたり1ドルなどと、バレル3ドルのサウジの油田より安い所もある。
またシェールオイルの場合、半径3~5キロの地域で、数年間採掘したら、また別の地域に移るというやり方になっていて、原油価格が戻れば、また雨後の竹の子のようにあちこちで採掘が始まる。したがって、一度の原油安でシェールオイル企業を根絶するというわけにはいかない。
サウジの思惑として、長谷川氏が指摘するのは、OPECに加盟していない産油国、とくにロシアを狙い撃ちすることである。
現在の世界の原油生産量は日量約8600万バレルであり、そのうちロシアが1060万バレルを占める。ロシアはヨーロッパに売る天然ガスの価格を自ら交渉して決めてきた。天然ガスの価格は原油価格に連動するが、OPECに加盟していないロシアは自由に交渉できる。
ロシアがOPECに加盟すれば、OPECは約4000万バレルの原油をカバーすることとなり、その価格支配力は飛躍的に高まる。石油市場の盟主としてサウジは、ロシアを屈服させ、OPECに入れたいのである。
原油安に直撃されたロシア経済
原油安によりロシア経済は壊滅的な影響を受けている。ロシアはエネルギー大国だが、輸出の7割を原油・天然ガスに依存している。原油価格が半減したら、同じ量を輸出しても外貨収入が3割5分も減ってしまう。
その現れがロシアの通貨ルーブルの急落だ。それまで1ドル27~35ルーブルの間でそれなりに安定していたのが、ウクライナのクリミア半島併合により、欧米諸国から経済制裁を受けて、ルーブルの急落が始まっていた。
原油安がさらにこれを直撃して、2014年末には1ドル67~78ルーブルと半分以下に暴落してしまった。
すでにロシア経済は大変な危機に見舞われている。いずれルーブルは紙切れになるだろう。ルーブルを持とうなどと考えるロシア国民はどんどん減っており、ルーブルをドルやユーロに替えようとロシア国民が銀行に殺到している。
そのためドルやユーロの現物が不足するようになり、現物が尽きたウラジオストックの銀行ではルーブルと外貨との交換を停止してしまった。
食料品についてもロシアでは輸入が多いのでルーブル安とともに食料品の値段も毎日のように上がっていく。12月15日にロシア中央銀行が「2014年の物価上昇率は10%程度」という見通しを公表したのだが、現実には10%を大きく上回っている可能性が高い。だからロシア国民はルーブルでもらった給料を直ちに食料品の買いだめのために使うようになった。[1,p31]
ロシアがこの苦境を脱するためには、クリミア半島の併合を断念して欧米諸国に屈服し、さらにOPECに加盟してサウジに屈服するしかない、それまでは原油安が続くだろう、というのが、長谷川氏の見立てである。
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