フジテレビが嫌われる理由。画面に映る上から目線
- 2016/8/8
- 社会
- 129 comments
「いいとも」の後番組として始まった『バイキング』は、お笑いコンビ「サンドイッチマン」が、日本全国の浜辺で地曳き網をするという、ハプニング満載の実にテレビらしい企画に取り組んでいましたが、低視聴率へのテコ入れか、この春より「討論番組」にリニューアルしました。MCの坂上忍さん率いる「タレントチーム」と、テーマ毎の専門家を招いて喧々諤々の議論をするというものですが、教えを請う立場のはずの「タレントチーム」は上手(かみて)に構え、専門家を「下手(しもて)」に置きます。
客席から見た画面やステージの「右側」を「上手」と呼び、演出上、身分の高い人や専門家を配置します。その反対の「下手」には庶民や生徒、素人を置きます。洋の東西を問わず左右が同じなところから、人間の本能レベルとしての区分なのでしょう。落語においても大旦那と丁稚の会話は、これに従い左右を分けます。MCが交代しても人気を誇る日本テレビ『行列が出来る法律相談所』で、教える側の法律家が上手にいるのも同じ理由です。つまり『バイキング』は、上座であぐらをかく丁稚に対して、大旦那が正座して教え諭しているような構図です。なお、テレビの場合、タレントを右側から撮影することで、実際の立ち位置を問わず下手にいるように見せることもあります。
上から目線のビジュアル化
特別な理由がなければセオリーに従うのがすべてのコンテンツ制作における定石。なぜなら、視聴者が話題やテーマに集中できるからです。その反対がもたらすのは違和感。それは不快感に通じ、わざわざ不快を求める視聴者はおらず、それが視聴率に現れます。他局の番組でも、上下(かみしも)のミスマッチを目にすることがありますが、その「徹底ぶり」においてフジテレビは他の追随を許しません。
さらに上下(かみしも)の逆転から生まれる「嫌悪感」もあります。『バイキング』での「タレントチーム」は8〜9人もの大人数が居並ぶのに対して専門家は3〜4人。一見すると、身分の高いものが多数をもって、少数の弱者を攻撃しているようです。『バイキング』に引き続き始まる『グッディ』も同じ。本稿執筆時に報じられていた都知事選では、政治評論家の田崎史郎氏と、政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏という専門家を下手(しもて)に立たせ、上手(かみて)にはMCの安藤優子さんと高橋克実さん、それに女子アナとタレント2人の都合5人のレギュラー出演者が、一段高い位置でイスを並べます。MCが上手(かみて)から見下ろす構図は、ビジュアル化された「上(手)から目線」。これで視聴者に好かれようとは厚かましい話しです。
フジテレビの中では堅調を維持する『めざましテレビ』も、大塚範一さんがリタイアし、番組生え抜きの伊藤利尋アナウンサーが去ってから「上から目線」が目立つようになりました。そして「朝の王者」に君臨していた『めざましテレビ』が、月間視聴率で他局の後塵を拝することが増えています。フジテレビが嫌われるのは「ネットのバカ」が騒いでいるからではなく、フジテレビが視聴者を上から目線、すなわち視聴者を「バカ」にしているから。結婚記念日をわざわざ「フジテレビの日」にするほどフジテレビを愛していた筆者にはそう見えて仕方がありません。
2
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。