アマゾン・アンリミテッド閲覧不可の本当の問題
- 2016/10/19
- 社会
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立ち読みの壁
そんな計算高いアマゾンが、計算違いをしたのは日本人の知への変態性です。海外では雑誌や書籍を読む層はそもそも限られ、読者もそれぞれの嗜好に従い行動します。ところが日本人は、男性でも女性誌を読み、女性がオヤジ雑誌を渉猟することは珍しくなく、釣り雑誌を読み、サッカー専門誌を読み、週刊文春と週刊フライデーを読む読者は珍しくありません。小説を読めば漫画も読み、写真集を開く読者など掃いて捨てるほどいます。変態が言い過ぎなら、日本人は知識や好奇心が「雑食」なのです。さらにコンビニにより定着した「立ち読み」という行動習慣も忘れてはなりません。
「立ち読み」という行為自体は古くからありますが、昭和版の「ドラえもん」では、書店で立ち読みしていた主人公の「のび太」が、店主に「はたき」で追い出されるシーンがあったように、かつて「立ち読み」は違法ではないが合法ではないという社会的コンセンサスがありました。本は情報を得るための商品。立ち読みはその情報の窃盗。ただし「味見」ならば見逃される、ということです。この常識を破壊したのがコンビニです。
コンビニにとって「立ち読み」は、店内の客の存在を外に知らせることから防犯上のメリットがあり、毎週更新される週刊誌は来店インセンティブを期待でき、一般的なコミックや雑誌は「返品」できるので会計上のロスもないので立ち読みを「黙認」しているとは、かつてPOS開発に従事していたとき、コンビニ関係者から聞いた話です。「立ち読み」の是非はここで論じませんが、私自身が「読み放題」を利用しての実感はこの「立ち読み」です。
問題は消費者庁
私はNTT DoCoMoが提供する「dマガジン」という雑誌の読み放題を利用しています。月額400円で総合週刊誌15誌が読めます。400円といえば、なにかと世間を騒がせる「週刊文春」一冊分の価格で、ライバル誌の「週刊新潮」どころか、「週刊ポスト」「週刊現代」「週刊女性」に「週刊プレイボーイ」まで読むことができます。熟読と言うより読み捨てで、コンビニで目についたトピックのページだけを開く立ち読みにそっくりです。アマゾンは制度設計の際、日本特有の「コンビニ立ち読み」という商習慣を計算していなかったのでしょう。
これらはすべて「推論」です。しかし、アマゾンが出版社レベルで閲覧不可にしたことで、利用者に不便を掛けているのは「事実」です。講談社や小学館といった、日本を代表する出版社の書籍が読めないとは、「読み放題」との看板に偽りありで、かつての「コンプガシャ」で注目された景品表示法における「優良誤認」の疑いすらあります。
そして騒動においてもっとも責められるべきは、閲覧を中止したアマゾンではなく、契約を見逃した出版社でもなく「消費者庁」です。ビジネスは時に法律の網の目をくぐることもあり、「違法」と確定してから動き出しては遅すぎ、これらに対応するために横断的組織として生まれた「消費者庁」が、手をこまねいているのは怠慢以外の何者でもありません。「消費者」を保護しない消費者庁など税金の無駄でしかありません。
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