奨学金も借りられない若者いじめの日本
- 2016/2/9
- 教育, 社会
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ラジオで奨学金制度が暗礁に乗り上げていることを知りました。
ふつう高3の5月に予約申請をするのですが、その時点ではそもそも大学に入学できるか決まっていず、大学卒業後、正規社員として採用されるかどうかもわかりません。非正規の場合は、職種も雇用期間も収入もきわめて不安定ですね。この時点で将来像を描けと言っても無理なわけです。
先生は多忙で、とても生徒一人一人に適切なシミュレーションの指導などする余裕がありません。ちなみに経済的な事情から進学をあきらめた場合には、高卒の正規採用というのはほとんどゼロで、非正規を含めても2割就職できればいい方だそうです。
この話をした人は、悲痛な声で、その窮状を訴えていました。
調べてみたところ、日本学生支援機構の奨学金制度には、2種類あります。
http://www.jasso.go.jp/shogakukin/seido/index.html
1種は無利子ですが選抜が厳しく、2種は有利子ですがほとんどだれでも受けられます。2種は1種の最高2倍まで給付されるので、こちらに人気が集まっています。
しかしたとえば貸与月額10万円で四年在学すると総額480万円となり、これを償還期間20年、固定金利0.82%で返還すると、月々22000円支払わなくてはなりません。
月収手取り16万円として、家賃その他の経費を差し引き、そこからさらに2万円以上を返していくというのは、相当辛いですね。頼りの親も次々と下流高齢者の仲間入りをしていく昨今です。将来展望が開けるわけがありません。
ところで、この将来展望の開けなさには、現在の政権が採っている経済政策、ことに労働者派遣法の「改正」が大いに関係しています。労働者派遣法「改正」は、2015年9月11日に参議院で可決され、9月30日に施行されました。管轄省庁は厚生労働省です。
この法案が審議されている同時期に、ちょうど国会では平和安全法制が審議されていました。マスコミ、世論は、集団的自衛権を容認するかしないかをめぐって騒然としており、左派リベラリズムからは、やれ「戦争法案」だの「徴兵制が復活する」だのと、見当違いの議論が盛んに沸き起こっていました。
この法案がそんな性格のものでないことは、1960年に結ばれた日米安保条約がそうでないのと同じで、国会前に集まったデモ隊も、法案成立と同時に潮が引くように消えていきました。最近の安倍政権の政策で唯一評価できるのは安全保障政策で、この平和安全法制はその一環と言えます。
ちなみにこの法案についての筆者の考えは、このASREADで読むことができます。
http://asread.info/archives/1928
http://asread.info/archives/1928/2
さてこの騒ぎがあったために、労働者派遣法「改正」は、そのどさくさにまぎれて、十分な審議もなされないまま、たちまちのうちに成立してしまいました。
非正規社員の割合がどんどん増えている(現在4割)この不況期に、労働者派遣法「改正」なる法案を簡単に国会通過させてしまった国会議員に、筆者は大きな憤りを感じます。
彼らは、この法律が何を意味するのか、きちんと勉強したのでしょうか。派遣元の会社を届け出制から許認可制に一本化するという一見厳格な規制の見かけにコロリと騙されてしまったのではないでしょうか。最近の国会議員の劣化状態を改めて痛感します。
この「改正」なるもの、雇われる労働者の生活のことなど全く考慮されていません。派遣労働者を永久に低賃金で不安定な雇用形態に留めておこうとする世紀の悪法なのです。
細かい点は抜きにして、悪法である所以を示すポイントは三つあります。
http://toyokeizai.net/articles/-/73553
①同じ労働者が派遣先の同一組織で3年以上働くことはできない。
②3年を超えて雇用されることを派遣元が依頼することができる。
③専門26業務とその他の業務の区別を取り払う。
①は労働者を入れ替えて使い捨てにすることが容易になる規則ですね。厚労省はこれをキャリアアップのためなどと言い訳していますが、逆だろう!と突っ込みたくなります。
②は「依頼することができる」となっているだけなので、派遣先が断ればそれで終わり。
③は一見、派遣労働者の平等を実現させようとしているようですが、内実は正規雇用への可能性の道をいっそう閉ざすものです。
これまでの派遣法では、専門26業務の派遣労働者が同じ派遣先で仕事をしている場合、その派遣先が新しく直接雇用をする際には当の労働者に雇用契約の申し込みをしなければならないという制度(雇用申し込み義務制度)が存在し、これにより当の労働者に直接雇用の見込みが不十分ながらあったのに、今回の改正ではこの制度が削除されたのです。
広告デザイナーAさんは、派遣会社B社からCデザイン事務所に派遣されて2年半仕事を続けてきました。C事務所では、新しく正社員を雇うことに決めました。広告デザイナーは「専門26業種」の一つですから、C社は、これまでだったら、まず第一にAさんに新規雇用の意志を知らせ、正規の雇用契約を結ぶことをAさんに申し込まなくてはならないのです。しかし、このたびの「改正」では、C社はそんなことはお構いなしに別の人を雇い入れていいわけです。Aさんは、あと半年でC社を辞めなくてはなりません。
この改悪の主役は誰か。規制改革を進める派遣会社会長・竹中平蔵氏らの一派、およびこの路線をよいことと信じている安倍政権です。日本の労働行政はアメリカの悪いところを見習って、ますます亡国への道を歩んでいます。これではいくら奨学金制度があっても、若者の将来設計を困難にしてしまうのは当然と言うべきでしょう。
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