正義か味方か? 謎の小池百合子

小池百合子!! 恐怖の正体?

 さて、小池氏については、日本会議と縁が深いとの指摘もなされています。この日本会議、ぼくは詳しくを知らないのですが、ネットだけの情報で見ると何だか日本を裏から牛耳る悪の組織のように思えてきます。最近も「オタク=日本会議」論をぶち上げたブログ記事がちょっと話題になったのですが、ここでは『日本会議の研究』から牽強付会し、「両者ともミソジニーに取り憑かれた存在である、似た者同士だ」との妄想が開陳されておりました(ブロガーさんはプロの書き手ではないようなのでリンクは控えておきますが、キーワードで検索すれば出てくると思います)。
 こうなると小池氏を(そして彼女を支持するオタクを)快く思わぬ層が、これからも近しい発言を盛んにするのは想像に難くありません。
 何しろ「オタクはネトウヨである」との論調は、(自身もオタクであるはずの)「表現の自由」クラスタによって非常にしばしば語られてきました。前回記事で、ぼくは「サブカル」陣営の人々が「オタク」の上の世代で、思想的に左派寄りの人々であること、強くオタクを憎み、「オタクはネトウヨである」との決めつけをし続けていることを指摘しましたが、「表現の自由」クラスタもそうした層に近い人々が多く、市井のオタクへの強い憎悪と蔑視の感情を持っていることが、大変に多いのです。もうこの時点で、彼らをオタクの味方であるなどと考えたくもないのですが。
 日本会議が、自民党がどれだけの悪者なのかは、知りません。
 しかし日本会議とオタクとを安易に結びつけてオタクを攻撃する人たちが、より以上の悪者であることだけは、(仮に彼らの言う「日本会議悪者論」が100%正しいとしたところで)間違いがないでしょう。
 それは丁度、仮に日本会議がミソジニーであるのが事実であろうと、『日本会議の研究』の著者が女性に性的暴行を加えたことの方がより問題であるのと、全く同様に*8。
 フェミニストは「弱者男性」を、左派は「ネトウヨ」をことさらに敵視します。
 これは、「自分たちと権利のバッティングする、また別な弱者」を排除しようとする、ある意味では論理的行動です。パンに限りがある以上、奪いあいになること自体は、仕方がないと言えば仕方がないのですから。
 しかし同時に、彼ら彼女らは「自分たちは弱者の味方、正義の味方」という看板を営業上、降ろしたくない。そこで捻り出したトンチが、(ネトウヨが必ずオタクであったり低学歴であったり低収入であると仮想されることが象徴するように)自分たちとパンを奪いあっている弱者は実は悪者だったのだ、だからやっつけてもいいのだ、というものだったのです。
 これはまた、彼ら彼女らの政治的な敵対者である(本来は強者であるはずの)「保守派」なり「男性」なりの中から「ネトウヨ」や「オタク」といった弱者だけを選び出し、バッシングしている姿である、とも言えましょう。
 もし左派が本当にオタクの支持を取りつけたいと思うのなら、もうちょっと考えないとダメだぞ、というのが本稿の結論なのですが、もう一つだけおまけに指摘しておきたいことがあります。
「アメリカ政府は宇宙人と密約を結んでいる!」
「日本政府は電磁波で国民をコントロールしているのだ!」
 といった内容の、陰謀論者が書いたいわゆる「トンデモ本」と呼ばれるジャンルの本があります。そうした本を見ると、「巨大な悪の陰謀組織」が「その悪を見抜いた私」へと攻撃を仕掛けてきているのだ、との妄想が度々登場することに気づきます。
 彼らは「飲食したものの味が何だかヘンに感じられた」「渋滞に巻き込まれた」「尾行されている気がした」といった些末なことを、「真実に気づいた天才である私への、陰謀組織からの攻撃」なのであると解釈する傾向にあります。
 つい笑ってしまいますが、これは実際には社会的には不遇な立場にいるのであろう「私」の日常生活と「巨大な権力」とをリンクさせるための、彼らなりの方策なのです。
「オタク≒日本会議」論は倒すべき悪者の姿を見失った左派たちが、これと同じ誤謬に陥った姿なのではないでしょうか。

*1 (https://twitter.com/ecoyuri/status/754553698156679168/photo/1
「私は東京を文化の発信地にしていきます。コミケ開催地も出版社もその多くが東京にあるのです。東京都が総力を挙げて、コミケを応援します!」
*2 (http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_seigan.nsf/html/seigan/1780001.htm
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/seigan/179/yousi/yo1790088.htm
*3 「小池百合子候補の「コミケ応援宣言」、その真意は?表現の自由について直接聞いてきた(http://otokitashun.com/blog/senkyo/12048/)」
*4 「小池百合子氏のコミケ応援宣言が波紋 本当に「漫画表現」は守られるのか(http://www.j-cast.com/2016/07/18272776.html)」
*5 これについては毎度のように書いているのですが、一番詳しいのは「京都地下鉄の萌えキャラにクレームをつけたのはフェミ…じゃなくて“まなざし村”!?(http://asread.info/archives/2995)」でしょうか。
*6 民進党政策集2016(https://www.minshin.or.jp/compilation/policies2016/50091#h3_35
「メディアにおける性・暴力表現について、人々の心理・行動に与える影響について調査を進めるとともに、バーチャルな分野を含め、技術の進展及び普及のスピードに対応した対策を検討し、推進します。」
「売買春等における買い手を生まないための教育・啓発など、「女性の性を商品化する風潮」を変える取り組みを具体的に進めます。」
*7 「国連の”援助交際13%”、特別報告者ブーアブキッキオの発言に大バッシング(http://moneytalk.tokyo/moneytalk/3803)」
*8 などと、いまだ係争中の時点で書くのもどうかと思ったのですが、敵を「ミソジニー」であると認定することはそれ以上に恣意的な行為と言えるので、まあいいかと判断しました。

固定ページ:
1

2

西部邁

兵頭新児

兵頭新児

投稿者プロフィール

アキバ系ライター。
主著に『ぼくたちの女災社会』
女性ジェンダーが男性にもたらす災いとして「女災」という概念を提唱。
ついついフェミニズム批判ばかりをしていますが、自分では「男性論」、「オタク論」がフィールドだと思っています。
ブロマガ「兵頭新児の女災対策的随想、兵頭新児の女災対策的随想(http://t.co/gpKQJTszv9)」もよろしく。
ご連絡はshin_2_h@ybb.ne.jpまで。

この著者の最新の記事

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 2016-3-14

    やくざ国家・中共に日本はどう対峙すべきか(その1)

     アメリカの覇権後退とともに、国際社会はいま多極化し、互いが互いを牽制し、あるいはにらみ合うやくざの…

おすすめ記事

  1. SPECIAL TRAILERS 佐藤健志氏の新刊『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は…
  2. 第一章 桜の章  桜の花びらが、静かに舞っている。  桜の美しさは、彼女に、とて…
  3.  お正月早々みなさまをお騒がせしてまことに申し訳ありません。しかし昨年12月28日、日韓外相間で交わ…
  4. ※この記事は月刊WiLL 2015年6月号に掲載されています。他の記事も読むにはコチラ 女性が…
  5. ※この記事は月刊WiLL 2015年1月号に掲載されています。他の記事も読むにはコチラ 新しい「ネ…
WordPressテーマ「CORE (tcd027)」

WordPressテーマ「INNOVATE HACK (tcd025)」

LogoMarche

ButtonMarche

イケてるシゴト!?

TCDテーマ一覧

ページ上部へ戻る