「海女ちゃん」の次に叩かれたのは「のうりん」に励む「農ガール」

人権が大好きな人たちは、何故かオタクが大嫌いな件

 しかし、別にこの問題は「右が悪いのか左が悪いのか」といった話ではないように思われるのです。
 単に個々人がそれぞれ自分側の権利を言い立てて、権利と権利がバッティングしているという、ただそれだけの話です。
 為政者は言わばそれの調停役なのだから責任はある、その意味で「保守勢力のせいだ」と言える場面も多々あるでしょうが、近年では本件のように「ツイッターなどネット世論の炎上/それに過剰反応する自治体などの為政者」といった図式もお馴染みになりつつある。それを、一部の時代遅れな政治オタクが「右と左の争い」「国と市民の争い」であるかのように、今まで読み替えていただけの話だったのです。

 では、それにしても、何故こうもオタクばかりが難癖をつけられるのでしょう。
 これについてぼくは前回、「萌えキャラ」そのものが女性への性的視線を純化した存在であり、しかもその描き手や受け手が「キモオタ」となると、フェミニストにしてみれば「キモい男に見つめられている感じがしてしまう」からではないかと説明しました。いえ、こっちにしてみれば「お前なんか見てねーよ、ボケ」と言いたいところですが。
 むろん、その考えは今でも変わっていませんが、それ以外にも理由があるように思えるのです。
 というのもフェミニストに限らず、「反レイシズム」「反差別」を標榜する人たちに限って、一体全体どういうわけか、オタクを敵視している感じが、どうにもしますから。例えばC.R.A.C.(対レイシスト行動集団)の野間易通氏も、オタクへの「ヘイトスピーチ」を繰り返している人物です。
 彼らに言わせれば、オタクはどういうわけか「ネトウヨ」であり「レイシスト」であり「嫌韓厨」であり「ミソジニスト」であり「ホモソーシャル」であるとされます。ついでながら「低学歴」であり「低所得者層」であるとも、決まって言われてしまいます。残念なことにその根拠らしきものが提出されるのは、ただの一度も見たことがないのですが。

 結論を書いてしまえば、それは「オタクが弱者男性だから」というのが理由であるように思われます。
 赤木智弘さんは現代において問題なのは上層・中間層の格差ではなく、中間・貧困層の格差であると指摘し、その格差間の固定化をリセットするには「希望は、戦争」しかないとの暴論をぶち上げた人物です。
 彼はまた同様の理由からフェミニストをも盛んに批判し、更に左派の言説が支持されなくなっていることも説明します。「我々と共に強者へと立ち向かえ」とアジる左派に対して「お前らの方が強者やんけ」とのツッコミを、彼はしたわけですね。
(近年、ネットで見聞するようになった「弱者男性」という言葉自体、彼が出どころかなという気がするのですが、ご存じの方がいましたらご教示ください)
 要は左派が弱者間の勢力図の変動についていけず、むしろ弱者をいじめる側に成り下がっているのが現状であり、フェミニストのオタクいじめもその文脈で理解が可能ではないか、というのが今回の指摘なのです。
「男という強者であるはずの存在の中から、弱い者のみを選別し、いじめる」。非道い話ですが、欧米でも「ホワイトトラッシュ」などが見下される傾向があるみたいですよね。白人男性だから叩いてもいい、中でも貧困層なら叩いても仕返しをしてこないぞ、というわけです。

 さて、ちょっと先走ったことをいうようですが、最後に申し上げておきたいことがあります。
 オタク界の論客たちを見ていると、先に書いたように「フェミニストは味方だ」と言うのみならず、近年ではオタクを「セクシャルマイノリティの一カテゴリー」に位置づけようと試みている人たちがいることに気づきます。

 オタクとは、アニメや漫画のキャラクターに性的欲望を抱く存在だ。
 だから、異性愛者に対して同性愛者というセクシャルマイノリティがいるように、ぼくたちは生身の人間に欲望を抱く三次元性愛者に対し、「二次元性愛者」というセクシュアリティを持った、セクシャルマイノリティなのだ。

 というわけです。セクシャルマイノリティの運動は、言うまでもなくフェミニズムの影響下にあるものです*5。セクシャルマイノリティを名乗ることで、政治的に有利な立場を得ようというのが、彼らの作戦なのかも知れません。
 しかし、ここまで読んできていただいて、それを好もしいと感じられるでしょうか。
 彼ら彼女らの「オタクいじめ」は「弱者の味方」を演じる自分たちの既得権益を守ろうとしての、必死の振る舞いでした。
 その末席に加えていただこうとしても、恐らくぼくたちは「弱者仲間」には入れてもらえない。仮に入れてもらえたとしても、その時にはきっとオタク以外の「ホワイトトラッシュ」が、どこかに用意されている。
 万一、お誘いがあっても辞退申し上げた方がいいのではないか……と、ぼくには思えるのです。
 この最後の指摘は、兵頭新児個人のブログでもう少し詳しく語っています。興味を持っていただけた方は、そちらの方も参照していただけると幸いです。

*5 オタクのマジョリティが殊更左派寄りと思えない以上、セクシャルマイノリティのマジョリティもまた、殊更左派寄りなのかどうかは疑問ですが。

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西部邁

兵頭新児

兵頭新児

投稿者プロフィール

アキバ系ライター。
主著に『ぼくたちの女災社会』
女性ジェンダーが男性にもたらす災いとして「女災」という概念を提唱。
ついついフェミニズム批判ばかりをしていますが、自分では「男性論」、「オタク論」がフィールドだと思っています。
ブロマガ「兵頭新児の女災対策的随想、兵頭新児の女災対策的随想(http://t.co/gpKQJTszv9)」もよろしく。
ご連絡はshin_2_h@ybb.ne.jpまで。

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コメント

    • rainmaker
    • 2016年 1月 03日

    あけましたおめでとうございます。こちらにも書き込もうと思っているうちに年が明けてしまいました。

    >これについてぼくは前回、「萌えキャラ」そのものが女性への性的視線を純化した存在であり、しかもその描き手や受け手が「キモオタ」となると、フェミニストにしてみれば「キモい男に見つめられている感じがしてしまう」からではないかと説明しました

    ネット上で見かけるフェミニストはよく「二次キャラの女の子の扱いが可哀想だ」といったことを言うのですが、それは彼女達が二次キャラに対して過剰な連帯感上のようなものを持っていて、二次キャラが「キモオタ」に性的に見つめられるのは自分がそうされるのと同じだ、と考えているように思えます。小浜逸郎氏がどこかで「女性は我々は弱者だという一体感を持ちやすい」とどこかで書いていた記憶があるのですが、フェミニストというのはこうした傾向がとりわけ強い人達であるように思います。

    そういえば北原みのりはおっぱい募金に対して「私は女として部外者ではない」と言っていました。これも女性が体を触られることに対し、あたかも自分がそうされているかのように感じているように見えます。いや貴方は少なくとも当事者ではないでしょ、と言いたくなってくるのですが。

    結局オタクが弱者男性だから嫌がられているのでは、に関してはおそらくおっぱい募金に対する非難にも共通するところがあって、「妻や彼女がいる男はこんなことをしなくても触れるのに、この男達はチャリティーのふりをして触りやがって」みたいな感覚があるかもしれません。『性的消費』という言葉がオタクの創作物に向けられがちなのも、結局性的魅力が低い(と想定される)男性が『女性』を楽しんでいることに対する生理的嫌悪感に過ぎないのでは?と思えてきます。

    • 兵頭新児
    • 2016年 1月 04日

    あけましておめでとうございます(^^

    >小浜逸郎氏がどこかで「女性は我々は弱者だという一体感を持ちやすい」とどこかで書いていた記憶があるのですが、フェミニストというのはこうした傾向がとりわけ強い人達であるように思います。

    そうですね(小浜氏はどこでおっしゃってましたっけ?)。
    それ自体は女性の美質であるはずなのですが、フェミニストはPC的な偏向があまりに大きく、「性的虐待の被害に遭った児童」よりも「性的加害を加えたセクシャルマイノリティ」に味方するといった歪みが生じています。

    >いや貴方は少なくとも当事者ではないでしょ、と言いたくなってくるのですが。

    当事者とシンクロしちゃうんですよね。
    同時にこのミソもクソもいっしょぶりは「性犯罪者が男だった」→「男一般への攻撃」という彼女らのスタイルの原因でもあります。
    そんなの「よい朝鮮人も悪い朝鮮人も殺せ」と言ってる人たちといっしょなんですが。

    >『性的消費』という言葉がオタクの創作物に向けられがちなのも、結局性的魅力が低い(と想定される)男性が『女性』を楽しんでいることに対する生理的嫌悪感に過ぎないのでは?と思えてきます。

    多分、「ブサメンと美人がセックス」という図を想起して、「レイプ」へと発想が飛んじゃうんだと思います。
    でもそんなの通りすがりの不美人に「ブス死ね!」と罵声を浴びせてるのといっしょですよね。

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