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消費増税は2019年10月に延期されたために成長率は上方修正されたのだが、それでも世界の先進国に比べても日本の成長率は際だって低いとIMFは予測している。2016年の経済成長率は世界全体が3.1%、米国2.2%、ユーロ圏1.6%、英国1.7%だが、日本僅か0.3%、2017年は世界3.4%、米国2.5%、ユーロ圏1.4%、英国1.3%だが日本は0.1%である。この通りならば、失われた20年と言われる日本経済は来年まで引き続き没落を続けるということになる。
日銀は7月29日の金融政策決定会合でETFの買い入れ額を年間3.3兆円から6兆円に増やすことを決定した。決定内容は従来政策の一部強化にすぎないとして、市場では評価と同時に不十分だとする失望も広がり、株式相場は乱高下した。一方円高は阻止することはできず、1ドル101円台まで円は上昇した。政府は景気対策として事業規模28兆円の経済対策を8月2日に閣議決定するとしている。このうち景気押し上げに貢献する財政措置である「真水」は6兆円とされており、やはり小出しと言わざるを得ない。
円高が定着しこのまま景気回復ができないと税収も低迷し財源が無いと言って歳出も拡大しない。そうするといつまで経っても景気はよくならない。
このような小出しの景気対策で大丈夫なのだろうか。失われた20年の間、政治家が適切なレベルの景気対策を打ち出さなかったのは、内閣府の試算に騙され続けた結果だというのが私の説である。
7月26日、内閣府は「中長期の経済財政に関する試算」を発表した。同様な試算は毎年発表されており、その一覧は以下のサイトで見ることが出来る。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome.html
これは日本経済の中長期展望を示すために内閣府計量分析室が行った試算だが、国が様々な分野で将来展望を示すための試算を行う際にはこの試算がベースになっているから非常に大切な試算だ。マスコミもこの試算が絶対的に正しいものと信じており(騙されているのだが)それ以外の試算は一切引用しない。しかし、あるグラフを見れば、この試算は全くデタラメであり内閣府計量分析室はオオカミ少年であるということがすぐ分かる。そのグラフは次のサイトに示しておいた。
http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/no207-14a0.html
内閣府は金利の急上昇を予測するのだが、もちろんこんな金利の急上昇(国債価格の急落)を予想する人などどこにもいないし、もし予想していたら国債を保有している人達が一斉に国債の投げ売りを始めるし、10年物国債がマイナス金利になるわけがない。実際は国債保有者は国債を売りたがらないので、現在国債市場では国債が品薄状態になっている。
1回だけの予想なら間違えるのも仕方がないかもしれない。しかし15回連続で急激な金利上昇を予想しており、それが全部はずれ、実際はむしろ金利はジリジリ下がり続けているのである。まともな感覚の持ち主であれば、金利は当分下がり続けるか、少なくとも低いままであり続けると予想するだろうし、その予想は内閣府の予想よりはるかに現実に近いに違いない。
内閣府計量分析室にどうしてこんな馬鹿な予測しかできないのかと電話で聞いてみると、「政府は実質2%、名目3%の成長と目標としている。このような高成長なら金利は高くならざるを得ない。だから内閣府としては立場上このような予測しかできない」という回答だった。要するに「お前達、首になりたくなかったら高成長の試算結果をだせ」と脅されているのであり、彼らは自分たちの意に反して間違いと知りながら試算を発表せざるを得ないのだ。
一方政府・日銀はこのグラフを見て、「今の政策を続ければ、こんなに成長するのだ」と安心し、小出しの景気対策の逐次投入しかしない。そしてしばらくすると騙されたと気付く。2014年度の消費増税の際も「増税の影響は軽微」と予測した内閣府の試算にすっかり騙されて好調になりかけた経済を急激に悪化させてしまった。いつまでその繰り返しをやるのだろうか。
小野盛司
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